新NISAで取引できない「整理・監理銘柄」とは

2024年から、NISA(少額投資非課税制度)が大きく変わります。改正点のうち、「成長投資枠」の対象商品は、上場株式と一定の要件を満たした株式投資信託です。このうち株式については、「整理・監理銘柄を除く」と記されています。


この「整理・監理銘柄」とは、いったい何なのでしょうか?


その前に、株式の上場と上場廃止について


証券取引所は、広く大勢の投資家からの資金が集まる場です。ですから、公正な価格形成や適正な流通市場である必要があります。そのため、証券取引所は、株式会社が上場する際の基準や、上場し続ける基準を設けています。


「上場審査基準」は、証券取引所に新規上場する時の基準です。東証では、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場それぞれの水準に応じて、株主数や流通株式数、時価総額、事業継続年数などの項目を設け、上場審査を行なっています。札幌、名古屋、福岡の各証券取引所も、それぞれ上場基準を定めています。


しかし、株式会社が事業を行う中で、会社の状況や取り巻く環境は、日々変化しています。そのため、証券取引所は、上場し続けるための基準として「上場維持基準」を設けています。通常は、年に1回、決算期末時点で判断します。株主数や流通株式、純資産額、プライム市場においては1日の平均売買代金が、グロース市場においては時価総額がそれぞれ一定基準以上になるように定められています。


さらに、資金調達のインフラとして広く大勢の投資家の売買にふさわしくないと判断された証券は、上場廃止になります。東証が定める「上場廃止基準」では、「上場維持基準」に適合しない状態となった時から原則として1年などの期限や、有価証券報告書等の提出遅延、虚偽記載又は不適正意見等の項目が規定されています。


整理銘柄と監理銘柄


ただし、上場廃止基準に該当したからといって、すぐに上場廃止になるわけではありません。突然、上場廃止になると、その会社はもちろんのこと、取引先や金融機関、株主などに影響が及びます。投資家にとって「寝耳に水」となるようなサプライズや、規模の大きな上場会社の場合は、社会に広がる影響が大きくなる場合もあるでしょう。


そのため、証券取引所はあらかじめ、上場会社が上場廃止基準に該当する可能性がある場合や、上場会社自身から上場廃止の申請があった場合、そのことを広く知らせなければなりません。その銘柄が上場廃止基準に該当するかを審査したり確認したりするには、日数を要します。審査や確認の期間中も売買できますが、通常の状態でないことを周知させるため、その証券は証券取引所が「監理銘柄」と指定します。


審査や確認をした結果、上場廃止基準に当たらないと判断されれば、監理銘柄の指定が外れ、通常の上場銘柄として取引されます。


一方、審査や確認をした後に上場廃止が決定された場合は、「整理銘柄」に指定されます。整理銘柄でも取引は行われますが、いずれ上場廃止になることが知らされている銘柄ですから、通常は極端に低い株価での流通になります。


整理銘柄に指定されると、原則としてその1ヵ月後に上場廃止になります。上場廃止日の前日まで整理銘柄として取引はできますが、多くの場合は1円の利ザヤを稼ぐようなマネーゲームになりがちです。


2023年9月中旬時点の主な監理・整理銘柄


本稿執筆時点である2023年9月15日、東証が監理銘柄(確認中)に指定しているのは、21銘柄の株式と1銘柄の上場株式投資信託(ETF)。主な銘柄は【表1】の通りです。審議中の監理銘柄はありません。



監理銘柄は、証券取引所が上場廃止基準に該当するかどうかを認定するまで、指定が続きます。


上場廃止基準に該当すると、整理銘柄になります。整理銘柄に指定された時点で、証券取引所は「上場廃止等の決定について」という書面で広く知らしめます。これには指定期間、上場廃止日も明記されます。執筆時点において、東証の整理銘柄は2銘柄です【表2】。



整理銘柄と監理銘柄は、新NISAで購入できない


ここまで説明をしてきた監理銘柄と整理銘柄は、新しいNISAでは購入できません。


成長投資枠の投資対象商品の補足に、「整理・監理銘柄を除く」と記載されています。NISAは長期間の資産形成を促す制度ですから、上場廃止になるかもしれない銘柄は、投資対象から外すという趣旨は、理解できますよね。


なお、東京証券取引所のWEBページなどでは「監理・整理銘柄」と記載していますが、新しいNISAの説明の中での金融庁の表記は、「整理・監理銘柄」となっています。


【参考】

●日本取引所グループトップ>株式・ETF・REIT等>上場制度(内国株)

https://www.jpx.co.jp/equities/listing/index.html

●日本取引所グループトップ>上場会社情報>監理・整理・改善期間等・猶予期間

https://www.jpx.co.jp/listing/market-alerts/index.html


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

石原 敬子の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております