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ストラテジー:ビットコインを中核資産とするトレジャリー企業

ソフトウエア企業からビットコイン・トレジャリー企業への転換


ストラテジー(旧マイクロストラテジー:MSTR)は、もともと企業向けBI(ビジネス・インテリジェンス)ソフトウエアを主力とする上場企業でした。しかし、現在の同社を理解するうえで重要なのは、ソフトウエア企業としての沿革そのものよりも、2020年に資本配分の考え方を転換し、ビットコインを企業財務の中心に据えた点にあります。


会社開示によれば、同社は2020年8月に2億5000万ドルで2万1454BTCを取得し、同年9月にはトレジャリー・リザーブ・ポリシー(企業の余剰資金をどのような資産で保有するかを定めた財務準備資産の運用方針)を採用して、ビットコインを主要準備資産と位置付けました。こうして同社は、「ソフトウエア企業でありながら、ビットコインを中核資産として保有する上場会社」という独自の位置づけを築きました。


ストラテジーがビットコイン投資の代替手段として受け止められた背景


この転換により、ストラテジー株の市場における位置づけも変化しました。米SECが現物ビットコインETFの上場・取引を承認したのは2024年1月10日であり、それ以前は、通常の証券口座を通じてビットコインに近い値動きへの投資機会を求める投資家にとって、ストラテジーは有力な選択肢の一つでした。


また、上場しているマイニング企業も存在したものの、採掘設備投資や電力コスト、運営面のリスクを伴うため、そうした固有のリスクを避けつつビットコインの値動きを取り込みたい投資家にとって、ストラテジーは比較的分かりやすい選択肢として受け止められたとみられます。実際、同社は早い段階からビットコインを主要準備資産とし、上場株式の形でその価格変動を一定程度反映する存在となっていたため、市場ではしばしば「株式市場におけるビットコイン・プロキシ(ビットコインの価格変動に連動する代替投資手段)」として理解されたのです。


現物ビットコインETFの承認後もストラテジーが意味を持つ理由


もっとも、現物ビットコインETFの登場によってストラテジーの役割が失われたわけではありません。ストラテジーは現在、自らを「世界初かつ世界最大のビットコイン・トレジャリー・カンパニー」と位置付け、株式や優先株などの証券を通じて、現物ビットコインETFとは異なる形で、投資家にビットコインへの経済的エクスポージャーを提供すると説明しています。


2026年4月12日時点の保有残高は78万897 BTC、平均取得単価は7万5577ドルであり、同年4月13日のフォーム8-Kでは、同社の優先株式「STRC」について、市場価格に応じて随時売却するATM(アット・ザ・マーケット)方式の発行により、約10億ドルを調達し、その資金で13927 BTCを追加取得したことが開示されました。結果として、現物ビットコインETFがビットコインそのものへの比較的直接的なアクセス手段であるのに対し、ストラテジーは、上場会社の資本構造を通じて、ビットコインへの相対的に高い価格感応度を求める投資家の選択肢として評価されているとみられます。


出所:TradingView


制度面の曖昧さと指数上の論点


一方で、ストラテジーのようにビットコイン保有を企業価値の中核に据える上場企業については、制度上の位置づけが必ずしも明確ではありません。MSCIは2026年1月、デジタル資産保有が総資産の50%以上を占めるDATCO(デジタル資産トレジャリー企業)について、直ちに指数から除外する提案は実施しない一方、投資ファンドに近い性格を持つ企業との線引きを改めて検討するとしました。


また日本でも、JPX総研は2026年4月3日、主たる資産を暗号資産とする銘柄について、当分の間はTOPIXなどへの新規追加を見送る案を示しました。つまり、ストラテジーをめぐる争点は価格変動だけではなく、こうした企業を事業会社として扱うのか、それとも資産保有ビークルに近い存在として見るのかという分類上の曖昧さにも及んでいます。


資本市場依存と返済リスク


さらに重要なのは、ストラテジーの持続性がビットコイン価格そのものだけでなく、資本市場で継続的に資金を調達できるかに大きく依存している点です。2025年の年次報告書によれば、ソフトウエア事業から得られるキャッシュフローだけでは、今後12カ月の債務返済や流動性需要を賄えない見通しとされています。


2025年末時点の負債は82億5000万ドル、2026年2月13日時点の優先株の発行残高は84億7000万ドルであり、2025年12月に設けたUSDリザーブの残高は22億5000万ドルでした。このことから、同社の持続性は、ビットコイン価格の動向に加え、株式・優先株市場を通じて追加資金を確保できるかに左右されます。


仮にビットコイン価格が長期にわたり低迷し、あわせて資金調達環境も悪化した場合には、保有資産の売却や財務再編を迫られる可能性があり、極端な場合には債務返済に支障が生じるおそれも否定できません。


模倣企業の増加とモデルの限界


こうしたモデルは、ストラテジー一社にとどまらず、市場全体へ広がりつつあります。ロイターによれば、2025年6月時点で、デジタル資産を本業としない上場企業のうち、少なくとも61社がビットコイン・トレジャリー戦略を採用しているとされています。


また同年9月には、企業が暗号資産トレジャリー戦略を公表する前の株価急騰を米当局が調べていると報じられました。ただし、こうした企業群は一見するとストラテジーの後を追う存在にみえますが、実際には同社と同等の信用力、資金調達力、流動性を備えているとは限りません。


そのため、前述したように、ビットコイン価格の低迷と資金調達環境の悪化が重なった場合、後発企業はストラテジーと同様のリスクに直面し、保有資産の売却や財務再編を迫られるケースが相次ぐ可能性があります。極端な局面においては、複数企業による売却圧力が同時に市場へ持ち込まれ、価格の下押しや信用不安が連鎖的に強まる懸念もあります。



まとめ


以上を踏まえると、ストラテジーは、上場企業によるビットコイン財務戦略の先駆例と位置付けられる一方、その持続性は制度環境と資本市場への依存に大きく左右される企業です。


言い換えれば、この会社の本質は「どのような事業を営んでいるか」だけではなく、「ビットコイン保有を拡大する仕組みが、制度面と資金繰り面でどこまで維持可能か」にあります。さらに、そのモデルが他社へ広がるにつれて、個別企業だけの問題にとどまらず、市場全体の投機性や脆弱性をどこまで高めるのかという点も、あわせて検討すべき論点になるといえます。

アナリスト

チョウ シンウ

広州生まれ。香港浸会大学で学士課程を修了後、コペンハーゲン大学にて学び、修士号を取得。香港の金融データ分野における実務経験を経て、現在はDZHフィナンシャルリサーチにてブロックチェーン・暗号資産分野に関する分析を担当している。

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