函館に活況をもたらした「名探偵コナン」が次に訪れるのは甲信越のあの場所

2025年2月21日の北海道新聞に、「ロケーションジャパン大賞」のニュースが掲載されています。本年度の受賞作品は人気アニメ映画の「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」。映画の舞台となった北海道の函館には、聖地巡礼として数多くの観光客が足を運びました。地元の観光推進活動とは比べ物にならないコナン君が次に降り立つのは、甲信越にそびえる宇宙との交信基地です。


「聖地巡礼」とは

聖地巡礼とは、映画やアニメの舞台となった場所に、ファンが訪れることを意味します。舞台になった観光地を回り、旅行を楽しみます。当地には莫大な経済効果をもたらし、地域を活性化します。名探偵コナンシリーズは毎年春の新作発表であり、封切りまで約2カ月となった現在、次作の部隊が「示唆」されています。


コナン君の舞台に選ばれるのがどれくらいの影響力なのか。以下のランキングは産経新聞に掲載されている、2024年の邦画の興行ランキングです。


① 『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』 158.0億円(東宝)

② 『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』 116.4億円(東宝)

③ 『キングダム 大将軍の帰還』 80.3億円(東宝ほか)

④ 『劇場版 Spy x Family Code: White 』 63.2億円(東宝)

⑤ 『ラストマイル』 59.6億円(東宝)


上位5タイトルにアニメが3つ並んでいることも注目されますが、1位のコナンシリーズが2位に約40億円の差をつけるなど、群を抜いたブランド力があります。一般的に子ども向け映画の場合、興行収入100億円の観客動員数は800万前後ともいわれています。


観客動員数のうち何割が聖地巡礼をするのかは不透明ですが、今回も地元の経済活動を軽く凌駕する規模の旅行者がかの地を訪れることは間違いありません。


国立天文台のある野辺山(のべやま)

コナンシリーズの新作は「名探偵コナン 隻眼の残像」です。2025年4月18日に公開が予定されています。日本全国の観光地が注目する今回の舞台は「長野県」です。


長野県南部にある野辺山(のべやま)には、世界最大級の口径を持つ電波望遠鏡が設置されています。現在公開されている予告編には、この望遠鏡が崩れる映像があり、製造元である三菱電機が「このアンテナは当社製なのですが。。」と公式のXで発信する事態になりました。

 

引用:三菱電機 公式Xより


周辺には千曲川や赤岳、避暑地である清里といった名所が点在しています。当該観光地にとっては、宝くじに当たったような経済効果による、忙しい2025年の春となるでしょう。東京から約3時間で行けるという利便性の高さも来訪意欲を高めます。春から夏にかけては草花や避暑地としての効果も期待できるため、二重の魅力を提供します。



聖地巡礼は「仕掛けるべきもの」

コナン君が今回の活躍の舞台になぜ長野県を選んだのかは定かではありません。ファン歴の長い方に聞くと、そもそもストーリーに長野県警察との繋がりがあり、そこから今回の天文台の示唆に繋がったのではとのことです。4月の映画のなかで明らかにされることでしょう。


映画のほかにも、毎週日曜日にNHKで放映される大河ドラマでも、各地域で活躍した英雄を取り上げて欲しいという声が高まっています。鎌倉(2022年)、岡崎・浜松(2023年)、京都(2024年)と続いた舞台は今年、東京の日本橋を舞台とした話に変わりました。初期の舞台が花街の吉原ではありますが、今後主人公である蔦屋重三郎は日本橋や伝馬町といった場所に活躍の舞台を移します。少しずつ聖地巡礼も活性化していくのではないでしょうか。



聖地巡礼はもはや国内向けだけではない

特筆するのは聖地巡礼の規模感です。仮にコナン君が国内向けの映画だったとしたら、聖地巡礼の市場規模は限られます。現実には今春、アジア圏や欧米といった世界中から長野県は関心を受けることになるでしょう。


オーバーツーリズムと天秤にかけた最適解

自動車で野辺山のあたりを走ると、静かな牧場風景が続きます。ここに国内外の観光客が数多く赴くことは、プラスの面ばかりではありません。オーバーツーリズムと呼ばれる社会問題があるように、現地の交通機関が観光客で埋まったり、物価が高くなったりするような弊害も指摘されています。


地元に「お金が落ちる」代わりに静けさを手放すのかは、現在日本各地で問われている問題です。人口減と向き合うこれからの日本において、聖地巡礼についても様々な意見があるのは当然です。ましてや従来から活発な観光地であった場所とは異なり、今回の舞台は静かな高原地帯です。現地を訪れるファンには適度のある行動を期待するとともに、地域が何らかの形で、賑わいとの天秤にかけた「最適解」を見つけることを願っています。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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