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第192回 加ドル、USMCAの見直しも重要なイベント

最近の加ドル、値幅は限定的

イラン戦争が始まって2カ月が過ぎようとしているが、中東紛争の不透明感は変わらず、金融相場全般が中東情勢に振り回される動きが続いています。原油高懸念が産油国通貨の加ドルの下支えとなる一方で、「有事のドル買い」が重しとなり、加ドルは他の主要通貨に比べると値動きが鈍いです。

 

29日のBOC会合、金利の据え置き決定か

来週の29日にカナダ中銀(BOC)の政策金利発表が予定されています。市場では政策金利を2.25%に据え置くことが見込まれています。カナダの3月CPIは前年比2.4%と市場予想には届かなかったが、前月の1.8%から伸びが上昇しました。カナダ中銀(BOC)が重視するコアインフレ指標のCPI中央値は前年比2.3%と前月から横ばい。マックレムBOC総裁は先週末に短期的なインフレ期待の高まりについては懸念しないと述べ、金利据え置きを年内に続けるかどうかについては言及しませんでした。景気減速・労働市場の悪化懸念による利下げ圧力がある一方で、中東情勢に伴うエネルギー価格の上昇がインフレ再燃リスクとなり、政策判断は難しい状況です。

 

USMCAの見直しも重要なイベント

カナダにとっても中東情勢と米関税政策の影響が大きいが、今年の7月1日に正式な見直しが本格化する米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)も重要なイベントであります。米政権が求めている原産地規則の修正やカナダの乳製品市場アクセス、中国製部品の利用制限などの課題で合意に達することは難しく、USMCAは不安定な状況に置かれる可能性があります。USMCAによる特恵関税を受けている企業にとって、USMCA見直しの結果は死活問題につながります。カナダの対米貿易主席交渉官は現状維持を望み、協定条項の大幅改定に意欲を示していません。USMCA見直しをめぐり、米・加の関係悪化が深まる可能性があります。

 

USMCAが2026年7月に見直しを迎えます。3カ国が最終的に延長に合意できなければ、USMCAは2036年に失効します。1994年に北米自由貿易協定(NAFTA)が発効して以降、北米3カ国の経済統合は30年以上におよぶ歴史があります。日本企業を含む多くの在米企業はUSMCAを前提にビジネスモデルを構築しているため、USMCAが失効すれば経済への影響は大きいです。

 

USMCAの発効を定めた米国の「USMCA実施法」は米国通商代表部(USTR)に対し、見直しの270日前までにUSMCAの運用に関するパブリックコメントの募集などを行い、180日前までに米国が見直しで提案する具体的な措置やUSMCAの延長に関する立場などについて、連邦議会へ報告するよう義務付けています。

 

USTRは同法に基づき2025年9月にパブリックコメントを募集する官報を公示し、12月3-5日に公聴会を実施したが、複数の業界団体が、USMCAは北米の競争力に不可欠だとして延長を支持し、通商政策の研究者らはUSMCAのこれまでの実績についておおむね肯定的な評価を示すとともに、輸出管理や投資審査など経済安全保障に関する内容を設けるべき、といった「更新」に向けた具体的な提言をしました。一方で、消費者団体は消費者を犠牲にしたビッグテック企業の大勝利、労働組合はメキシコでの労働者の搾取に対応できていないなどとUSMCAを批判し抜本的改革がなければ延長に賛成しないと主張しました。

 

トランプ政権は「欠陥が解決可能な場合にのみ延長」する方針です。

カナダの課題

●米国乳製品に対する不平等な市場アクセス

●オンライン配信法・オンラインニュース法が米国デジタルサービス提供者に与える影響

●米国のアルコール飲料流通に対する州レベルの禁止措置

●オンタリオ州、ケベック州、ブリティッシュコロンビア州における差別的調達措置

●米国輸出品をカナダで受領する者に対する複雑な税関登録手続き

●アルバータ州によるモンタナ州電力配給事業者への不公正な扱い

 

3カ国で取り組むべき事項

●非自動車工業製品の原産地規則の強化

●関税、輸出管理、投資審査における経済安全保障の連携強化

●米国生産がメキシコまたはカナダへ移転されることに対する罰則メカニズムの構築

●重要鉱物およびその派生製品の採掘、加工、リサイクル、再利用、製造を促進するインセンティブの創出

●強制労働製品の輸入禁止措置の実施状況の改善

 

見直しでの合意は難しく、3カ国間で何も決まらない可能性が最も高いです。この場合、1年ごとの見直しが続き、USMCAは不安定な状況に置かれることになります

この連載の一覧
第192回 加ドル、USMCAの見直しも重要なイベント
第191回 弱いのは日本、それとも円?
第190回 原油高・ユーロ安
第189回 ドル円は160円台回復、今後は?
第188回 イラン戦争、中国への影響
第187回 スイスフラン、なぜ強い
第186回 中東情勢に主要通貨の反応
第185回 経常収支の黒字は過去最大も、円安続く
第184回 中国・全人代、3月5日に開幕
第183回 ドル円、ドルの信認低下も重し
第182回 トランプ関税圧力と加ドル
第181回 円相場のカギは日本国債
第180回 2026年世界10大リスク-米調査会社
第179回 25年の中国貿易黒字、初の1兆ドル超え
第178回 金の台頭、ドルの支配に影響
第177回 人民元は堅調
第176回 FRB、来年の政策運営はなお不透明
第175回 円安、結局は再び介入との勝負か
第174回 円安、メリットとデメリット
第173回 実質為替レート 1ドル=270円
第172回 インフレと円安
第171回 予算案控え、慌ただしい英政府
第170回 トランプ氏、米中をG2と表現
第169回 ヘッジファンド資産、過去最高
第168回 通貨スワップ協定
第167回 カナダ経済は厳しい
第166回 自動売買のメリット・デメリット
第165回 FX活用の為替ヘッジ
第164回 利下げ再開、米経済は?
第163回 市場とFRB、来年以降の見通しにかい離
第162回 自民党総裁選と金融市場
第161回 英国の財政懸念
第160回 FRB理事の解任騒動
第159回 11人の次期FRB議長候補
第158回 「基調的な物価上昇率」
第157回 中国の政策金利
第156回 今年後半の米経済
第155回 日米合意、今後のドル円は?
第154回 トランプ氏、人民元の影響拡大の引き立て役になるか
第153回 香港ドル、キャリー取引が活発化
第152回 英国でもトリプル安
第151回 中東リスクに円買いではなくドル買い
第150回 悪いドル安
第149回 FX、マイルールを徹底
第148回 FX詐欺の手口
第147回 信認低下のドル、売り圧力が継続
第146回 半導体を制するものが世界を制する
第145回 米中会談、過度な期待は禁物
第144回 加ドル、米加首脳会談に注目
第143回 日米協議、円安是正に一安心も警戒残る
第142回 関税方針、トランプ氏の正念場
第141回 トランプ氏の脅かし、中国には通用しない
第140回 トランプ関税、ポンド相場への影響
第139回 RBA、追加利下げは5月か
第138回 英中銀、慎重な利下げペース維持
第137回 ドイツの大規模な財政拡大策
第136回 中国、今年GDP成長目標を5%前後に
第135回 米消費者信頼感指数、消費鈍化を示唆
第134回 リーダー不在のEU
第133回 各国中銀の利下げも、トランプ関税効果を薄めるか
第132回 円と加ドル、IMMポジションの変化
第131回 FX取引、投資詐欺に注意
第130回 FX、リスクも把握した上で取引を
第129回 トランプ氏VS中国
第128回 トランプトレードはいつまで続くか
第127回 ポジションの手仕舞い
第126回 今年最後の日米金融政策会合
第125回 中国景気、改善傾向もトランプリスク高まる
第124回 尹韓国大統領の戒厳令騒動
第123回 ポジションの管理
第122回 ドル円、160円台復帰はあるか
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
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【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
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【FX、やるならお得に】第19回 取引量第3位(円)
【FX、やるならお得に】第18回 取引量が第2位の通貨(ユーロ)
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【FX、やるならお得に】第16回 ファンダメンタルズ
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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