日々のニュースをチェックしよう(1) 経済動向を確認する

ニュース1つで大きく変動する株価


株式市場では、毎日いろんな企業の株が売買され、その時ごとに株価は高くなったり安くなったりします。株価=企業の価値だとすれば、そんなに頻繁に値段が上下することはないように思いますが、実際にはほんの数日で10%や20%も価格が変動することもあります。


このように価格が変動するのは、日々、世界で起きている出来事が今後の企業業績に影響を与えると市場に受け止められるからです。たった1つの出来事により、株価が大きく上下することがあるため、日々のニュースをチェックすることが株式投資では大切です。


とても大きな影響があった例では、リーマン・ショックなどが挙げられます。株式にあまり詳しくない方でも、聞き覚えがあるのではないでしょうか。サブプライムローン問題に端を発し、当時米国でも有数の投資銀行であったリーマンブラザーズが破綻、世界的な金融危機となった出来事で、震源地の米国だけでなく日本を含む世界各国で株価が大幅に下落しました。


反対にニュースで株価が上がる例もあります。2022年のニュースを例に2つご紹介しましょう。1つ目はINPEXです。以前は国際石油開発帝石という社名でした。原油・ガス開発生産の国内最大手企業です。


INPEXの週足チャート




同社の株価は、その事業の内容から原油価格に大きく左右されます。原油の価格が上がれば株価も上がりやすくなりますし、逆に原油が下がられば、株価も下がる傾向があります。コロナショックのあった2020年3月は500円を割り込む場面もありましたが、原油需要の回復が見込まれるにつれ徐々に株価を戻し、2022年初には1000円前後まで回復していました。そして、2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻がはじまりました。


基本的には同事件は株式市場全体にはマイナスに作用しました。企業の経済活動への影響が懸念され、欧州やロシア、ウクライナで事業を行う企業の株は大きく売り込まれました。しかし、反対にこれをきっかけに大きく株価が上昇したのがINPEXです。


世界各国からロシアへの非難が強まり、経済制裁の一環として、ロシアからは原油や天然ガスの一部を買わないという動きが広まったことで、需給がひっ迫し、原油価格が高騰。そのため同社は多くの銘柄が売られるのとは反対に株価はグングン上昇し、6月には今年一番の高値となる1831円を付けました。原油価格は直近の2022年7月こそ、やや落ち着いており、同社株価もピークからは下落していますが、世界情勢が企業の株価に大きな影響を及ぼすことがお分かりいただけると思います。



電力不足で株価が上昇


続いては東京電力ホールディングスです。6月には猛暑による電力不足を指摘するニュースが毎日のように流れました。そのため、電力不足を補うために原子力発電所の再稼働に対する是非についても、様々なメディアで論じられ、話題になったことは記憶にあたらしいところです。となると、猛暑の電力不足で東京電力の株が買われたのか、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、実はそれだと半分正解で半分は間違いです。



東京電力ホールディングスの週足チャート



実際には同社の株は今年の冬からすでに買われ始めていました。夏場冬場は冷暖房の需要から電力需給がタイトになりますが、今年の3月には福島県沖地震が発生し、東北、東京電力エリアの火力発電所の一部が停止したことで、政府による初の「需給ひっ迫警報」が出されました。寒波の影響により、季節外れの積雪となるなど暖房需要が増加していたところに、発電所の停止が重なったことが要因ですが、このとき、このままでは電力が足らなくなる、原子力発電所の再稼働すべきとの気運が高まりました。そして岸田首相も稼働が可能な原発については動かしていきたいと、再稼働に前向きな発言をしたことで、東京電力HDの株価買われる流れが加速したのです。株価は2022年初に200円台で推移していましたが、一連の流れを受けて500円前後まで上昇。加えて、前述の猛暑もあり、直近では664円まで上昇しました。


このように世界の事件はもちろん、私たちに身近な天気など、さまざまな出来事が株価に影響を与えます。ぜひ、毎日のニュースなどをチェックして投資につながるヒントを探してみてください。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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