イタリアン「サイゼリヤ」を直営展開するサイゼリヤが10月11日に決算を発表しました。終わった期である2023年8月期は、連結売上高が1832億円(前の期比27.0%増)、同営業利益が72億円(同17.1倍)の増収増益で着地。
今2024年8月期については、連結売上高予想2110億円(前期比15.1%増)、同営業利益予想131億円(前期比81.4%増)の増収増益を計画するなど、好調を維持する見通しです。
この好決算を受けて、翌日の10月12日の株式市場では、同社株が大いに注目を集めました。寄り付きから買いを集めると、その日は制限値幅の上限となる前日比700円高、5530円で取引を終えました。いわゆるストップ高というやつです。
好調の要因について、会社側は主に新型コロナウイルス感染症への行動規制が緩和された事による経済活動の正常化を挙げています。
ただし、行動規制の緩和は企業にとって良い部分もあれば、逆風になる部分もありました。外食企業では特に問題となっている人手不足です。人流が回復し、客数が回復するなかで、従業員は以前のような数を完全には確保できていないという店は珍しくありません。
さらに、物価上昇にあわせて賃金も上昇させないと人を集められなくなっており、人件費の負担は外食産業に限らず、幅広い企業で以前より増加しています。
サイゼリヤもこの点は同様で、パート・アルバイトの採用強化を目的に時給の引き上げを行っています。それでも、これだけ好調な決算となったのはなぜでしょうか。決算短信の中身を細かく見ていくことで、その要因を明らかにしていきましょう。
そのために同社の業績を全体ではなく、セグメント別にみていきます。セグメントとは事業ごとに業績の数字をわけて見るためのものです。同社の場合はメインはイタリアンレストランで、そのほかの業態を幅広く展開するようなことはしていませんが、国内だけでなく、海外にも多く店舗を展開しています。そのため、セグメント別の業績として、日本、および海外(豪州、アジア)といった地区ごと売上高や営業利益を開示しています
まず、日本についてですが、2023年8月期の売上高は1205億円(前期比19.1%増)、営業損益は15億円の赤字(前期は21億円の赤字)となりました。前述したように、新型コロナウイルス感染症への行動制限が緩和されたことで、客数は回復したもようです。一方で、資源価格の高騰と円安による食材価格やエネルギー価格の上昇などの影響などにより、営業損益は大幅な赤字。赤字幅は前期に比べて縮小しているものの、それでも赤字を解消するには至りませんでした。
全体では非常に好調な決算だったのに、日本事業が営業赤字になっているというのは違和感がありますが、答えは簡単で、それ以上に海外事業が稼いでいるからです。
特に好調なのがアジア事業。実質的には中国事業と言い換えてもいいでしょう。同事業の売上高は売上高が627億円(前期比45.5%増)、営業利益は85億円(同3.8倍)と飛躍的な伸びを示しました。
続いて、豪州事業では、売上高75億円(前期比30.9%増)、営業利益2.5億円(前期比0.6%増)となっています。
アジア事業の売上高は日本の約半分ほどですが、利益は段違いです。サイゼリヤといえば、「値上げをしない」ことへのこだわりが話題となりましたが、それが可能なのも、海外でしっかり利益を稼ぎ出しているからだと言えるでしょう。
サイゼリヤに限らず、企業の業績をセグメントごとにみると、そのとき好調な要因について、詳しく把握することができます。全体の売上高や利益だけでなく、その内訳も是非チェックしてみましょう。