筆者はファイナンシャルプランナーの会社を経営しています。2025年は縁もあり、個別相談やマネースクール事業などで個人投資家と1対1で面談をする機会が急増しました。アセットやボラティリティなどの専門用語を使って説明しても話が進む中上級者がいる一方、「少し投資をはじめてみました。具体的には、見よう見まねで『FX』をやっています」という方が多いのがとても印象的です。S&Pやオルカンの仲間にFXがいます。
FXの持つライトな印象
FX(外国為替証拠金取引)は外国為替レートの変動を利用して利益を狙う投資です。為替レートが「上がるか、下がるか」を予想し、予想が当たればレート変動の差額を受け取ることができます。いわゆる為替売買と異なるのはレバレッジです。証拠金にレバレッジをかけることで、預け入れた金額よりも何倍もの大きな金額で取引をすることができます。
個別相談でFXの希望者に対し筆者はまず「追証って知っていますか?」と質問します。証拠金が一定の水準を下回った場合に、追加で資金を入金する義務です。取引中に損失が発生し、口座の証拠金維持率が規定の基準を下回ると、FX業者から追加の証拠金を求められます。この追証で身を崩す投資家も何人も見てきました。もちろん違法性があるわけではなく、FXはそれだけ中上級者向けの投資商品なのです。
それも数ある資産運用の方法のなかで、FXは際立ってハイリスク・ハイリターンの立ち位置です。筆者は投資初心者の方から投資をしたいという相談を受け、その直後に「FXを考えています」と来た場合、リスクとリターンを説明して反応を見るようにしています。FXはあくまで余剰資金で取り組むもの。インデックスなどコアとなる投資が柱となっていて、その周囲を回るような位置で高いリターンを期待するものです。FXだけに投資するのは健全とはいえませんと。少しずつ熱を帯びてしまいます。なぜこのような投資初心者がいるのでしょうか。

FXのCMに感じる「落ち着いた印象」
FXがリスクと落差のある投資初心者の方にも「刺さって」いるのは、FX事業者の展開するCMの影響も大きいです。10年ほど前までは著名な芸能人を起用したFXのCMが幅広く展開され、投資をはじめようかなという人たちに訴求していました。最近は「FXやCFD(差金決済取引)」など同様の難易度を組み合わせて、相応のリスクを伺わせる内容のCM構成も多くなっており、ミスリードの心配をさせない訴求方法をしていると感じます。業界の自主規制なのでしょうか。
ただ、次に問題になるのはYoutubeのような新興勢力です。導入口で読者の関心を惹きつけなければならないYoutubeは、どうしても「刺激的なスタート展開」が必要です。こうすればFXで絶対に損しない!であるとか、今は円安だからFXをやろう!という、既存メディアではそれって大丈夫?と捉えられるような訴求方法です。
筆者も2025年縁あってYoutubeの事業者からお声がけいただき、何本か台本を作成しましたが、「日本の政治家はあなたが知らない節税方法を知っている」という疑わしいものでした(どうやら政治団体のことを言っているようです)。
FXをするには体系立てた勉強を
それでもFXには高いリターンが期待できるのも事実。高い運用率を期待している方々に、我々専門家はどのようにコーチングすればいいのでしょうか。今年になってお手伝いしているマネースクール事業に、その答えがありました。
それは「体系立てて勉強すること」です。FXならまず大前提として為替の勉強があります。どのような背景で円高になり、円安になっていくのかを学習することです。合わせて進めたいのは「テクニカル分析」です。ローソク足や移動平均線などを学習することによって、FXの傾向を掴むことができます。初心者であれば、テクニカル分析を一通り学習してから少しずつチャンレンジしてみましょうという案内をしています。
テクニカル分析は、個別株への投資にも活用することができます。FXだけではなく、個別株も合わせて複数の投資商品でアセットを組む。この考え方もまた、FXのリスクを下げることに繋がります。

ドル円相場を読めない今日
最近のニュースを見ていると、為替を読む難しさをとても感じます。2026年秋に中間選挙を迎えるトランプ大統領と、積極財政を掲げる高市総理の本格始動は、為替の難しさをより高めていくことでしょう。少なくとも「日本は積極的になるから円高!」とYoutubeで無責任に言い散らかしているような単純な構図ではありません。
体系建てていて、かつ客観的な評価のもとで展開する「投資の勉強」が、投資の初心者にとって必ず通る道になってくれることを願います。SNSを使った詐欺事例からの被害も含め、いま国が優先して取り組むのは、NISAよりもこの「パーソナルファイナンス」だと思います。



