BTCドル、約7カ月ぶりの…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年11月19日16時頃、対円では1422万円前後と前週(7日前)比で約11.3%低い水準で取引されています。BTCドルが9万1100ドル台と、月初来では16%超の下落率です。
11日から18日午後にかけてBTC相場は、下値を探る動きが続きました。
BTC円は1600万円割れで戻りが鈍くなると、14日には1500万円を下抜けます。週明けも売り圧力が強まり、18日昼頃には1400万円を割り込みます。一時、5月前半以来の安値1385万円近辺まで下げ幅を広げました。

※Trading Viewより
BTCドルは、先物市場で積み上げられたロングの投げで下落スピードが加速しました。13日NY時間に節目10万ドルを割り込むと市場心理は悪化します。週末も売り圧力が強まり、週明け早朝には9万3000ドル前後まで下落しました。
一旦は持ち直すもNY勢が売り方にまわると、18日アジア時間には4月後半以来の9万ドル割れ、8万9200ドル前後まで大きく値を下げました。米政府機関の閉鎖解除は結局、暗号資産にとって支えとなりませんでした。
ただし、10月に記録した最高値から3割近くまで下落すると、さすがに売りも一休み。下値を切り上げる動きも見られました。

※Trading Viewより
ETFの平均所得価格を割り込む?!
BTCドルにとって、8万9600ドルというのは1つ節目だったようです。
「ビットコイン現物投資型ETF、投資家に含み損…」https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-11-18/T5WO6WKK3NY800
こちらの記事によると、米国で上場されている現物ビットコインETFの平均所得価格がおよそ8万9600ドル。これはETFが上場されて以降、資金流入を加重平均した値です。
あくまで平均値ではありますが、その値を下回ると投資家は含み損を抱えることになります。そうなると投資家の行動はさらに慎重となり、資金流入が一段と細る可能性もあるでしょう。
米国で上場されている12銘柄の現物ビットコインETFは17日、全体で2.54億ドルの流出超でした。4営業日連続の流出超となり、4日間で18.91億ドル(2910億円超)の資金が現物ETFから出ていきました。

※CoinMarketCapより
下落した要因は複数?
BTC円は10月に記録した最高値1898万円前後から500万円以上(約27%)、BTCドルが12万6200ドル台から3万7000ドル(約29%)も大きく売られました。
大幅な下落について、Tracy Shuchart氏がXに投稿した考察が一番腑に落ちました。同氏は、暗号資産トレーディングのプラットフォーム「NinjaTrader」のシニアエコノミストです。
以下が、Tracy ShuchartのX投稿をまとめた内容です。
https://x.com/chigrl/status/1990584897703195018
現在のビットコイン市場は、過去の急騰の反動と構造的な歪みが一気に噴き出した局面にあります。今回の下落は一つの要因では説明できず、複数の要素が立て続けに市場を揺らしました。
まず、相場を押し上げてきたストーリーが崩れました。2024年から25年にかけて価格を支えたのは「FRBの利下げ期待」と「ETFを通じた機関投資家マネーの流入」です。2024年から今年10月にかけて、この二本柱でビットコインは4万ドルから12万6000ドル台まで上昇しました。
その間に先物の未決済建玉は940億ドルまで膨らみ、一部の取引所では1000倍という異常なレバレッジも提供されました。
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しかし、米連邦準備理事会(FRB)高官の発言で状況は一変します。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に対する利下げの織り込み度は90%から40%へ急低下し、短期債の実質利回りは高止まりしてしまいました。
この金利先安観の急速な後退を背景に、機関投資家は冷静にリスク資産への配分を落としました。そのため、わずか数日で現物ビットコインETFから11億ドルが流出しました。

※Trading Viewより
見限られたわけではないが…
現物ビットコインETFは機関投資家の参入を促しましたが、簡単に購入できるということは逆に容易に売却できるということでもあります。リスク資産であるビットコインを投資家が手放し始めると、市場の内部構造が一気に緩みました。
4万ドルから8万ドルで仕込んだ長期保有者が利益確定に動き、30日間で81万5000BTCを売却しました。もっとも、ビットコインそのものが見限られたわけではなく、今後も予想される乱高下を避け、まずは50-150%の含み益を確定した動きです。機関投資家は今後、安いところでの再エントリーを狙っています。
BTCドルの10万ドル割れではストップロスが連鎖的に発動し、10月から11月にかけて200億ドル超のレバレッジポジションが強制清算されました。1日で30億ドル超が吹き飛ぶ日もあり、清算売りが更なる売りを呼び込む典型的な悪いスパイラルが形成されました。
先物市場の未決済建玉は940億ドルから680億ドルまで縮みましたが、まだレバレッジが完全に掃けたとは言い切れません。なお、大半は未実現利益ではありましたが、大幅な下落でおよそ6000億ドルの時価総額が失われました。
さて、今の市場には自然な買い手がいない状況です。機関投資家はリスク配分を引き下げ、長期保有者は買い場を待ち、個人投資家は急落に身動きが取れずにいます。新規参入者も、レバレッジ取引の清算と価格の安定を確認するまでは動かないでしょう。
「高い実質利回りやドル高」というビットコインにとって逆風の中、市場は現実に沿った再評価を進めています。現在は、どの水準で買い手が戻ってくるのかを探る局面と言えるでしょう。



