今回解説していく通貨はノルウェー・クローネ円(nok/jpy)とスウェーデン・クローナ円(sek/jpy)です。両通貨とも明確な上昇トレンドにあり、基本的には押し目戦略が有効となるでしょう。中長期視点での重要な上値目標も近づいてきました。ファンダメンタルズ面では、ノルウェーは穏やかな金融緩和の継続が見込まれる一方、スウェーデンは次の一手が利上げとの声も聞かれており、来年以降の金融政策に注目です。
今後の相場の焦点:ノルウェーは来年も金融緩和方向、スウェーデンの次の一手は利上げか
まずはノルウェーおよびスウェーデンの現在の金融政策状況を確認していきます。
ノルウェー中銀(ノルゲバンク)は2021年9月から金融引き締めを開始。2023年12月には政策金利を4.50%まで引き上げて、2025年6月から金融緩和局面へと移行しました。現在の政策金利は4.00%となっています。
金利据え置きを決めた直近11月会合時の声明文では
・政策金利の引き下げを急いでいるわけではない
・依然として引き締め的な金融政策が必要であると判断
・インフレ率は依然として高すぎる
・9月に提示された政策金利見通しは、今後3年間は年1回の利下げという方針と一致している
・ノルウェー経済の見通しに重大な変化を示唆する新たな情報は入っていない
・経済が概ね現在想定されている通りに推移すれば、政策金利は今後1年間でさらに引き下げられるだろう
などの見解を示しました。
今後も穏やかな金融緩和局面が続くことになりそうですが、まずは次回(12月18日)の金融政策決定会合で示される新たな金利見通しに注目しておきましょう。
スウェーデン中銀(リクスバンク)は2022年4月に金融引き締めを開始。2023年9月に政策金利を4.00%まで引き上げて、2024年5月から金融緩和局面へと移行しました。現在の政策金利は1.75%です。
金利据え置きを決めた直近11月会合時の声明文では
・インフレ率は依然として目標を上回っているが、9月の予測と同水準に低下した
・理事会は以前に公表した金融政策計画に従い、政策金利を1.75%で据え置くことを決定
・政策金利は9月の予測通り、今後しばらくこの水準に維持されると見込まれる
などの見解が示されました。
中銀は9月に「緩和サイクルはおそらく終了した」との見解も示しており、市場では「しばらく先の話になるが、次の一手は利上げ」との見方が広がっています。こちらも金利・経済について新たな見通しを次回(12月18日)の金融政策決定理事会で発表する予定。市場の注目を集めることになりそうです。
両国を比較すると現行の金利水準こそノルウェーが高いものの、スウェーデンはこの先金利先高観が高まっていくことになるかもしれません。
NOK円 週足チャート分析:押し目買い継続も16.00円手前では注意が必要
ではテクニカル面でも現在の状況を確認していきましょう。下図のチャートはノルウェー・クローネ円(NOK円)の週足チャートになります。

NOK円は2020年3月に史上最安値となる8.97円まで下落した後は買い戻し基調となっています。2021年以降は上昇の勢いも穏やかとなっていますが、現在は2023年3月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の黄色実線)内の動きとみてよさそうです。
また、チャート下部に追加した「DMI」によると+DIが-DIを上回っており、現在は上昇トレンドであることを示唆。トレンドの強さを示すADXも上昇基調にあり、はっきりとした上昇トレンド傾向が示されています。
昨年7月につけた直近高値の15.32円もすでに上回っており、次の目標は2015年5月高値の16.36円となるでしょう。ただ、過去の動きをみると節目の16.00円前後は重要なポイントとして意識されてきた経緯(チャート上の四角で囲った部分)があり、今回の上昇局面でもすんなりと16円台に乗せてくるかに関してはやや疑問符がつきます。
基本的には押し目買い方針の継続で問題ないでしょうが、16.00円が近づいてきた際には注意が必要となりそうです。
SEK円 月チャート分析:急ピッチでの上昇が続き、30年来のレンジ上限を目指すか
次はスウェーデン・クローナ(SEK)円について、テクニカル面で現在の状況を確認していきましょう。下図のチャートはSEK円の月足チャートになります。
SEK円は2020年3月に直近安値をつけた後、しっかりとした買い戻し基調となっており、足もとでは2014年1月につけた直近高値の16.42円も上抜けてきました。チャート下部に追加した「DMI」で確認しても+DI>-DIと上昇トレンドを示唆。トレンドの強さを示すADXも下げ止まりから上昇基調にあります。
チャネルラインに到達するほど、ここまでの上昇が急ピッチで進んできた点は注意を要するところですが、こちらも基本的には押し目買い方針を維持しておくべきでしょう。今後のターゲットは1998年および2007-08年につけた18円台。1990年代以降に形成された10-18円台の大きなレンジ相場の上限を試しにいくことができるか注目です。
今後の取引材料・変動要因をチェック:18-19日の各中銀会合に注目
最後に今後1カ月間の経済指標や重要イベント等も確認しておきます。注目は日本・ノルウェー・スウェーデンの金融政策。日本は利上げ、ノルウェーは利下げ、スウェーデンは据え置き方向となりますが、利上げや利下げがあったとしても穏やかなペースにとどまる見込みです。日銀は植田総裁の会見、ノルウェーやスウェーデンは中銀の新規見通しなどをチェックして、今後の金融政策方針をしっかりと確認しておきましょう。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
・12月4日 スウェーデン 11月消費者物価指数(CPI)
・12月10日 ノルウェー 11月CPI
・12月18日 スウェーデン スウェーデン中銀、政策金利公表
・12月18日 ノルウェー ノルウェー中銀、政策金利公表
・12月19日 日本 11月全国CPI
・12月18-19日 日本 日銀金融政策決定会合



