あの株はいまいくら?

第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はAeroEdge(7409 以下、エアロエッジ)をみていきます。


2023年7月4日に東証グロースに上場したエアロエッジは、商業用航空機である、仏Airbus社製A320neoファミリー機と米Boeing社製737MAX機用エンジンである「LEAP」に搭載される、チタンアルミ製の低圧タービンブレードの加工生産・販売を行っています。

また、eVTOL(電動垂直離着陸機、いわゆる空飛ぶクルマ)用部品やガスタービン用部品の受託加工も行っています。


同社は航空機エンジンメーカー大手である仏SAFRANと「LEAP」エンジンに搭載される、チタンアルミブレード需要の35%のシェアを、原則として一定の価格(取引契約上は2022年6月から2026年まで同一価格、2027年以降は一定額の減少)で供給する契約を締結していたことから、上場時点で安定した業績が今後も続くと期待されていました。

では、エアロエッジの上場後の株価の動きをみていきます。



エアロエッジの株価推移(上場から2023年11月8日まで)

2023年7月4日に上場したエアロエッジですが、上場初日は買いが殺到し値付かずとなりました。上場2日目(7月5日)に付いた初値は5860円と、公開価格1690円を大きく上回りました。

技術力高いグローバルニッチへの期待予想以上に高く、その後も堅調な値動きは続きます。7月10日には7400円まで上昇し、これが上場来高値となっています。


ただ、公開価格の4倍超までの上昇はさすがに行き過ぎと捉えられたのでしょう。ここからいっきに下げ足を速め、7月21日には安値4420円と約10日で3000円も値下がりしました。

その後はしばらく5000円を挟んだ上下の動きが続きましたが、8月中旬に大きな動きが出ました。きっかけは決算発表です。


同社は8月14日、24.6期通期の純利益予想を5.5億円(前期比18%減)と発表しました。前期に繰延税金資産を計上し、法人税等調整額がマイナス(利益)になった反動から減益予想としています。今期の減益予想を受けて株価は急落。8月16日には3790円まで下落しました。


しかし、そこから切り返しの動きになります。8月中旬でも1ドル140円台半ばで推移していましたので、会社計画の想定為替レート1ドル133円は保守的と捉えられた可能性があります。16日から6日続伸となり、いっきに5000円の大台を回復しました。


全体相場の影響を受けたこともあり、8月後半からは軟調推移に。株価はずるずると下値を切り下げ10月24日に上場来安値3330円まで下落しました。足もと、やや切り返し、3000円台半ばでの推移となっています。



【エアロエッジの日足チャート(上場から2023年11月8日まで)】



今後にポイント

エアロエッジは比較的株価材料の多い会社といえます。直近でも以下の発表を行っています。


9月  4日「新規量産案件に対応するため新工場建設を発表」

10月26日「英社などと3Dプリンタ分野で協業することを発表」 

11月  6日「米国シリコンバレーに拠点を置く3DOSと業務提携を発表」


材料が多ければ短期的な利益を狙うこともできます。さらに、ドル円の為替レートは150円台で推移していますので、今後通期計画の前提為替レートの変更、それに併せた業績予想の情報修正も期待されます。

日米金利差などを考えると円高方向に急激に振れるということは考えづらいと思います。同社のようなキラリと光る下請け製造業をいまのうちにポートフォリオに組み入れておくのもよいと考えます。



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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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