あの銘柄を買ってみた!

NTTを買ってみた!

特定の銘柄の値動きを追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」今回はNTTを取り上げます。言わずと知れた通信大手企業で、証券コードは9432。東証プライムに上場しています。


1:25の株式分割を発表


NTTは2023年5月12日に1:25の株式分割を発表しました。1:25というのはかなり思い切った分割です。


発表日、5月12日のNTT株の終値は4108円でした。100株単位ですのでこの時点では約40万円の資金が必要となります。これが25分の1になると約164円。1万7000円程度で購入できることになります。


基準日は2023年6月30日(金)となります。なお、今回の分割に関しては定款の一部変更について総務大臣の認可を受けることを条件として効力が発生します。25分割の権利を得るのは6月28日(水)までに購入した株主で、分割した値段で買えるのは6月29日(木)からとなります。


分割自体はニュートラル、とは言え・・・


分割銘柄として任天堂を取り上げた際にもお伝えしましたが、株式分割それ自体は株価への影響はニュートラルです。買いやすくもなりますが、売りやすくもなりますので、分割イコール買い材料とは言えません。ただ、1~2万円で購入できるとなると、これまでとは違った層からの資金流入が期待できます。


株式に興味はある、リスクについても理解した。ただ、まだ運用に回す資金が潤沢ではないという方でも、2万円弱であれば資金を捻出することは難しくないと思います。この金額であれば、毎月100株ずつ購入するといった買い方もできます。株価は日々変動するため、買うタイミングというのも重要ではありますが、ここまで少額であれば「迷っているならとりあえず買ってみよう!」という戦略もアリでしょう。


毎月100株ずつ購入しながら、期待通りの動きになっていればボーナス時期などにまとまった株数を購入する、逆に期待外れの動きであった場合には継続購入はストップするといった買い方であれば、若年層の方でも無理なく資産形成が可能となります。


また、利益が出た時に一部を現金化する、急落した時にひとまず少額でも押し目買いを入れてみるといったように、株式に動きが出てきた際に機動的に対応しやすくなるというメリットもあります。「買った後は上がることを期待して寝かせておくだけ」ではなく、「買った後によりNTT株に対する理解を深め、クセをつかんで保有株数をコントロールする」といった一段高度な戦略も採りやすくなります。


分割発表後の株価は微妙な動き


株式分割を発表した後の株価は、5月12日は下落、15日は上昇、16日は下落となり、1日の値動きも大きくなっています。

また、値動きが大きくなる中で12日以降も出来高の多い状態が続いています。最低購入金額が引き下げられることは、巨額の資金を運用する機関投資家から見れば特にメリットはありません。一方、個人投資家にとっては大きな可能性を秘めたニュースと言えます。今は先々の評価が高まるかどうかのせめぎ合いが続いていると考えられます。


ちなみに、分割後は出来高は増えることになると思われますが、買い手と売り手の両方が増えると1日単位での値幅は出にくくなる可能性があります。もともと短期トレードに向いている銘柄ではないですが、デイトレーダーの方には敬遠されるかもしれません。ただしこれに関しては、企業側からすれば決算発表時などに値が飛ぶことを抑制できるという点でメリットとなる可能性があります。


今回の施策については、NTTに関心を持つ個人投資家が多くなるかどうかがポイントとなります。投資家層の裾野が広がらなければ、株主関連の事務コストが増大するだけです。一方、新たな層の掘り起こしに成功すれば、NTTは投資初心者がまず買っておきたい銘柄として市場からの評価が高まる展開も期待できます。今回のNTTの新たな取り組みに関しては、市場関係者だけでなく、他の上場企業も注目していると思われます。


今回は長期で銘柄をウォッチ


NTTの5月16日(火)の株価は4161円でした。ここからの値動きを追っていきます。手数料や税金等の影響はここでは考慮しません。4161円×100株で最低購入金額は41万6100円となります。なお、これまでの銘柄では1カ月という期間で見ていましたが、今回は長めのスパンかつ、2度に分けて値動きを検証することとします。


まずは6月30日(金)。分割前の今の時点で購入したとして、分割に向けて評価が高まるかどうかを見ていきます。なお、6月30日時点では25分割している予定ですので、株価は4161÷25=166.44 小数点を切り上げ167円で25株保有している前提として比較します。


第2回目は12月29日(金)。この日は2023年の取引最終日・大納会ですが、分割して半年後となります。年後半になってくれば、2024年から始まる新NISAに関連したニュースや運用関連の記事を多く目にすることになると思われます。その中で購入に対する金銭的なハードルが下がったNTTがどういった動きを見せるのか。この時点で追随する企業が出てきているかも気になるところです。


NTTのような知名度の高い企業が大幅な株式分割を発表したことにより、「貯蓄から投資」の流れが民間主導で大きなうねりとなるのか、それとも一時の話題提供にすぎないのか、皆さんも今回はじっくり構えて、今後の株価がどうなるかをイメージしてみてください。


第1弾の結果はこちら↓≫

NTTの答え合わせ~第1弾~

第2弾の結果はこちら↓≫

NTTの答え合わせ~第2弾~




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日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

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