上場廃止続出するか 延命措置終了

2022年4月に東京証券取引所の株式市場区分が変更になり、3年が経ちました。以前の東証「1部」「2部」から、現在は「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3市場に再編されています。


移行の際に各市場の上場維持基準を満たしていなかった企業は、上場維持基準が緩和された経過措置を受け、東証に改善計画や進捗状況を提出して上場を続けてきました。


今後、この経過措置が順次終了していきます。基準を満たしていない企業は、上場廃止を迫られることになります。


プライム・スタンダード・グロースのコンセプト


「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3市場には、それぞれ市場のコンセプトがあります。


■プライム市場

・個人投資家や国内外の機関投資家が参加する市場

・機関投資家による大量の売買に見合う時価総額や流動性を備えた株式の取引

・グローバルな投資家との建設的な対話ができる企業の株式が対象


■スタンダード市場

・個人や一般的な投資家が参加する市場

・上記のプライム市場に比べ、時価総額や流動性、ガバナンスの基準を緩和

・東証に新規上場する際のメイン市場


■グロース市場

・高い成長可能性を持つ企業の株式取引の場

・成長性に関する十分な情報開示が必要

・東証が想定している銘柄は、研究開発費などの資金ニーズが非常に高い先行投資型の企業


プライム・スタンダード・グロースの上場維持基準


これらのコンセプトに基づき、3つの市場区分には、新規上場の際に満たすべき「上場基準」と、上場を続けるために満たさなければならない「上場維持基準」【表】が設けられています。



移行の際、【表】の上場維持基準に達していなかった企業は、未達の項目について、基準達成の目標期限を示す計画書を東証に提出し、経過措置を受けてきました。この経過措置は2025年3月1日以後に到来する事業年度末で終了となっており、3月期決算企業はすでに終わりました。順次、企業ごとに事業年度末が到来した時点で経過措置が終了していきます。


経過措置の期間内に未達の企業はどうなるか


経過措置が終了してもなお未達の項目がある企業に対しては、経過措置が終了した年度末(基準日)から1年間の改善期間が設けられています(売買高基準に関しては6ヵ月)。この改善期間内に基準に達しなければ、監理銘柄・整理銘柄(原則として6ヵ月)に指定された後、上場廃止となります。


ただし、「2026年3月以降の基準達成目標計画を提出した企業(超過計画開示会社)は、基準に達していなくとも目標期限までは上場廃止にせず、監理銘柄に指定して取引可能とする」という特例が設けられました。


なお、NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠において、「監理銘柄・整理銘柄」は対象外です。それでは、NISAで購入した上場株式が監理銘柄・整理銘柄に指定されるとNISAの対象外になるかというと、そうではありません。課税口座に移されることなく、NISAの成長投資枠の中で保有・売却が可能です。


流動性の基準が厳しい


上場維持基準は、特に流動性の項目について厳しくなっています。それは上場企業に高いガバナンスを求めるため。流通株式は、基本的には自社と関係のない株主の保有分です。投資家から魅力がないと判断されれば株価は下落。企業価値が低くなります。


3年間の経過措置の間、基準を満たさない企業が行ってきた対策は、主に自社株買いや持ち合い株の解消でした。


自社株を買い入れて帳簿上から消却すれば、分母となる発行済株式数が少なくなります。分子である流通株式数が同じであれば、流通株式比率が大きくなります。


また、創業者や親会社などの大株主が保有する株式や、取引や提携の関係維持目的で保有する持ち合い株式は、固定株と呼ばれる流通しない株式です。これらを市場に放出すれば流通株式数が増え、流通株式比率も引き上がります。


【グラフ】では、超過計画開示会社が、どの項目について未達で計画期限を開示しているのかを示しました。



流通株式比率の上場維持基準は、スタンダード市場とグロース市場ではどちらも25%以上ですが、スタンダード市場銘柄の未達企業数が突出しています。それでも流通株式比率の場合は、発行済株式数を減らすことで数字上は改善できますが、流通株式時価総額は株価が上がらなければ改善しません。スタンダード市場には、上場維持に厳しい企業が多く残っていることがわかります。


なお、グロース市場については、東証が上場維持基準を厳しくする方針で検討しているという話も伝わっています。


改善期間は、各企業の事業年度末によって異なります。よって、最終判断される時期は企業ごとに違います。お手持ちの銘柄が上場基準を満たしていない場合、改善期間や計画期限の提出の有無などは、日本取引所グループのホームページ内『改善期間等一覧』でご確認ください。



【出典】日本取引所グループ「上場維持基準の概要


日本取引所グループ「改善期間等一覧


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ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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