価値創造に着目した新指数
東京証券取引所は5月26日、「JPXプライム150指数」の構成銘柄および算出要領について公表しました。同指数については3月3日に価値創造に着目した新指数として開発を進めている旨が明らかにされていました。
東証では昨今、市場再編に伴って中長期的な企業価値向上に向けた取り組みの動機付けについても企業側に積極的に働きかけています。いわゆるPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業への改善要請です。
この新指数も、同じくPBRなどに着目したものとなっています。具体的には、選定基準として(1)ROE(株主資本利益率)と株主資本コスト(投資者の期待リターン)の差である「エクイティスプレッド」と、(2)株価による市場評価である「PBR」という価値創造を測る2つの指標が用いられています。
JPXプライム150指数150指数というからには、構成銘柄も150銘柄となりますが、これはプライム市場に上場する時価総額上位500銘柄のうち、前述した(1)、(2)のそれぞれ上位75社を選定。浮動株時価総額加重型で指数を算出します。
年に1回、毎年8月に銘柄入替(定期入替基準日は6月最終営業日)が実施される予定で、2023年8月は定期入替を行わないため、初回の定期入替は2024年8月となっています。
少し難しい言い回しになってしまったかもしれませんが、誤解を恐れずに簡単に言うと、日本を代表する「効率的に収益を生み出している企業」で構成した指数、と言えるかもしれません。
ちなみに採用された全150銘柄については東証のホームページ(https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/cg27su0000007ruk-att/20230526-02.pdf)に掲載されていますので、チェックしてみてください。
採用された銘柄はTOPIX採用の大型株が中心になっていますが、時価総額で日本企業最大(2023年5月31日時点)であるトヨタ自動車<7203.T>は採用されていません。また、メガバンクでTOPIX時価総額上位の三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>や三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>も採用されていません。3社ともにPBRが1倍を下回っていることなどもあり、採用には至りませんでした。
逆に2022年10月の上場から、わずか半年あまりのソシオネクスト<6526.T>が採用されたりもしています。選定基準の関係もあり、どちらかといえばバリューではなくグロース寄りの銘柄群となっている印象です。また、TOPIXと比べ電気機器や医薬品のウエイトが高く、輸送用機器や銀行のウエイトが低くなっています。これは前述したようにトヨタ自動車やメガバンクが採用されておらず、ソニーグループ<6758.T>や武田薬品工業<4502.T>などのウエイトが高くなっていることが影響しているものと思われます。
指数は日経平均しか見てないから、新しい指数ができても関係ないと、と思われる方もいるでしょうが、例えば指数に連動するEFTなどができれば、パッシブファンドなど買いが期待できるようになるかもしれません。
一般的には、2023年時点で日経平均指数をベンチマークとするパッシブ連動資金はおよそ20兆円、同じくTOPIXをベンチマークとするパッシブ連動資金はおよそ80兆円あると言われています。「JPXプライム150指数」について、これほどの大規模なものがのぞめるというわけではありませんが、同指数が盛り上がり、注目が集まるほどそうした資金の流入につながるため、ぜひとも盛り上がってほしいですね。