今回は、2023年3月28日に東京証券取引所グロース市場に上場したArent(5254)の上場から直近までの動きを見ていきたいと思います。
事業内容を確認
Arentは、建設業界の大手企業などに対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)支援のためのコンサルティングとシステム開発(主に準委任契約)を行っています。
また、開発による成果を商品化し、外販しています。具体的には千代田化工建設(6366)と折半出資したジョイントベンチャーであるPlantStreamが主にプラントエンジニアリング業界に対し、プラント設計の配管作業を自動化するソフトウエア「PlantStream」をライセンス販売しています。
難解な損益計算書
同社の分析をややこしくているのが、ジョイントベンチャーであるPlantStreamです。この会社はArentの持ち分法適用関連会社であり、ArentとPlantStreamの取引が未実現損益として消去されます。
またPlantStreamは赤字であり、Arentの連結損益計算書では営業外費用に持分法による投資損失が計上されます。
そのため以下のように単体のほうが売り上げ、利益ともに大きいという結果になっています。
仮条件の下振れと売り出しとオーバーアロットメントの株数削減
想定価格は1750円でしたが、仮条件は1140~1440円と大幅に下振れました。さらに、売り出しとオーバーアロットメントの株数を削減しました。
公開価格は仮条件の上限である1440円で決定したものの、大幅に下振れした仮条件と株数削減により、市場の上値期待は低いと考えられていました。
初値とその後の動き
初値は1802円となり、公開価格1440円を25%上回りました。ただ、次第に手じまい売りに押され、公開価格に接近して安値圏(上場初日終値1483円)で取引を終えました。
しかし翌日から株価は大きく上昇。上場2日目から4日目までの3日間で1200円上昇しました。その後いったん売りに押されましたが、再度上昇し株価は3000円の大台に乗せています。
上場後の株価上昇要因
Arentの価値は、PlantStreamの価値をどのように処理するかで大きく異なります。
PlantStreamは赤字ではありますが、開発したソフトウエアはプラント設計における配管を自動化するもので、従来の手作業では2年かかる1000本の配管設計をわずか22秒で仕上げるといったものです。大幅な効率化を実現できると考えられますので、今後の販売拡大が期待されます。
つまり、PlantStreamの評価が「連結業績の足を引っ張る赤字の会社」から、「赤字ではあるものの今後の高成長が期待できる会社」に変わった可能性があります。
もちろんPlantStreamが今後想定通りに成長する保証はありません。しかし、投資家は期待に投資するものです。上場来安値1453円からはすでに2倍の水準となっています。今後、PlantStreamが急成長し、株価をさらに押し上げることになるか、それとも期待外れとなるか、ぜひ皆さんもArentの今後に注目してみてください。