中国で商業宇宙産業の成長が加速し、株式市場でも関連銘柄が注目を集めています。複数の民間企業が「再利用できるロケット」の開発を本格化させ、技術革新が次々と進んでいます。再利用型ロケットとは、一度打ち上げた機体を回収し、何度も使えるタイプのロケットのことです。コスト削減や打ち上げ頻度の向上につながるため、世界的に開発競争が激化しています。
さらに、中国政府は「商業宇宙を次世代の成長産業として育成する」と明確に打ち出しており、政策面でも追い風が続いています。人工衛星や宇宙インフラへの需要が高まるなか、商業宇宙は「AI時代を支える重要な分野」として期待されています。
「朱雀3号」の初飛行失敗も、再利用型ロケットの打ち上げ続く見通し
中国の民間宇宙企業、藍箭航天空間科技(ブルーアロー・スペース)が開発した再利用型ロケット、「朱雀3号」は12月3日、初飛行を実施しました。中国企業による再利用型ロケットの打ち上げは初めてです。ロケットの軌道投入に成功したものの、ブースターの回収に失敗しました。着陸過程で異常燃焼が発生し、回収パッドへの軟着陸が妨げられたと報じられています。この失敗は、ロケット打ち上げ後に回収して再利用する技術の難しさを浮き彫りにしました。開発チームは「包括的な検証を実施し、引き続き将来のミッションで再利用型ロケット技術の検証と応用を進めていく」と表明しました。

企業間の開発競争は活発です。別の民間企業、星河動力航天は「智神星1号」のエンジン試験に成功し、近いうちに初打ち上げを予定しています。25回以上の再使用を目指して設計され、複数の人工衛星をまとめて打ち上げる用途でも期待されています。

「朱雀3号」と「智神星1号」のほかにも、複数の再利用型ロケットが初飛行を迎える予定です。
- 天兵科技「天龍3号」
- 中国航天科技集団「長征12号甲」
- 中科宇航技術「力箭2号」
- 北京星際栄耀空間科技「双曲線3号」
- 深藍航天「星雲1号」
など
初飛行が順調に進めば、中国の商業宇宙産業は「技術ブレークスルー」と「市場の本格拡大」が同時に進む可能性があります。
政府の産業育成方針も追い風
技術の進展と同時に、政府の産業育成方針も追い風です。2024年の政府活動報告では「商業宇宙・低空経済を新たな成長エンジンとして育成」と明記しました。25年の報告では「商業宇宙、低空経済、深海科学技術など新興産業の健全な発展を促す」とし、国家レベルでの推進姿勢を明確にしました。また、今年10月下旬に中国共産党の第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)が採択した「第15次5カ年計画(2026-30年)」の提言では初めて「航天強国」を「製造強国」「交通強国」「品質強国」「ネットワーク強国」と並列で掲げ、宇宙分野の戦略的重要性を強調しています。
中国の国家航天局は11月下旬、商業宇宙開発の高品質な発展を目指す計画を27年までに実現する方針を示しました。計画によりますと、商業宇宙開発は国家宇宙開発の総合的な枠組みに組み込まれ、宇宙分野における新たな生産力の形成と効率向上を目指し、中国政府が掲げる「宇宙強国」の建設を支えるとしました。
政策支援により、企業側は長期的な投資を進めやすい環境が整っています。

宇宙ビジネスはAI時代の“裏方”としても成長
商業宇宙産業が注目されるもう一つの理由は、「AI時代の計算需要を宇宙で補う」という構想が広がっているためです。米スペースXは衛星通信サービス「スターリンク」を拡大しており、将来的には宇宙空間にデータセンターを設置し、地上で処理できない大量の計算をこなす構想も検討しています。
中国でもAI向け計算需要が増えており、衛星通信ネットワークや宇宙データセンターへの期待が高まっています。宇宙ビジネスは単なるロケット開発にとどまらず、通信インフラやデータ処理の面でも価値が拡大しています。



