最近の加ドル、値幅は限定的
イラン戦争が始まって2カ月が過ぎようとしているが、中東紛争の不透明感は変わらず、金融相場全般が中東情勢に振り回される動きが続いています。原油高懸念が産油国通貨の加ドルの下支えとなる一方で、「有事のドル買い」が重しとなり、加ドルは他の主要通貨に比べると値動きが鈍いです。
29日のBOC会合、金利の据え置き決定か
来週の29日にカナダ中銀(BOC)の政策金利発表が予定されています。市場では政策金利を2.25%に据え置くことが見込まれています。カナダの3月CPIは前年比2.4%と市場予想には届かなかったが、前月の1.8%から伸びが上昇しました。カナダ中銀(BOC)が重視するコアインフレ指標のCPI中央値は前年比2.3%と前月から横ばい。マックレムBOC総裁は先週末に短期的なインフレ期待の高まりについては懸念しないと述べ、金利据え置きを年内に続けるかどうかについては言及しませんでした。景気減速・労働市場の悪化懸念による利下げ圧力がある一方で、中東情勢に伴うエネルギー価格の上昇がインフレ再燃リスクとなり、政策判断は難しい状況です。
USMCAの見直しも重要なイベント
カナダにとっても中東情勢と米関税政策の影響が大きいが、今年の7月1日に正式な見直しが本格化する米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)も重要なイベントであります。米政権が求めている原産地規則の修正やカナダの乳製品市場アクセス、中国製部品の利用制限などの課題で合意に達することは難しく、USMCAは不安定な状況に置かれる可能性があります。USMCAによる特恵関税を受けている企業にとって、USMCA見直しの結果は死活問題につながります。カナダの対米貿易主席交渉官は現状維持を望み、協定条項の大幅改定に意欲を示していません。USMCA見直しをめぐり、米・加の関係悪化が深まる可能性があります。
USMCAが2026年7月に見直しを迎えます。3カ国が最終的に延長に合意できなければ、USMCAは2036年に失効します。1994年に北米自由貿易協定(NAFTA)が発効して以降、北米3カ国の経済統合は30年以上におよぶ歴史があります。日本企業を含む多くの在米企業はUSMCAを前提にビジネスモデルを構築しているため、USMCAが失効すれば経済への影響は大きいです。
USMCAの発効を定めた米国の「USMCA実施法」は米国通商代表部(USTR)に対し、見直しの270日前までにUSMCAの運用に関するパブリックコメントの募集などを行い、180日前までに米国が見直しで提案する具体的な措置やUSMCAの延長に関する立場などについて、連邦議会へ報告するよう義務付けています。
USTRは同法に基づき2025年9月にパブリックコメントを募集する官報を公示し、12月3-5日に公聴会を実施したが、複数の業界団体が、USMCAは北米の競争力に不可欠だとして延長を支持し、通商政策の研究者らはUSMCAのこれまでの実績についておおむね肯定的な評価を示すとともに、輸出管理や投資審査など経済安全保障に関する内容を設けるべき、といった「更新」に向けた具体的な提言をしました。一方で、消費者団体は消費者を犠牲にしたビッグテック企業の大勝利、労働組合はメキシコでの労働者の搾取に対応できていないなどとUSMCAを批判し抜本的改革がなければ延長に賛成しないと主張しました。
トランプ政権は「欠陥が解決可能な場合にのみ延長」する方針です。
カナダの課題
●米国乳製品に対する不平等な市場アクセス
●オンライン配信法・オンラインニュース法が米国デジタルサービス提供者に与える影響
●米国のアルコール飲料流通に対する州レベルの禁止措置
●オンタリオ州、ケベック州、ブリティッシュコロンビア州における差別的調達措置
●米国輸出品をカナダで受領する者に対する複雑な税関登録手続き
●アルバータ州によるモンタナ州電力配給事業者への不公正な扱い
3カ国で取り組むべき事項
●非自動車工業製品の原産地規則の強化
●関税、輸出管理、投資審査における経済安全保障の連携強化
●米国生産がメキシコまたはカナダへ移転されることに対する罰則メカニズムの構築
●重要鉱物およびその派生製品の採掘、加工、リサイクル、再利用、製造を促進するインセンティブの創出
●強制労働製品の輸入禁止措置の実施状況の改善
見直しでの合意は難しく、3カ国間で何も決まらない可能性が最も高いです。この場合、1年ごとの見直しが続き、USMCAは不安定な状況に置かれることになります





