NYマーケットダイジェスト・12日 株失速・金利低下・原油高・ドル安

(12日終値)

ドル・円相場:1ドル=133.13円(前営業日比▲0.55円)

ユーロ・円相場:1ユーロ=146.34円(△0.45円)

ユーロ・ドル相場:1ユーロ=1.0992ドル(△0.0080ドル)

ダウ工業株30種平均:33646.50ドル(▲38.29ドル)

ナスダック総合株価指数:11929.34(▲102.54)

10年物米国債利回り:3.39%(▲0.04%)

WTI原油先物5月限:1バレル=83.26ドル(△1.73ドル)

金先物6月限:1トロイオンス=2024.9ドル(△5.90ドル)

 

※△はプラス、▲はマイナスを表す。

 

(主な米経済指標)       <発表値>   <前回発表値>

MBA住宅ローン申請指数(前週比) 5.3%      ▲4.1%

3月米消費者物価指数(CPI)

前月比              0.1%       0.4%

前年比              5.0%       6.0%

エネルギーと食品を除くコア指数

前月比              0.4%       0.5%

前年比              5.6%       5.5%

3月米財政収支        3781億ドルの赤字  2624億ドルの赤字

 

※改は改定値、▲はマイナスを表す。

 

(各市場の動き)

・ユーロドルは続伸。3月米消費者物価指数(CPI)が前月比0.1%/前年比5.0%と予想の前月比0.2%/前年比5.2%を下回ったことが伝わると、米連邦準備理事会(FRB)が早期に利上げを停止するとの見方が広がり全般ドル売りが先行。欧州中央銀行(ECB)高官の発言を受けて、欧利上げ長期化観測が高まったことも相場の支援材料となり、一時1.1000ドルと2月2日以来の高値を更新した。

 デギンドスECB副総裁はイベントで「基調インフレは予想以上に堅調」と述べ、インフレ率を目標の2%へと押し下げるECBの決意を改めて示したほか、ホルツマン・オーストリア中銀総裁はインタビューで「高止まりしているインフレが5月の理事会での0.50%利上げを正当化する」などと語った。

 

・ドル円は5日ぶりに反落。3月米CPI総合が予想を下回ったことをきっかけに円買い・ドル売りが先行。前日の安値132.97円を下抜けて一時132.74円まで値を下げた。

 ただ、エネルギーと食品を除くコア指数が市場予想通りの結果となったことから、一本調子で下落する展開にはならなかった。米10年債利回りが上昇に転じると買い戻しが優勢となり、133.40円付近まで下値を切り上げた。もっとも、米10年債利回りが再び低下するとドル円の上値も重くなっている。

 FRBがこの日公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(3月21-22日分)では「米銀の経営破綻で広範な金融ストレスが引き起こされないと明確になるまで利上げを一時停止することが検討されたものの、最終的にはインフレ対応を優先すると結論付けた」ことが明らかになった。また、「多くの当局者がピーク金利の見通しを引き下げた」「スタッフは今年中に穏やかなリセッションを予測」などと伝わった。

 

・ユーロ円は5日続伸。米CPIの下振れでドル円が下落するとユーロ円にも売りが波及し一時145.79円付近まで下押ししたものの、アジア時間に付けた日通し安値145.77円が目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。ECB高官らのタカ派的な発言を受けてユーロ買いが強まると、一時146.67円と昨年12月15日以来約4カ月ぶりの高値を更新した。

 

・米ドルカナダドルは軟調だった。米CPIの下振れをきっかけに米ドル売り・カナダドル買いが進行。WTI原油先物価格が約5カ月ぶりの高値を付けると産油国通貨とされるカナダドルの買いを後押しして、一時1.3428カナダドルまで値を下げた。

 なお、カナダ銀行(BOC)はこの日、市場予想通り政策金利を現行の4.50%で据え置くことを決めたと発表。声明では「CPIは今年半ばに3%程度に急速に減速し、その後は徐々に低下して2024年末までに目標の2%に達すると予想する」と指摘した。同時に「必要があれば利上げを実施する用意がある」と表明した。

 

・米国株式市場でダウ工業株30種平均は5日ぶりに反落。3月米CPIが予想を下回ったことで米利上げが長引くとの警戒感が和らぐと、買いが先行した。ただ、米主要企業の決算発表シーズンを控えて、積極的に上値を試す展開にはならなかった。FOMC議事要旨公表直後には210ドル超上げたものの、すぐに失速し下げに転じた。

 ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は3日続落した。

 

・米国債券相場で長期ゾーンは4日ぶりに反発。3月米CPIの下振れを受けてFRBが早期に利上げを停止するとの見方が広がると、債券買いが優勢となった。なお、市場では「5月2-3日のFOMCでは引き続き0.25%の利上げが見込まれるものの、6月には利上げが停止される可能性が高まった」との声が聞かれた。

 

・原油先物相場は続伸。米CPIの結果を受けてドル安・ユーロ高となり、ドル建ての原油に割安感が生じ、原油は買いが優勢となった。FRBが早期に利上げを停止するとも見方が強まり、景気鈍化への懸念が緩んだことも買いを後押した。

 米エネルギー省(EIA)週間石油在庫で原油在庫が予想に反して59.7万バレルの積み増しとなり、売りが入る場面もあったが反応は限定的。

 

・金先物相場は続伸。米CPIがインフレの鈍化傾向を示唆する内容となり、FRBが早期に利上げ停止に動くとの見方が強まり、金利を生まない金に買いが入った。為替市場でドル安が進み、ドル建ての金は割安感を意識した買いも入った。

 

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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