中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない――。そんな場合は、香港市場を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄の中から探してみるのが基本中の基本。ハンセン指数に選ばれる銘柄の中には、世界的な大企業もあれば、個性的で魅力的な銘柄もたくさん集まっています。このシリーズでは、香港市場の主要銘柄をハンセン指数の構成銘柄の中から選んで紹介していきます。今回もBYD(比亜迪:01211/002594)の続きです。
▼参考
・意外と身近にある中国株、街中で探してみた(5) 電気自動車の王者BYD、日本で販売台数を伸ばす「夢を実現する会社」
・中国株の銘柄選び 中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本
2009年に国産ブランド首位へ、BYD王伝福会長が中国富豪番付トップに
2008年、投資の神様ウォーレン・バフェット氏から出資を受けたBYD(01211/002594)は、勢いそのまま「F0」「F3R」「G3」「L3」「M6」などのシリーズを次々と発表していきます。このころのBYDの車種名はすべてアルファベットに数字を組み合わせた名称です。
2009年には年間販売台数が45万台を超え、前年比2.7倍と驚異的な拡大を遂げます。そして、民族系ブランドのトップを走っていた奇瑞汽車(09973)を抜いて中国の独自ブランド車として年間販売台数1位の座を奪ったのです。自動車事業に参入してからわずか6年、最初の量産車「F3」発売からたった4年での出来事です。
翌年の2010年については、80万台という強気の目標を打ち出します。株価も当然うなぎ登りに上昇。バフェット氏が出資した際に8HKドルだった株価は、わずか1年で10倍以上となり、創業者である王伝福会長の資産も膨れ上がります。この年の中国富豪番付で王伝福会長は前年の103位からごぼう抜きで1位となります。まさに絶頂期を迎えます。

資料:胡潤百富
絶頂期のBYDを襲った「ディーラーの反乱」
しかし、この成功の裏で経営を揺るがす大事件が発生します。2010年8月、河南省鄭州のモーターショーで、正規ディーラーたちが反乱を起こしたのです。会場には「BYDはディーラーを騙している」「BYDのディーラーになると全て失うことになる」などといった過激な横断幕が掲げられ、BYDのディーラーによる抗議が始まったのです。ディーラーたちは、BYDによる過度な圧迫で経営が行き詰まり、みな苦しめられているとの主張です。会場ではディーラー側とBYD側で小競り合いが起きます。メディアがこの「ディーラーの反乱」を大々的に報じたことで、BYDは厳しい社会的批判にさらされることになります。

2010年にディーラーが反乱を起こす
急拡大路線の末路、ディーラー網の崩壊と押し込み販売
この事件の背景には、BYDが強行した急拡大路線がありました。王伝福会長が掲げた過酷な販売目標を優先するあまり、綿密な市場調査を行わず同一商圏内に複数のディーラー店舗を乱立させたため、仲間内での過度な価格競争を招いていました。
さらに、目標台数達成のための「押し込み販売」によって、各ディーラーは売り切れないほどの大量在庫を抱え、経営難に陥る店舗が続出。販売を最優先した結果、製品品質低下による苦情など顧客対応の負担も限界に達し、追い詰められたディーラーたちの怒りが、モーターショーでの決起という形で爆発したのです。

ディーラーは大量の在庫を抱えることに
記憶に刻まれる2010年の挫折、経営路線の変更を決断
事件をきっかけにBYDの販売網からディーラーの離脱が相次ぎ、販売に急ブレーキがかかります。BYDは当初2010年に販売台数80万台という強気の目標を掲げましたが、事件を受けて60万台へと下方修正します。しかし、それでも目標には届かず、最終的な販売台数は52万台にとどまったのです。達成率は当初目標の65%と惨敗を喫します。
この挫折は、飛ぶ鳥を落とす勢いだったBYDにとって大きな転換点となりました。王伝福会長は自らの過ちを認め、それまでの「量の追求」を放棄。2011年からの3年間を「調整期」と定め、品質向上とディーラーとの信頼回復に全力を注ぐことを決断しました。その後、BYDは長い停滞期に入りますが、BYDにとって2010年は、経営の方向性を変える、大きな転換点となる年となったのです。

次回もBYDの続きです。お楽しみに。
まとめ:今回紹介した香港市場の主要銘柄
今回紹介した銘柄は、主に自動車と電池を手掛けるBYD(01211/002594)で、香港証券取引所メインボードと深セン証券取引所A株市場に重複上場しています。
【中国の自動車・電池メーカー】電池を祖業とし、03年に自動車事業に参入。22年3月にガソリン車の生産から撤退し、純電気自動車とプラグインハイブリッド車に完全シフトした。自社開発のリン酸鉄リチウム系の「ブレードバッテリー」は米テスラなどにも供給。都市軌道交通事業も手掛ける。子会社のBYDエレクトロニック(00285)を通じてスマホや電子機器の受託製造サービスも展開。米著名投資家のバフェット氏の出資で脚光を浴びた。




