2023年10月、三重県多気町の商業リゾート施設で自動運転のレベル4に対応した実証実験が始まります。9月10日付の朝日新聞が報じました。
自動運転は市場化の段階を迎え、今後はこのような具体的な事例も増えていくでしょう。次の圧倒的なテクノロジーとして、2023年後半に世の中を席巻するのは、いよいよ自動運転である可能性が高まっています。かつ自動運転は、いま日本社会が頭を悩ませる問題を解決する糸口になるといわれています。
自動運転は全5段階
自動運転には0から5の5段階があります。その前段階にドライバー運転の2段階があるため、全部で7段階があります。表にまとめてみましょう。
出典:各種資料から筆者作成
2023年現在はレベル2です。システムが制御?といってもピンと来ませんが、追い越し車線に寄ったり前の車に異常に近づいたりすると「ピピッ!」と音が鳴って車が止まります。この機能により事故を回避した記憶のある方も多いでしょう。最近はほとんどの車両に標準搭載されているような浸透を感じます。
また研究段階を終え、実際の道路で試行され初めているのが記事のようなレベル3です。トピックのレベル4は限定条件下ではあるものの、ドライバーの介在が必要なく自律的な自動運転を可能としているところが異なります。
自動運転は大手自動車メーカーのみならずベンチャー企業が凌ぎを削っているほか、製造業の日立など自動車メーカーに対してサービスを提供する会社が力を入れています。日立は自動車用製品を扱う部門を日立Astemo社として分離させ、外部への商品提供ハードルを下げた印象が強いです。同社が牽引した2022年の日立グループは株価が上昇し、元気の無い日本国内の製造業において1人勝ちの様相を見せています。
自動運転が救う大きな社会問題とは
そのうえでレベル5に至った折に、社会が大きく変わることは間違いありません。自動車は人が運転するものから原則システムが運転するものに変わるため、運転席の無い自動車も増えるでしょう。
現在の運転免許は18歳以上が取得できますが、この仕組みも運転技術の拙さを危惧するものであり、特に未成年の運転を禁止する理由が無くなります。同時に自動運転は、日本が直面している大きな社会問題を解決する糸口になります。理論上は、飲酒をしながらの運転も不可能では無くなるでしょう(リスクが完全に無くなってからの解禁は大前提として)。
自動運転は高齢者による運転を不要にする
それは高齢者による運転事故です。年齢により判断力の低下した高齢者の運転する自動車が対人事故を起こしたり、建物に追突したりという事故が後を絶ちません。特に地方において自動車は社会インフラであるため、高齢者になったら自動車を運転するな、運転免許を返納しろと迫っても、代替案を提示できない限り根本的な解決は難しいものです。
自動運転は社会インフラの提供を継続しながら、高齢者のドライバーが運転せずにも済む状況を作ることができます。買い物や通院中の事故リスクを減らすことで、世の中のリスクもまた大きく減らすことができます。また運転席を無くすことで横になった状態で乗車できる車や、ワゴン車のように高低のある車両では車イスのまま乗車できるものも開発されていくことでしょう。自動運転が、自動車のユニバーサルデザインを後押しする流れになります。
また運送業者の残業管理により、物流に対策が求められる2024年問題も喫緊に迫っています。タクシーの運転手不足も自動運転が解決に向けての選択肢の1つになることは間違いありません。
まずは特区による導入か
とはいえサービスが導入レベルのものになったとしても、ある日を境に突然世の中を自動運転に切り替えることは不可能です。ヒューマンエラーも含めて事故が発生する可能性もゼロではありません。
そこである程度監視できる状況下で街を自動運転に変えるという取り組みが想定されます。記事で紹介した車両レベルでの実証実験を、自治体単位で実施しようとする試みです。現在の仕組みでいう経済特区の印象でしょうか。その段階を経て監視の前提を外し、街全体へ、社会全体へと拡大していくと考えられます。
印象論ですがアメリカなど諸外国に比べ、日本は公共交通機関が充実し、自動車の負担率はさほど高くないようなイメージがあります。それでも自動運転が導入されれば運転の負担はもちろん、多くの社会問題が解決する糸口になるでしょう。