表面利率の上昇にともない個人向け国債は今が買いどき?メリット・デメリットを解説

「国債に興味はあるけれど実際購入するのはどうなのか?」と疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。日銀がイールドカーブ・コントロール(YCC)を修正後、国債の金利が上昇したため、新たに投資先として興味を持つ人が増えています。


本記事では、購入のしやすい個人向け国債のメリット・デメリットについて解説します。また現状は投資候補として利回りが低く、購入はおすすめできない理由も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。


個人向け国債の概要

国債は国が発行する債券であり、わたしたち個人投資家が購入しやすくした商品を「個人向け国債」と呼びます。


投資商品としては債券と同じく、国債を購入すると半年に1回利子を受け取れ、満期日を迎えると最初に投資した元本が全額戻ってくる仕組みです。つまり、お金を減らすリスクはなく安全に資産運用ができます。


個人向け国債は最低1万円から買い付けができ、ネットを含めた証券会社や銀行などで購入可能です。個人向け国債は償還期間にあわせて、以下画像のとおり3種類のなかから選べます。


 

画像引用元:個人向け国債窓口トップページ|財務省


画像の金利は税引き前の数字であり、実際は20.315%の税金がかかります。2023年10月時点において、税引後の年利は以下のとおりです。


・10年変動金利型:約0.406%(半年ごとに利率が変動)

・5年固定金利型:約0.263%

・3年固定金利型:約0.072%


3年・5年タイプの国債は固定金利のため、購入時に将来受け取れる利子が決まります。一方で、10年タイプの国債は変動金利であり、日本の経済状況や政策金利の変更を受けて利率は変わっていくのが特徴です。


個人向け国債を購入するときは、表面利率をよく確認してから検討する必要があります。


個人向け国債を購入するメリットは安全性の高さ

個人向け国債を購入するメリットは、安全性の高さにあります。国が発行体となっているため、元本割れのリスクはありません。


日本の経済状況が悪化しても、最低金利0.05%を保証しているため、一度購入しておけば最終的なリターンはプラスになります。


銀行預金よりは金利が高めに設定されているため、長期間使う予定のないお金を預けておく意味で、投資候補としてあげられます。


個人向け国債を購入するデメリット3選

個人向け国債は安全資産ではあるものの、購入するときのデメリットがあります。本章で3つ紹介するので、購入を検討している方は参考にしてみてください。


1. 金利が低い

2023年10月時点において、個人向け国債の金利は低く設定されています。長期で運用を考えているならほかの投資を検討したほうが、最終的なリターンを増やせる可能性が高いです。


たとえば、2023年10月時点で三井住友フィナンシャルグループが年利1%(償還期間10年)を超える新発債券を発行します。


 

画像引用元:円貨建債券 新発債券|SBI証券


ほかにも東京スター銀行は、利回りが高く安全に運用できる銀行です。給与・年金受取口座を開設すると、年利0.25%(税引後0.1992%)の利子がつくため、3年固定金利タイプの個人向け国債より高い利回りに設定されています。


比較的安全性の高い債券投資でも個人向け国債より高い利回りを実現できるため、資産運用で考えるならほかの金融商品の優先度が高くなります。


2. 1年間は原則中途換金ができない

個人向け国債を買う時に注意したいのが、1年間は中途換金ができない点にあります。ケガや病気などで大きな出費が必要になっても現金化できないため、個人向け国債は余剰資金で購入しましょう。


ただし、例外として保有者が亡くなったり大規模災害で被害を受けたりした場合、特例による中途換金ができます。


3. 中途換金すると直近2回分の利子がなくなる

中途換金すると、直近2回分の利子が差し引かれてしまいます。たとえば、購入から1年後に現金化すると利子の全額を受け取れなくなります。


購入後1~2年で換金する場合、利率の高いネット銀行を利用するほうが利回りは高くなるケースもあるため、現金化するタイミングによってほかの運用方法を検討しましょう。



現状では投資商品として個人向け国債の購入はおすすめできない

ここまで個人向け国債のデメリットを解説してきましたが、現状では投資商品としての購入はおすすめできません。


2023年10月時点での10年変動金利における税引後の年利は約0.406%であり、日本のインフレ率を下回っています。


「2020年基準消費者物価指数全国2023年(令和5年)8月分」を参考に全国の消費者物価指数を見てみると、前年同月比で3%以上も物価上昇していました。12ヶ月連続で上昇率が3%を超えており、運用で得られる利回りはインフレに負けてしまいます。


10年以上の期間で運用を考えたとき、米国や全世界株に連動したインデックスファンドへ分散投資したほうが高いリターンを期待できます。


ただし、将来的に日本の政策金利が上昇した場合、少なくとも3年固定金利タイプの個人向け国債の利回りは高まるでしょう。


安全資産としての価値は高いので、経済情勢をチェックしつつ、利回りがよくなったタイミングで個人向け国債の購入を検討してみてはいかがでしょうか。

独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

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