米最高裁の審理が始まる・・・なぜ大統領に関税権限があるのか?
11月5日から米最高裁でトランプ関税の審理が始まりました。
まずは、なぜ裁判まで進展しているかということをおさらいしておきましょう。
そもそもの理論として、合衆国憲法(第1条第8節第1項)で連邦議会が関税、輸入税、消費税を賦課して徴収する権限を有することとしています。
国家権力者が一人で決めるのではなく、関税などは様々な企業等に影響を及ぼすことで、議会が議論を重ねて決定するものが原則です。
ちなみに日本も立法府に権限がありますので、国会で決めることになります。
しかし、1974年通商法301条、国際緊急経済権限法(IEEPA)など、緊急事態となった場合は大統領に権限が委譲することが決められています。
IEEPAでは安全保障、外交政策及び米国経済に異常の脅威が認められる場合と定められています。
例えばテロ行為が行われたときに、議会の承認などを待たずに緊急に関税引き上げ(もしくは引き下げ)などを行うことができる仕組みです。
ここを逆手にとったトランプ大統領は、現在を緊急事態としました。
そして、世界中を相手に関税の権限を自らの手に収め、第2次トランプ政権では好き勝手に関税をかけまくっているわけです。
自分の政策を通すことで権限を大統領に集めてしまうと、議会の存在意義が全くなくなり独裁政治になってしまうリスクがあるわけです。
米最高裁・・・保守派の動きに注目
最高裁に進む前に、連邦控訴裁判所などで訴えがあったわけですが、関税措置の大半を「違法」との判断を下しています。
大統領権限を逸脱しているとの結果になったわけで、最高裁まで持ち込まれたわけです。
最高裁は終身となる判事9人のうち6人が保守派、更にそのうち3人(ゴーサッチ判事、カバノー判事、バレット判事)がトランプ大統領に指名されています。
よって、最高裁では大統領に都合の良い結果が出るのではないかとの予測があります。
(ちなみにほかの他の保守派はトーマス判事、ロバーツ判事、アリート判事、リベラル派はソトマイヨール判事、ケーガン判事、ジャクソン判事)
しかし、11月5日での口頭弁論ではリベラル派だけでなく、ゴーサッチ判事とバレット判事が大統領が関税を決めることに懐疑的な見方を示しました。
同じく保守派のロバーツ判事が「本来常に議会の根幹的な権限だ」と述べています。
トランプ大統領に指名されたとは言うものの、非常事態を理由にして今後も大統領に権限が集まることを懸念していることがうかがえます。
保守派のトランプ関税への懸念表明で、ここまで世界中を巻き込んで混迷に陥れたトランプ関税が無効になる可能性が出てきたのです。

為替はどう動くのか?
ここからは、仮にトランプ関税が無効になった場合を想定して為替レートがどう動くかを予想してみましょう。
株式市場とは違い確実に、こうなるという答えがないのが為替の難しいところです。
5日の口頭弁論(保守派の懸念表明)後の米株市場の動きをみましょう。
米株は関税の正当性を支持するとの見方がやや後退しGM、フォードなどの自動車株や建機のキャタピラーが大幅に上昇する反応を見せました。
株式市場は単純に、高関税で影響を受けてしまう企業の株が買われたわけで、違法となった場合も同じ結果になるでしょう。
米株だけで反応すれば、米株の上昇で為替市場もリスク選好の動きになり、ドル円やクロス円は買われやすくなるかもしれません。
ただ、為替市場はそう単純にはいかないかもしれません。
レビット・ホワイトハウス報道官は「常にプランBを準備している」と述べているように、次のトランプ政権の動きが左右することになります。
何としても、貿易不均衡を止めたいトランプ大統領ですので、貿易不均衡を止めるためにはドル高是正に動く可能性もあるでしょう。
大統領就任前の昨年4月に円安が進むと「大惨事」と表現するほど懸念を表明していました。
また、当時為替相場(ドル高)は「バイデン大統領が事態を放置している証拠」と述べ、日本と中国を名指しで非難していました。
課税賦課が大統領権限で認められなかったことで、為替での貿易不均衡を行うリスクもあるわけです。
今後の展開はどうなるかは分かりませんが、最高裁の結果次第で為替相場が大きく動くのを知らないでやってはいけないでしょう。



