よそのお宅のお財布事情が気になる方は多いようで、よく「みなさんどうしているの?」と聞かれます。そこで、日本証券業協会の「証券投資に関する全国調査」の結果の中から、投資についての現状や意識などを4回に分けてご紹介しましょう。
投資信託の保有率が大幅増加
日本証券業協会では、3年に1度、個人が保有する金融商品の実態や、金融商品や投資に対する考え方を調べています。2024年度の「証券投資に関する全国調査」は2024年6月から7月にかけて、全国の18歳以上の7,000人を対象に行なわれました。
まず【グラフ1】は、有価証券(株式・投資信託・公社債)の保有実態です。
有価証券の保有率(全回答者7,000人のうち、株式・投資信託・公社債のいずれかを保有している人)は、前回2021年度調査の19.6%から24.1%へと大幅に増えました。特に投資信託の保有率の増加が目立ち、株式も増えています。
投信と株式は、興味を持っているという人も増えています。興味がある金融商品について複数回答で尋ねたところ、前回調査より伸びたのは「株式」と「投資信託」。「株式」は前回の18.1%から21.6%へ、「投資信託」は前回が14.5%でしたが20.7%へと6.2ポイント増加しました。
なお、最も多かった回答は「預貯金」。全体の54.7%で、前回調査と同じでした。次が「興味を持っている金融商品はない」で32.1%。前回調査より3.8ポイント減少しています。
金融商品の保有目的は「将来・老後の資金」が圧倒的
金融商品の保有目的については、主な回答を下記に列挙します(複数回答)。
「将来・老後の生活資金」(2021年度調査68.6%→2024年度調査68.3%、以下同様)「将来の不測の事態への備え」(37.8%→34.2%)
「子供や孫の教育資金」(27.9%→23.6%)
「耐久消費財やレジャー費用の捻出」(24.7%→23.4%)
「住宅の取得や結婚などライフイベント費用の捻出」(8.8%→7.4%)
「現金の盗難対策」(3.8%→3.4%)
これらはいずれも前回調査より減少しています。そのような中で、たった1つだけ増えた選択肢があります。それは、「特に目的はない」(13.0%→15.8%)でした。
お金は、モノやサービスに交換してこそ活きるもの。資産運用はあくまでも手段で、その結果、幸せな生活や欲しいものを手にし、やりたいことを実現するのが目的です。使い道にこそ喜びがあるのではないかと思うのですが。お金を殖やすことが目的になっているのではないかと、ちょっと寂しい気持ちになりました。
「安全」「引き出せる」を重視する人は減り、「利回り」「値上がり」が増加
金融商品に対して重視する点(複数回答)については、安全性や流動性が上位ではあるものの、減少傾向です。前回調査から減少した主な回答を以下に列挙します。
「いつでも出し入れができる」(46.1%→43.6%)
「元本が安全」(38.1%→35.8%)
「各種料金の自動引落に利用できる」(10.4%→8.1%)
一方で、収益性を重視する人は増えました。潮目が変わったと感じます。ほかに増加した回答とともに列挙します。
「利回りが良い」(23.7%→28.1%)
「値上がりが期待できる」(10.9%→14.5%)
「インターネットで取引できる」(9.1%→11.5%)
「税金面で有利になる」(5.9%→8.9%)
また、この設問で「特に重視していることはない」を選択した人が23.8%いました。表面的な情報を鵜呑みにして、あまり考えもせずに証券取引をしているのでしょうか。少し心配です。
投資の必要性を感じる人は全世代で増加
近年の金融経済教育への関心の高まりを反映してか、証券投資を「必要だと思う」と回答した人が、前回調査の30.9%から42.6%へと大幅に増加しました。下の【グラフ2】は、投資の必要性を感じている人を年代で分けた、2018年度から3回分の推移です。
特に20歳代の伸びが目覚ましく、2018年度調査から今回調査までに倍増していることがわかります。
証券投資の必要性を感じている人のその理由は、以下の通りです(複数回答)。
「将来・老後の生活資金として準備できる」(59.2%→64.5%)
「預貯金だけでは十分利息を期待できない」(63.7%→58.9%)
「現在の保有額では将来の生活に不安」(32.5%→35.6%)
「将来のインフレに備えることができる」(14.2%→21.4%)
1位と2位の順位が逆転しました。いまやどんな年代でも「老後が心配」とおっしゃる時代。それに加えて「金利ある世界」が訪れたことが逆転の背景にありそうです。また、水準は低めではあるものの、インフレへの備えが7.2ポイントと大幅に上昇しています。
一方、証券投資を必要だと思っていない人は、以下の理由です。
「損する可能性がある」(43.7%→43.2%)
「特に理由はない」(25.5%→27.7%)
「金融や投資に関する知識を持っていない」(30.2%→26.8%)
「価格の変動に神経を使うのが嫌」(27.9%→26.3%)
「ギャンブルのようなもの」(28.2%→25.3%)
「証券投資をするためのまとまった資金がない」(20.6%→21.2%)
「損する可能性がある」「価格変動が嫌」、だからから投資をしない、とご自身の考えがあって投資をしないというスタンスは、良いと思います。「知識がない」「ギャンブルのようなもの」という声は、ちょっと残念。とはいえ、どちらも減少傾向なので、少しずつ理解されていると考えられるでしょうか。「まとまった資金がない」を理由に挙げた方には、決してまとまった資金でなくてもできることを伝えていきたいと感じます。
次回は、「証券投資に関する全国調査」から少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)に関する調査結果を解説します。
【出典】日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」