ダウ理論は海外発の最も古いテクニカル手法のひとつ
米国のチャールズ・ダウ(1851-1902)は、複数の代表的銘柄からなる「平均株価」という概念で株式市場全体のトレンドを表そうとした最初の人物です。日経平均をはじめとするさまざまな株価指数は、ダウが考案した指数に端を発します。また、今日あるテクニカル分析手法は、ダウ理論を基礎として考案され、発展してきたものが多いといわれています。
ダウ理論は、海外で考案されたテクニカル分析手法の中では、ポイント・アンド・フィギュアと並んで最も古いもののひとつです。基本法則としては、「平均はすべてを織り込む」「トレンドは3種類」「主要トレンドは3段階」「平均は相互に確認」「トレンドは出来高でも確認」「トレンドは転換が明白となるまで継続」「終値とライン」があります。
今回は第三弾目として、その中から、「平均は相互に確認」「トレンドは出来高でも確認」の内容をかんたんに解説します。
平均は相互に確認
ここでいう平均とは、工業株平均(現在のダウ平均)と鉄道株平均(現在のダウ輸送株平均)のことです。景気が好転すると、企業業績が改善し、工業株平均も上昇し始めます。企業の生産活動が活発になれば、原材料の仕入れや製品出荷が増えるからです。当時の物流は鉄道が主だったので鉄道輸送が活発になり、鉄道株平均も上昇するとする理屈です。
いわゆる連動性が高いということです。工業株平均が過去の高値を更新するのであれば、鉄道株平均も過去の高値を更新するはず。工業株平均が過去の安値を更新するのであれば、鉄道株平均も過去の安値を更新するはずであるという考え方です。
これは鉄道株平均からみても同じ。景気の好転を背景として鉄道株平均が高値を更新するのであれば、工業株平均も高値を更新しなければおかしい。逆に、景気の悪化を背景として鉄道株平均が安値を更新するのであれば、工業株平均も安値を更新しなければおかしい。
工業株平均と鉄道株平均が連動しているときは、現状のトレンドに対する信頼度は高いですが、連動していないときはトレンドに対する信頼度は低く、ダマシの可能性も高いといわれています。
投資家の景気見通しをうつす指数のため、現在の相場のトレンドの転換点でも注目されることが多いといえます。直近3年間でダウ平均が高値や安値をつけたタイミングをみると、ダウ輸送株平均が先んじて動いていたことがわかります。
例えば、ダウ平均が最高値をつけたのは2022年1月でしたが、ダウ輸送株平均は2021年11月にピークをつけていました。短期的な視点でも、2022年のダウ平均の最安値は9月30日でしたが、ダウ輸送株平均は9月26日に安値をつけていました。
これは他の組み合わせにも応用が可能です。日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)、個別銘柄と関連性の深い業種別指数などの組み合わせが考えられます。
トレンドは出来高でも確認
ダウは、株価がメジャートレンドと同じ方向に動くときは、出来高は増加する傾向があると考えました。メジャートレンドが上昇トレンドの場合は、株価が上昇するときに出来高は増加し、株価が反落ときには減少するということです。メジャートレンドが下降トレンドの場合は、株価が下落するときに出来高が増加し、株価がリバウンドするときに減少すると考えました。
しかし、これには反対意見もあるようです。出来高は取引が成立した数量であり、売り注文と買い注文が合致しなければ取引は成立しません。メジャートレンドが下降トレンドの場合、株価が下落する過程で積極的に買う投資家がいるのだろうか。また、下降トレンドの途中で買い方には評価損が発生し、次第に買い物が減少することで、取引が成立する数量も減少するのではないかという疑問もあげられます。
海外には「落ちるナイフはつかむな」という相場格言があります。これは、価格が下げている途中では安易に買うな、価格が下落して下げ止まったのを確認してから買えという意味です。この格言に従えば、下降トレンドでは買いが手控えられるので出来高が減少する可能性が高いともいえるでしょう。
【参考】NPO法人日本テクニカルアナリスト協会テキスト