知っておきたいIPOのキホン~承認から上場まで~

IPO(新規公開)は、新しく証券取引所に上場する会社が、株式(新規公開株式)を投資家に販売することをいいます。今回はIPOのキホンとして、承認から上場までの流れについてみていきます。



上場承認

上場したい会社は証券取引所に申請を行います。一定の基準により審査が行われ、それをクリアすれば上場が承認されます。

証券取引所が上場を承認するとウェブサイトなどで告知します。証券取引所の新規上場会社に関するページをみにいけば、上場承認された会社の情報をみることができます。


東京証券取引所は、15時30分ごろに当日に上場を承認した会社の概要を「新規上場会社情報」に掲載します。会社概要には会社の基本情報や公開株数のほか、上場までの日程などが記載されています。


以下はある会社の上場日程です。今回は日程で特に重要と考える「仮条件決定日」、「ブックビルディング期間」、「公開価格決定日」、「受渡期日」をみていきます。




仮条件決定日

仮条件決定日とは、仮条件が決定される日です。仮条件は、ブックビルディングの際に提示される一定の値幅であり、機関投資家などのヒアリング結果により決定されます。一定のレンジ(2700円以上3000円以下など)で設定されることがほとんどですが、2018年11月のソフトバンク(9434)の上場においては仮条件が1500円で設定されました。



ブックビルディング期間

ブックビルディング期間は、投資家の需要申告が行われる期間です。投資家は仮条件の範囲内で価格、そして株数を申告します。IPO株を購入するためにはこのブックビルディングに参加することが必要になります。



公開価格決定日

ブックビルディング期間が終了すると、ブックビルディングの結果をもとに公開価格が決定されます。公開価格は、東京証券取引所の上場会社であれば「新規上場会社情報」で確認することができます。


公開価格は「新規上場会社情報」で確認できますが、いくらに決まったという価格の情報だけです。追加でぜひ確認してほしいのが、公開価格の記載された「訂正有価証券届出書(新規公開時)」です。この書類は「EDINETの書類検索」において、書類提出者に上場予定会社名、書類種別でその他の書類種別をチェックして検索すれば出てきます。



訂正有価証券届出書(新規公開時)でみるべき箇所は、【募集の条件】の(2) 【ブックビルディング方式】です。ここにブックビルディングの状況が記載されています。


以下は、2018年6月19日に上場したメルカリ(4385)の訂正有価証券届出書(新規公開時)のブックビルディングの結果に関する記載です。


※メルカリ、訂正有価証券届出書(新規公開時)より抜粋



このように公開価格決定後の訂正有価証券届出書(新規公開時)をみることで、需要申告の状況を確認することができます。メルカリの場合は多くの人が仮条件上限の価格で需要を申告し、さらにメルカリの株を欲しい人が多かったのでしょう、総需要株式数が公開株式数を十分に上回っています。


余談ですが、以下は公開価格が仮条件の上限で決定しなかった会社の訂正有価証券届出書(新規公開時)です。ここでは会社名は伏せておきます。



メルカリにあった③の記載がないですね。つまり、価格については仮条件の上限という需要は少なかったのでしょう。なお、この会社の公開価格は仮条件の下限で決定していました。



受渡期日

受渡期日は通常はお金と株式などの決済が行われる日ですが、IPOの場合は上場日と言い換えることもできます。この日から証券取引所において上場した会社の株式の売買が行われることになります。そして、最初に売買が成立したときの価格を初値といいます。



最後に

今回はIPOの承認→仮条件決定→ブックビルディング→公開価格決定→上場という流れを簡単にみてみました。まずはこの流れを覚えてください。仮条件のレンジ設定、そして公開価格がそのレンジのどこで決まるかは、初値形成に大きな影響を与えます。次回以降はもう少し詳しく、IPOについてみていこうと思います。

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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