【東野幸利のチャート道場~ファーストリテイリング②】

先週末の日経平均は大幅続落

先週末の日経平均は大幅続落。米国株式市場が休場たったことによる材料難から寄り付きは小幅な下落でしたが、10時近辺には下げ幅を400円超に拡大しました。前引けにかけていったん値を戻したものの、後場に入ると売り直されて安値圏で取引を終了。TOPIX(東証株価指数)は安値引けとなりました。一方、小型株が主体のグロース250指数は売りが先行したものの早々にプラス圏に浮上し、終値でもプラスを確保して終えました。


東証プライム市場の売買代金は概算で4兆2,800億円。値上がり銘柄数438に対して、値下がり銘柄数1132と値下がり優位の展開でした。業種別では、その他製品、金属製品、精密機器などが上昇した一方、海運、輸送用機器、医薬品などが下落しました。


個別では、アドバンテスト(6857)が5%を超える上昇で目立ったほか、MBOに関して米アポロ社の出資検討観測が報じられたセブン&アイ・ホールディングス(3382)が後場急伸。電線や防衛関連では古河電気工業(5801)や川崎重工業(7012)が堅調に推移しました。一方、決算材料で売られたファーストリテイリング(9983)は6.5%安で終え、1銘柄で日経平均を約301円押し下げました。海運大手3社が連日で売りに押され、インフルエンザ治療薬「タミフル」の供給調整を始めたとの観測が報じられた中外製薬(4519)が大幅安となりました。


週足でみるファーストリテイリングの株価推移

図表は、ファーストリテイリング(9983)の2023年5月ごろからの週足のローソク足に加え、13週・26週・52週移動平均線を挿入したチャートです。下位は、売られ過ぎや買われ過ぎ、勢いなどをみるオシレータ系指標で代表的な相対力指数のRSI(9週ベース)の推移です。



2024年1月に形成した大陽線で2023年6月以降の上値抵抗線を上方にブレイクし、もみ合い相場を上放れる格好となりました。13週移動平均線から大きくかい離しながら上値を伸ばす展開となり、同年4月に48,040円まで上昇しました。


一方、2024年4月高値からの調整が続く中、当時は上昇基調にあった13週移動平均線で下げ止まらず、26週移動平均線を割り込む展開となりました。さらに、8月の急落では上昇基調にあった52週移動平均線を下回る場面がありました。


しかし、かつてのもみ合い相場の下限を下回ることなく、底打ちシグナルとして典型的な長い下ヒゲの十字足を形成。直後の連続陽線で上値抵抗線を上方にブレイクし、13週移動平均線が26週移動平均線を上回るゴールデンクロスによって上昇基調に入っていったと判断できます。


2024年10月につけた上場来高値(55,310円)から調整し、13週移動平均線をサポートに再び高値更新の気配もありましたが、先週の決算発表後の急落によって13週移動平均線を下回り、依然として上昇基調が続いている26週移動平均線まで調整が深まる展開となりました。


また、先週の下落によって、直近の11月安値(48,110円)を下回る動きとなりました。26週移動平均線付近から反転上昇し、13週移動平均線上を早々に回復できれば、高値もみ合いからさらに一段高をにらむ展開が維持されるでしょう。

一方、短期的な戻りは限定的になることが想定されます。13週移動平均線が下落し始めており、同線に上値を抑えられることが考えられるからです。


13週移動平均線まで戻したあとは、一段安につながる想定もしておくべきでしょう。RSI(9週)は先週末時点で中心線の50%を下抜けており、連続して下回ると株価の52週移動平均線までの一段安の可能性が高まることになります。


いずれにしても、現時点では大局的な値動きは上昇波動が続いているという判断となり、高値圏でもみ合いを形成しながら一段高につながる動きがメインシナリオとなります。そういった中ですが、当面の調整局面入りの兆候が出始めてきた点に留意する必要があるということです。



日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

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