日本証券業協会の「証券投資に関する全国調査」の結果から、国民の投資についての現状や意識などを4回シリーズで紹介しています。今回は第3回。人々が証券投資に対してどのようなイメージを抱いているでしょうか。また、昨今ニーズが高まっている証券投資教育は、どれだけの人が受けているのでしょうか。
証券投資に対するイメージ
2024年度の「証券投資に関する全国調査」は、新しいNISAが始まって半年経った2024年6月から7月にかけて実施されました。調査対象は全国の18歳以上の7,000人です。
前回調査の2021年度は、新型コロナウィルスの感染拡大によって多くの人が外出を控えている最中でした。そのため、インターネットやアプリなどで証券投資を始めた人が増えました。それから3年経過した今回、証券投資に対するイメージはどのように変化したでしょうか。
回答の選択肢を「プラスのイメージ」と「マイナスのイメージ」に分けて紹介しましょう。回答者全体に複数回答で尋ねたところ、プラスイメージでの回答上位は「資産を増やせる」(34.0%)、「将来・老後の生活資金の蓄えに役立つ」(29.9%)。マイナスイメージでは「難しい」(53.1%)、「なんとなく怖い」(27.2%)「ギャンブルのようなもの」(26.0%)が高めの傾向となりました。
これらを前回調査と比較すると、高まったイメージは「将来・老後の生活資金の蓄えに役立つ」(2021年度20.7%→2024年度29.9%、以下同様)、「勉強になる」(10.3%→15.3%)、「面白そう」(3.7%→4.5%)、「社会貢献に役立つ」(2.8%→3.4%)、「難しい」(50.9%→53.1%)、「なんとなく怖い」(30.6%→27.2%)。上位には前向きな意見が並ぶ中、「難しい」という実感も交じっているようでした。
反対に、前回調査から下がったものは「資産を増やせる」(37.6%→34.0%)、「ギャンブルのようなもの」(30.7%→26.0%)、「お金持ちがやるもの」(27.2%→23.5%)、「しつこく勧誘される」(10.5%→10.2%)。そう簡単に増やせるものではないと認識したり、マイナスイメージが少し減退したりといったところでしょうか。なお、「詐欺に遭うおそれがある」(13.7%)は、今回が初めての選択肢です。
【グラフ1】では、回答者が保有する金融商品ごとにグループ分けをして「証券投資のイメージ」を集計し、そのうち「預貯金・信託のみを保有する人」と「証券を保有する人」を比較しました。すると、両者の違いが鮮明となりました。証券保有層は、預貯金・信託のみ保有層に比べ、プラスイメージが高く、マイナスイメージが低い傾向が伺えます。
証券投資は確かに「難しい」ものではあるものの、証券保有層の約3割の人が「勉強になる」と答えています。証券投資は、単に資産を増やすだけのものではなく、人生における様々な場面で、役に立つ知恵をも備えることができるのではないでしょうか。
証券投資教育の経験の有無
次は、最近関心が高まっている証券投資教育について見ていきましょう。全回答者のうち、証券投資教育を「受けたことがある」という人は7.5%で、前回調査より1.1ポイント上昇したものの、まだまだ少ない印象です。「受けたことがある」人を年代に分け、前回調査と比較しました【グラフ2】。
若年層が前回調査に比べて大きく増加しています。退職後の生活を意識したのか、60歳代の層でも増えました。
また、証券投資教育の経験がある人ほど証券投資の必要性を感じている実態が浮かび上がりました。このコラムのシリーズ第1回目の『投資は身近になっているのか?』で紹介した通り、回答者全体では証券投資の必要性を感じている人は42.6%でした。それに対して、証券投資教育を受けたことがある人522人のうち、証券投資を必要性だと答えた人は69.9%に上っていました。
証券投資がどういうものなのか、全くわからないまま「怖い」「ギャンブルのよう」と避けてしまうのではなく、まずは学んでみて、ご自身の性格や生活の状況に合うかどうかを考えることが大切なのではないかと思います。
【出典】日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」