「2026年の米利下げ回数」は、FOMCの慎重姿勢と金融マーケットの期待の歩み寄りにより方向づけられていくでしょう。さらに、トランプ大統領が異例の“即時利下げ要求”を示唆したことで、金利見通しに対する政治リスクも意識されます。2回程度の利下げを基調としつつ、回数増加の可能性を探りながら金融政策と政治圧力の交錯を注視する展開となりそうです。
焦点は「2026年の米利下げ回数」そしてペース
米現地10日に結果発表となる連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利であるフェデラルファンド・レート(FF金利)誘導目標レンジの0.25%引き下げが確実視されています。金融マーケットは、今年3度目となる利下げをほぼ織り込んで推移しています。
焦点は「2026年の米利下げ回数」で、FOMCの見通しとの差異が当分残るかもしれませんが、金融マーケット関係者はおおむね2回程度の利下げを見込んでいるようです。そして、そのペースもマーケットの動向に影響してくるでしょう。
米大手金融機関などからは、2026年前半に2回の利下げが行われるとの声が聞かれます。中立金利水準へ近づいたところで様子見になるとの見方のようです。
本邦証券などからは、まず年半ばあたり、そして年後半に差し掛かってから、比較的穏やかなペースで様子をうかがいながらの利下げなどが予想されています。総じて2-3回程度の利下げをメインシナリオとしつつ、景気減速が強まれば、4回程度へ増える可能性に言及している向きもあるようです。
利下げ巡るFOMC・マーケット・政権の三つ巴
ただ、FOMCがタカ派姿勢を残したまま利下げサイクルを進めるとの見方が前提となりそうで、金融マーケットの見方との差がどのように詰められていくかが鍵となるでしょう。ドル円もその流れを想定し、FOMCを前に今週は強含み気味でした(図表参照)。インフレ動向が完全に落ち着いたと判断できない限り、拙速に利下げを進められないとの思いがあるのでしょう。

一方で気になるのはトランプ政権の利下げ要求姿勢です。トランプ米大統領は9日、政治専門サイト「ポリティコ」のインタビューで、次期連邦準備理事会(FRB)議長に求める条件として、「即座に借り入れコスト(金利)を引き下げることがリトマス試験紙となるか」との問いに、「イエス」と答えています。
大統領が直接的に利下げを求める姿勢を示すのは異例で、「金融政策への政治的圧力」と受け止めることができます。FRBの独立性を脅かす材料で、金利見通しに不確実性を加える形となります。
実際、金利先物市場ではこの発言の影響で、「2026年の米利下げ回数」がわずかに増加方向へ振れたとの見方もあります。政治が利下げ方向を後押しするのではないかという思惑が一部で広がったためです。
基本的に、為替マーケットや債券マーケットの過度な利下げ期待とFRBの慎重姿勢の間で揺れながらも、徐々に双方の差を埋めながら比較的穏やかなペースで利下げサイクルを進めるとの見方になりそうです。ドル円は高止まりから徐々に上値が重くなり、米長期金利は時間をかけて低下基調へと向かうことになるでしょうか。
ただ、そこにトランプ政権が拙速な利下げ要求を挟んでくることが考えられ、次期FRB議長もトランプ大統領が望むハト派(金融緩和派)の人物となるなら、金利低下ペースが速まる可能性が高まります。過度な緩和方向への傾斜が警戒され、インフレの高まりなどもマーケットの波乱要因となりかねません。
金利低下によるドル安や、FRBの独立性を危惧したドル売りが加速する局面もありそうです。FOMCとマーケットの歩み寄りを背景とした利下げペースに、政治的圧力やインフレ圧力が交差してくるなか、金融マーケットはドル相場や米金利が不規則に振れる場面を挟みつつ推移していくことになりそうです。



