サプライズは忘れたころに

3月22日に2023ワールドベースボールクラシック(WBC)の決勝戦が行われました。ご存じの通り、日本代表が米国代表に3対2で勝利するという快挙です。3大会ぶり、3度目の優勝ということで、しばらくは熱気が冷めなさそうですね。


株式市場においては、WBCが始まる前から商いが増えている銘柄がありました。日本代表の公式ユニフォームを提供しているミズノ(8022)がその一つですね。昨年12月のワールドカップ開催時に買われた英国風パブ運営のハブ(3030)も、引き続き関連銘柄として注目されました。中には選手と同じ名前というだけで暴騰した銘柄もあり、こちらについては何でもありのお祭り騒ぎです。



ミズノ(日足)

 


ハブ(日足)

 



いったん熱は冷めるが・・・


イベント事で大きく上昇した際、閉幕とともに株価も売られてしまうケースがほとんどです。今回のWBCでは、期待感から株価が先走ってしまったこともあり、開催中からすでに下落してしまいました。急上昇中に、このビッグウェーブに乗る!と意気込んだものの、すぐに手じまいとなってしまうこともしばしば。早いうちに予想を立てて動意づく前に買うのがベストですが、これはこれで難しいところです。大きく動いてしまった後は、見て楽しむ程度に収めておくのがよさそうです。


ただ、イベントが盛り上がるほど、関連企業の業績もよくなるはずですよね。ミズノは3月末決算なので、今回のWBC関連の売り上げは2023年3月期第4四半期(1-3月)に計上されるでしょう。本稿執筆日の時点(23年3月22日)ではミズノの2023年3月期通期の営業利益予想は125億円ですが、第3四半期(10-12月)時点で営業利益は102億円です。野球関連のグッズが飛ぶように売れているのであれば、業績も上振れることが考えられますよね。ただ、中には「今は良くても、その後の反動があるんじゃないの?」と思う人がいるかもしれません。


もちろんその可能性も十分にありますが、もし業績が大きく上振れたらどのような期待が持てそうでしょうか?例えば、余剰金を活用するために、配当金の引き上げや自社株買いといった株主還元を強化することが考えられますよね。また、増資に頼らず成長投資への資金を確保することにもつながります。


<2020東京オリンピック・パラリンピックでのケース>


共栄セキュリティーサービス(7058) 週足


上記のチャートは、警備会社である共栄セキュリティーサービスにおける東京オリンピック・パラリンピック前後のものです。


流れを追ってみると


・五輪開催前は警備需要の期待から上昇

・いざ始まると材料出尽くしで売り

・22年3月期の1Q決算好調で再浮上

・2Qで上方修正し急騰急落

・好材料出尽くしと思いきや3Qで期末配当予想を80円→150円にして大幅高


このような動きとなりました。「実績が良かった」だけでは物足りない感じもありますが、上方修正や大幅な増配が発表されると、内容によってはポジティブサプライズです。もちろんすべての銘柄に当てはまるわけではありませんが、一旦ブームが過ぎ去った後であっても、チャンスがあるということが分かります。


今回のWBC特需を受けた企業についても現状は急騰・急落となっていますが、実際にどれだけの利益になったかは決算を見ないと分かりません。もしかしたら今後にサプライズがあるかもしれないので、しばらく株価の推移を追ってみてもよさそうですね。


日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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