FOMCまでは良かったものの…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年12月11日13時頃、対円では1406万円前後と前週(7日前)比で約3.5%低い水準で取引されています。BTCドルが9万ドル台をやや割り込み、月初来で1%弱の下落、年初来では3.5%超の下落率です。
BTC相場は週末に伸び悩むも、週明け8日から買い戻しが優勢の展開に。金融市場の注目イベント米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を10日NY午後(日本時間11日未明)に控え、神経質ながらも下値を固める動きでした。
BTCは、対円では1364万円台を下値に9日には1484万円台まで、対ドルでは8万7700ドル台から9万4600ドル台まで大きく反発。マクロデータから無理やり買い材料を探すとすれば、10月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が767.0万件と予想の715.0万件を上回ったことでしょう。
FOMCでは予想通り0.25%利下げが決定され、米・中長期金利も低下しました。しかしながらFOMCメンバーの金利見通しで委員会内の相違が目立ち、早期の追加利下げの可能性が遠のくと、暗号資産にとって逆風と受け止められました。
BTC円が1400万を割り込んで1395万円前後まで反落し、BTCドルは9万ドルを下抜けて8万9400ドル台まで売り押されました。

※Trading Viewより
富裕層向けに大手金融機関が
ところで、BTCが反発したころ、米国の大手暗号資産取引所コインベースがPNCとビットコイン取引で提携したことを発表しました。
「Coinbase and PNC Partner to Expand Direct Bitcoin Access for Clients」
PNCは米国で資産規模トップ10に入る大手銀行で、商業銀行業務から資産管理まで幅広いサービスを展開しています。特に富裕層向けのプライベートバンク部門は、長期的な資産形成や相続対策を支援することで知られています。近年はデジタル分野への投資を強化し、顧客の利便性を高める取り組みを進めてきました。
2025年に入るとPNCは暗号資産分野への参入を決断し、大手取引所コインベースと提携しました。コインベースが提供する「Crypto-as-a-Service」という仕組みを活用し、取引やカストディ(資産の安全な保管)、決済を一体的に提供できる体制を整備。これにより、従来の銀行サービスと暗号資産の取引を同じプラットフォームで利用できるようになりました。
12月9日からPNCは、プライベートバンクの顧客向けにビットコインの売買サービスを開始しました。外部の取引所を経由せず、既存の銀行口座から直接アクセスできる点が特徴です。対象は高額資産を持つ顧客層であり、伝統的金融機関が暗号資産を本格的に取り込む動きとして注目されています。これにより、富裕層顧客は安全性と利便性を兼ね備えた環境で暗号資産に投資できるようになりました。

アジアのお金持ちも
アジアでも富裕層が暗号資産に目を向けています。
「アジアの富裕層投資家、半数以上が保有比率を引き上げる…」コインテレグラフ
こちらの記事は、アジアの富裕層を対象にした最新の調査です。暗号資産が資産運用の中で確実に存在感を増していることが浮き彫りとなりました。
調査対象は投資可能資産が100万ドル以上の投資家で、シンガポールを中心に東アジアや東南アジアの10カ国から300人弱の回答を得ました。その過半数が今後数年で暗号資産の比率を増やす意向を示し、すでに多くがポートフォリオに組み入れていることが確認されました。
結果集計によれば、9割弱が暗号資産を保有しており、そのうち半数近くが資産の1割以上を割り当てています。投資理由としては「資産の分散」が最も多く挙げられました。積極的な投資家層はビットコイン、イーサリアム、ソラナを中心に保有していました。
回答の9割が、暗号資産を長期的な資産保全や世代間の承継に役立つものと考えています。短期的な、投機的な観点とは完全に一線を画しています。
さらに、規制に基づいた枠組みで提供されるなら、プライベートバンクやアドバイザーに暗号資産サービスを追加してほしいという声も多く寄せられました。シンガポールでは、カストディや投資家保護に関する明確な基準が設けられています。
暗号資産は投機ではなく長期的な資産戦略の一部として位置づけられ、アジアの富裕層にとって欠かせない存在へと定着しつつあるようです。




