「利下げと利上げ」を受けて1g10,000円を超えた「新時代のプラチナ」

2025年12月18日(木)、長く貴金属のプラチナを追いかけていた筆者に待望の瞬間が到来しました。ある買取業者の依頼で2024年春からプラチナ(白金)の日足・週足・月足を追っていますが、調査対象であるインゴット1g(金でいうところの金塊)で10,000円を超えました。プラチナ新時代です。プラチナがこのタイミングで新時代を迎えた背景には、どのような理由があるのでしょうか。


ついに「金の代替」になるのか

プラチナや金などの貴金属は、オルタナティブ資産と呼ばれています。貴金属だけではなく、コモディティなどとまとめた総称としての呼び名です。株式や債券などの伝統的な資産に対して、オルタナティブ(=代替)という位置付けです。その名の通り、株式相場が上昇すれば下落、下落すれば上昇といった対照的な動きをすることが知られています。


金が動くのは戦争リスクと金利変動リスクといわれています。プラチナも同様の傾向で動きますが、より産業界の勢いやIT・ハイテク株の隆盛、消費者物価指数(CPI)などの変動が影響する印象です。


2025年12月中旬のプラチナ

そのプラチナのチャートがこちらです。注目すべきは12月15日週からの数日間で、それまでのチャート分析が意味を成さないほど、急ピッチで上昇していることがわかります。最後の問題で決着が決まるようなクイズ番組を彷彿とさせます。プラチナはこれまで8,000円台、9,000台と大台を超える際は、何度か近づいては反落するという慎重な動きをしました。それが今回の10,000円においては豪快な一足飛びです。「こんな動きもできるんだ」が、すっかりプラチナに親近感を覚えた私の率直な感想でした。


 

引用:買取のなんぼや プラチナ|今日の1gあたりの買取相場価格と専門家コメント


プラチナ高騰の背景にあるのは金の天井感です。こちらは同時期の金のチャートですが、プラチナと比較して上昇幅が緩やかであることがわかります。特に12月の中旬は、FRBが利下げを実行したものの0.25%と限定的になり、株式市場に失望が広がりました。その翌週には日銀が利下げを実行し、同様に株にとって冷や水となります。意思決定をめぐってはFRB内の意見の違いや政権からの圧力など、理由が複雑に絡み合う印象です。金はそれらの勢いを受けても、伸長するばかりでは無いということがわかります。


 


2025年は「オルタナティブの1年」のはずだった

もともと2025年は、オルタナティブの1年になる見通しでした。「令和のブラックマンデー」があった2024年から引き続き、株式相場の不安定感が懸念されていたためです。実際に2025年4月には、アメリカのトランプ大統領が相互関税の導入を宣言し、株式相場が緊張しました。NISAで投資信託をする方々に高く支持されている「オルカン(オールカントリー」も、この時期に大きく下落しています。


プラチナ、金は2025年に大きく上昇しているものの、株を押しのけてまで存在感を高めたかというと、物足りなさのある状況です。コモディティは定義が広すぎるため解説できませんが、同じオルタナティブである暗号資産も、最近の下落傾向を見ていると限り、オルタナティブの一員としての力強さは感じません。やはり、貴金属が特別なのでしょうか。


そんな一年の年末の折に超えた大台。これからの話をしましょう。2026年、プラチナの価格はどうなっていくのでしょうか。


「トランプ2期目」が鍵を握る

鍵を握るのはトランプ大統領です。大統領の任期自体は2028年まで残っているものの、2026年の秋には中間選挙が実施されます。大統領のイスのほかに上院・下院も抑えている共和党は「トリプル・レッド」と呼ばれ、野党である民主党の反撃を受け止める立場です。


いわゆる「王者の戦術」に、トランプ政権は不適当です。関税や外交を見ても、スタンドプレーが目立ちます。「TACO」と揶揄されるような、一旦打ち出した政策を引っ込める局面も目立ちました。そのたびに株式相場は大統領に失望の意を示します。また共和党には反トランプの勢力も一定程度いるとされ、党が一丸となって中間選挙を勝ち抜けるかの不安はつきません。また政権が都度介入している、中央銀行FRBの存在もあります。


2026年、これらの「混乱分子」が報じられれば報じられるほど、株式相場を中心にやはり不安定という流れになり、貴金属が引き続き高騰する流れが考えられます。貴金属、特に金における天井感はあります。その天井感と、株式相場における「オルタナティブの必要性」が天秤にかけられ、2026年の相場を形作ることとなるでしょう。2025年のクリスマスラリーを目前にして、インゴット1g10,000を超えた「新時代のプラチナ」の第二章です。


なお反落も予想された週明け12月22日(月)のプラチナは、続伸どころか最大級の上昇幅である453円の上昇です。日を経るごとに、新時代の信憑性は高まっています。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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