JT(日本たばこ産業)は、日本最大のタバコメーカーであり、国内外でタバコ製品を製造・販売する企業です。高配当銘柄としても投資家からは人気を集めています。
しかし、近年では受動喫煙に対する健康リスクが懸念されており、タバコ関連銘柄への投資をためらう人もいます。個人投資家のなかには「買ってはいけない」と噂されることも。
そこで本記事では、JT株を買ってはいけないと噂される理由や業績、将来性などを解説していきます。JT株を購入するかどうか検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
JT株を買ってはいけないと噂される4つの理由とは?
JT株を買ってはいけないと噂される4つの理由について解説していきます。
①喫煙率の低下と市場縮小で業績悪化の懸念
日本国内では、喫煙率は年々減少しています。厚生労働省による国民健康・栄養調査では、20歳以上の男女の喫煙率は2000年に約30%でしたが、2022年には14.8%まで低下しました。
特に男性では、2000年の49.4%から2022年には25.4%へと著しく低下しています。喫煙率が低下している背景には、以下の影響が挙げられます。
・健康志向の高まり(がんや生活習慣病のリスクが周知されている)
・禁煙政策の強化(受動喫煙防止のための法改正)
・喫煙環境の厳格化(飲食店・オフィス・公共施設での禁煙)
・タバコ価格の上昇(税金引き上げによる負担増)
健康志向の高まりによって国内のタバコ市場は縮小を続けており、JTの国内売上は減少傾向にあります。
②タバコ規制の強化で経営環境が厳しくなる
日本だけでなく、世界的にタバコの受動喫煙への健康問題から規制の強化が進んでるのも懸念点です。例えば、以下のような動きが各国で見られます。
・タバコ税の引き上げ
・広告・マーケティングの制限
・パッケージの規制
・加熱式タバコへの規制拡大
WHOのたばこ規制枠組条約に基づき、医療施設や学校、官公庁、公共交通機関を含む公共空間で屋内全面禁煙を実施している国は74カ国に達しています。一部の国や州では、自家用車内での喫煙も禁止されるなど、規制はますます厳しくなっています。
違反者には罰金や営業停止などの厳しい処分が科せられ、タバコ業界の経営環境は年々厳しくなっているのが現状です。
また、カナダでは健康被害を巡る訴訟が拡大しており、JTを含む大手3社のタバコメーカーが約3.5兆円の和解金を求められる事態に発展しました。こうした動きは、企業の財務やブランドイメージにも悪影響を及ぼします。
③配当利回りは高いが減配リスクはある?
JTは高配当銘柄として知られており、2020年以降の配当利回りは約5~7%と非常に魅力的です。直近5年間における年間配当と利回りは、以下のとおりです。
・2020年(配当利回り:約7.3%)
・2021年(配当利回り:約6.0%)
・2022年(配当利回り:約7.1%)
・2023年(配当利回り:約5.3%)
・2024年(配当利回り:約4.75)
しかし、JTは配当リスクにも直面しています。売上の約6割を海外事業が占めるため、円高に振れると海外収益を円換算した利益が減少する恐れがあります。近年の円高傾向が続けば、業績に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。
また、2020年に年間配当154円のところ、翌年に140円へ減配した実績があります。基本的には株主還元の意向が強い経営姿勢の企業に違いはありませんが、業績の悪化や為替の影響によって、再び減配する可能性もゼロではありません。
④ESG投資の流れでタバコ株は敬遠されがち
投資の世界ではESG(環境・社会・ガバナンス)投資が重視される傾向にあり、一部の投資ファンドでは、タバコ産業への投資を避ける傾向にあります。
ESG投資の影響として挙げられる懸念点は、以下のとおりです。
・機関投資家がJT株を売却する可能性がある
・個人投資家の中でも倫理的な観点でタバコ株を避ける傾向の拡大
特に、政府系ファンドや大手金融機関の中には、すでにタバコ関連銘柄をポートフォリオから除外しているケースもあり、長期的には株価の上昇を抑える要因になり得ます。
JTの将来性はどうか?株価・業績推移と今後の見通しを解説
JT(日本たばこ産業)は高配当銘柄として人気がある一方、株価の将来性に対しては懸念もあります。
国内では喫煙率の低下や規制強化が逆風となっているものの、海外事業の拡大や加熱式タバコ市場の成長が追い風となる要素も存在します。
JTの直近の株価と業績は以下を参考にしてみてください。
参照:Traging View
JTの事業セグメントは、主に以下3つが挙げられます。
・たばこ事業
・加工食品事業
・医薬品事業
たばこ事業は全体の9割以上を占めており、タバコの販売業績が売上高に大きく影響しています。
なお、国内市場は健康リスクの観点からタバコの喫煙が避けられる環境にはありますが、海外市場が伸びているのが好材料です。タバコ事業のうち6割が海外市場によるものであり、2022年以降からはじまった円安の流れが海外事業の売上アップに貢献しています。
短期的には為替リスクにより株価が下落する恐れがある一方、長期的には海外市場の拡大が重要な鍵になるとみられます。
JTの株主優待が廃止された理由とは?
JTは、2022年3月に株主優待制度の廃止を発表しました。株主優待では「ご飯パック」や「カップ麺」などの自社グループ製品を贈る内容で、個人投資家に人気がありました。
廃止になった理由としては、発送や管理コストの削減と安定した配当金による株主還元を行う狙いがあります。
今後も配当を重視した株主還元が続く見込みで、現在の方針を見る限り、株主優待が復活する可能性は低いと考えられます。
まとめ
JT株は高配当銘柄として人気がある一方、喫煙率の低下やタバコ規制の強化などの影響を受け、将来性について懸念する投資家が多いのが現状です。国内市場は縮小しているものの、海外事業の成長や加熱式タバコ市場の拡大が業績を支える要因となっています。
また、カナダでの訴訟リスクやESG投資の影響など、長期的には株価上昇を抑制する要素があることも留意すべき点です。
株主優待廃止を受け、JTは配当による株主還元へと方向転換しているため、投資判断の際は業績や市場動向、リスクを十分に考慮することが重要です。