個人向け国債の金利がさらに上昇 変動10年は年1.80%に

7月募集の個人向け国債の利率が決定しました。「変動10年」の初回金利は1.80%、「固定5年」は1.95%、「固定3年」1.56%です。「金利ある世界」を実感する数字となり、個人向け国債「変動10年」の魅力が一段と高まっています。


個人向け国債とは


個人向け国債は国債の一種で、財務省が毎月発行しています。「国債は国の借金」といわれますが、政府が行なう事業の重要な資金源です。公共サービスなどの財源として、投資家が国に一定期間お金を貸す仕組みです。


期限が満了すると投資家に額面金額が償還されます。償還日までの間は年に2回の利子を受け取れるので、資産運用に利用されています。


個人向け国債は、通常の国債に比べて、個人投資家が利用しやすい設計です。販売窓口は銀行、証券会社などの金融機関。最低1万円から、1万円単位で購入できます。


個人向け国債の中途換金は、通常の国債と異なり、元本割れのリスクがありません。国が額面金額で買い取ります。ただし、発行後1年経過していなければ中途換金はできず、直前に受け取った2回分の手取利子が差し引かれるルールです。


この点をどう考えるか。「中途解約時はその前年の1年分の手取利子が差し引かれる」ということを短所と感じるか、「前年1年分の手取り利子さえ返上すれば、中途解約は可能」と長所ととらえるか、この見方の違いによって、投資するか否かを判断するとよいでしょう。


なお、災害救助法が適用される自然災害の被害者や死亡者は、発行後1年が経っていなくても中途換金が可能です。


個人向け国債は「固定3年」「固定5年」と「変動10年」の3種類


個人向け国債は、償還までの期限と金利タイプが異なる3種類があります。3年と5年は、発行時に決められた金利が償還まで続く固定金利。10年は、半年ごとの金利情勢によって利率が見直される変動金利です【表】。



個人向け国債の金利は、「基準金利」を基に、市場の実勢金利によって決まります。


「固定3年」は「基準金利」から0.03%を引いた利率、「固定5年」は0.05%を引いた利率です。「基準金利」は、3年・5年のそれぞれの利付国債市場の利回りを基にして、募集期間開始の2営業日前に定められます。


「変動10年」の利率は、利子計算期間が始まる約1か月前に決まります。基準金利に0.66を掛けた値が「適用利率」となり、その後は半年ごとに見直されます。


執筆時点で募集中の2026年8月債(募集期間:2026年7月6日~31日)は、「変動10年」2026年8月17日から2027年2月15日までが初回の利子計算期間で、2027年2月15日に利子を受け取れます。


年利率1.8%となった「変動10年」


変動金利は、「将来受け取れる金利が不確実」と考えるとデメリットですが、金利上昇のタイミングでは、受け取るたびに利子が増えるため、変動すること自体がメリットといえます。


じつは、2011年6月までに発行された「変動10年」は利率の計算が現在とは異なります。計算方法が変更され、現在の適用利率が「(基準金利)×0.66」になって以後の「個人向け国債 変動10年」の基準金利と適用利率が【グラフ1】です。


個人向け国債は毎月発行されていますので、発行されるたびに、初回の適用利率も毎月発表されています。【グラフ1】を見ると、2024年以降は市場金利の上昇に伴い、「変動10年」の適用利率も右肩上がりで推移していることが分かります。



金利が上がれば利子が増える「変動10年」


では実際に、これまでの金利上昇局面では、どの程度の利子が受け取れたのでしょうか。過去の「変動10年」で計算してみましょう。


2027年2月15日に償還を迎える個人向け国債「変動10年(第82回債)」で確認してみましょう。【グラフ2】の棒グラフは、10年間における半年ごとの税引後の受取利子です。赤い折れ線グラフがこの個人向け国債「変動10年」の適用利率で、青い折れ線グラフは基準金利です。



2024年3月に日本銀行の金融政策が転換して以後、市場金利が上昇し、半年ごとに適用利率が上がっています。


これに伴い利払金額も半年ごとに増加。100万円の額面に対して、2022年2月利払分までは半年ごとに税引後約200円だった利子が、2026年2月には3,824円が受け取れました。その半年後の2026年8月には5,538円になり、最後の利子となる2027年2月には7,171円を受け取れると決まっています。10年間の利子合計は、税引後約3万円となります。


低金利でも個人向け国債の利子は相対的に有利


しかし、ここまでの説明では、「金利上昇局面だから良いかもしれないが、金利が低下すると適用利率も下がるだろう」と感じることでしょう。


ただし、個人向け国債には一つ大きな特徴があります。個人向け国債は3種類とも、利率の下限が年0.05%と決められています。じつは、これは低金利時に大きなメリットになります。


長く続いた国内のマイナス金利の下でも、個人向け国債の適用利率は年0.05%でした。他の金融商品より相対的に高い利回りが得られたのです。


 【グラフ2】の2017年8月から2022年2月までの基準金利はマイナスでしたが、下限利率0.05%が適用されています。


資産形成の手段として、新NISA(少額投資非課税制度)に関心が寄せられていますが、NISAを利用するには、上場株式や株式投資信託を購入しなければなりません。資金の使い途や、ご本人の性格などから、これら以外の金融資産の方が適している場合もあるでしょう。


そのようなニーズに対しては、「個人向け国債 変動10年」が適しているといえます。


今後も「変動10年」の適用利率は、日銀の金融政策など金利動向の影響を受けます。さらなる利上げがあるかどうかは、国内の物価や景気、為替相場などにもよりますが、株式や投資信託による運用に抵抗がある人や、当面使う予定はないものの元本割れは避けたい資金の運用先として、「個人向け国債 変動10年」は有力な選択肢の一つといえるでしょう。


【関連サイト】個人向け国債(財務省)



ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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