日本の相場サイクル
日本における相場サイクルは、株価が景気・企業業績と密接な関係にあり、基本的には6 つに分かれるといわれています。
株価の上昇局面は、(1)金融相場(理想買い相場)→(2)業績相場(現実買い相場)→(3)人気相場(人気買い相場)の3 局面です。株価の下落局面は、(4)逆金融相場→(5)逆業績相場→(6)悲観相場の3 局面です。
ただ、上昇相場の人気相場や下落相場の悲観相場などの3 局面はいつも起こるとは限りません。むしろ、第 2 局面で終わる場合もあります。
それぞれの局面の合成体が株価サイクルで、10 年程度のサイクルといわれています。このほかにも、チャートを罫線と呼ぶ時代では、青年期相場、壮年期相場、老年期相場といった分け方があったそうです。
ここでは、株価の上昇局面である、(1)金融相場、(2)業績相場、(3)人気相場をかんたんに解説します。
金融相場
金融相場は株価の大底から始まります。景気悪化に対する金融緩和策から景気・企業業績の好転期待を通じて株価は上昇します。
現実が悪い環境の中、将来の改善を見越した買いで上昇する相場です。一方、マクロ経済や企業業績などミクロ面の好転が伴わない脆弱さを抱えた上昇であり、「相場は理外の理」と言われるゆえんです。相場の性格から「理想買い相場」とも呼ばれています。
株価は材料の後に続くとする「従因向果」という考え方ではなく、相場の結果から材料や原因を推測する「従果向因」という考え方が必要な局面といえるのかもしれません。「株価が上がり出したので調べてみたら、好材料が隠されていることがわかった」などというのがこれです。
内閣府が毎月発表している景気動向指数(DI)には、先行系列の中にTOPIX(東証株価指数)が入っています。景気実勢を判断するための指数における、先行系列の中に株価が入っている点は興味深いところです。
金融相場の前半は大型株、後半は小型株が上昇する傾向があります。業種では、証券、銀行、不動産、機械、電力・ガスなどの公共関連株が上昇するといわれます。
業績相場
金融相場が一巡したあとの中間反落の次に訪れるのは業績相場です。株価は息の長い上昇局面を迎えます。
金融緩和策を通じて景気・企業業績が回復し、ファンダメンタルズへの安心感を伴った動きとなります。金利が底打ちして上昇に転じるものの、景気・業績は好調が続きます。
経済環境とパラレルに相場が動くことで、相場の性格から「現実買い相場」とも呼ばれています。株価上昇によって利益の幅が大きく拡大するダイナミックな局面といえます。
業績相場では、素材産業や輸出関連などの大型株が上昇し、消費関連などの中小型株に波及する傾向があります。
人気相場
最後に人気相場があります。株価上昇が実体経済から乖離する中、相場自体が資金を呼び込む需給相場となり、時にはバブル相場とも呼ばれることもあります(図表1)。
業績相場が行き過ぎて、オーバーラン状態になったものが人気相場。相場の世界では軟着陸することは少なく、最後は行き過ぎることで天井を打ち、悲劇的な結末に終わりやすい。
1989 年末にいたる東京株式市場のバブル相場や、2000年にいたるITバブル相場はその型例です。
一方、人気相場は図表2のように中間反騰相場として扱われることもあります。あくまでも上昇相場の騰勢のピークが一巡したあとの「余熱」としての位置づけです。「夢をもう一度」的な相場です。
景気サイクルも頂点を過ぎる頃で、遅ればせに回復する業種がある半面、リーディング業種には陰りが出てくる。相場全体の迫力はさらに減速することが多いのが特徴です。
いずれにしても、人気相場は業績相場の延長線上にあると考えた方がよいでしょう。