ロックアップ解除で株価大幅安 エニカラーに注目?

わずか2日で3割近い下落


Vtuberグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLORの株価が、12月に入って急落しています。同社はグロース市場に上場する企業のなかでもトップクラスの規模を誇る企業。2022年12月6日時点の時価総額では、ビジョナル(約3800億円)に次ぐ、第2位(約2300億円)となっています。


その新興企業の雄ともいえる同社の株価が12月5日に1日で2割近くも下落したことが株式市場で大きな話題となりました。翌営業日の6日も1割超下落し、2日間で10520円から7700円まで27%安と、この規模の会社ではめったに見かけない下げ幅と言えます。


ANYCOLORの日足チャート DZHフィナンシャルリサーチ作成


きっかけは12月5日に同社の株がロックアップ解除を迎えたことです。ロックアップとは、例えば、新規に上場する企業の株式について、その会社の大株主やベンチャーキャピタルと、上場後に一定期間は市場で持株を売却しないよう契約する制度のことを指します。


これは大量の株式が一度に市場に流出することで、買いたい人よりも売りたい人が多すぎて需給が悪化し、株価が値崩れを起こしてしまうことを防ぐ目的があります。この制度があることで需給への影響が限定され、一般投資家も一定のリスクから保護されます。


ロックアップが解除されたことで、これまでANYCOLORの株式を大量に保有し、かつ売却することができなかった大株主は制限がなくなり、自由に同社の株を売却できるようになるわけです。


通常、ロックアップは上場から90日、あるいは180日程度で解除されることが一般的です。同社のロックアップも2022年6月8日の上場から180日経過した12月5日に解除されました。しかし、上場する企業というのはたくさんあり、それだけロックアップが解除される株も同様にたくさんあるわけですが、ANYCOLORほど下落する銘柄は稀です。だからこそ株式市場でも注目されたのですが、いったいなぜANYCOLORは、ロックアップが解除されたとたん、これほどまでに売り込まれたのでしょうか。


立会外トレードがきっかけに


要因の一つとして考えられるのが立会外トレードの実施です。12月2日金曜日の大引け後に証券会社からANYCOLOR株の立会外トレードの実施について通知がありました。立会外トレードとは、普段わたしたちが市場を通して株を売買するようなかたちではなく、取引時間外に大株主などの売り注文を証券会社が引き受け、それを個人など多くの投資家に幅広く分売する方法です。


立会外分売のように企業側からのIRなどでは開示されませんが、内容としては似た点も多いようです。この立会外トレードが、ロックアップが解除される5日に行われるとわかったことで、大株主がまとまった量の株を売却しようとしていることが市場に伝わり、さらなる売りが出てくる前に処分を急ごうとするほかの投資家の売りが集中したことが大幅下落につながったと見ています。


大株主一覧


同社の大株主一覧を見てみると、田角陸代表取締役CEOが発行済み株式の約43%・1400万株を保有する筆頭株主で、それ以外は資本業務提携しているソニーが5%・67万株、特別利害関係者である本田謙氏が150万株・4.6%、同社釣井慎也取締役CFOが97.5万株・3%を保有しています。これ以外はほぼVCの保有分となり、大口から小口まで合計すると1000万株規模となります。そのほか、ストックオプションなどもありますが、ここでは計算を簡単にするため割愛します。


VCの保有分が1000万株超。このうち立会外トレード分は100万株でしたから、まだまだこれらの株主が新たに売りを出した場合はさらに下げる余地がある、と考える投資家が多ければ、今よりさらに株価水準を切り下げる展開もあり得るかもしれません。


一方で、同社は12月15日に決算発表を予定しています。市場の期待は高く、かりに好決算を発表したとしてもすでに織り込み済みとなるかもしれませんが、高い期待をさらに上回る業績の伸びを示すことができれば、ふたたび大幅上昇となる可能性もあります。しばらくANYCOLORの動向から目が離せない状況が続きそうですね。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

斎藤 裕昭の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております