新しいNISA(少額投資非課税制度)のスタートまで、あと2カ月弱となりました。
筆者は、企業や団体、学校、公共施設などから金融に関するセミナーを依頼され、話をする機会が多くあります。受講する方々の発言や質問から、NISAへの関心が高まっていることを肌で感じています。
20代・30代の間で「つみたてNISA」人気上昇
日本証券業協会では、毎年、「個人投資家の証券投資に関する意識調査」を行なっています。個人投資家による証券保有の実態や証券投資への意識等を把握し、資産形成の施策などに役立てるためです。2023年7月中旬にインターネットで日本全国の20歳以上の証券保有者5,000人を対象に調査を行ない、10月18日に結果(概要)が公表されました。
この調査結果でも、NISAが普及している様子や、税制優遇制度が証券投資を始めるきっかけになっていることが伺えます。
まずは普及の状況をご紹介しましょう。回答者5,000人のうち、一般NISAの口座を開設している人は51.2%。「口座開設意向あり」と答えた人は12.1%で、両者を合わせると67.3%に上ります。一般NISAは、年齢層が高くなるほど、口座開設者の割合が高くなる傾向です。
また、つみたてNISAの口座開設者は29.6%、「口座開設意向あり」が16.2%で、合わせて45.8%です。つみたてNISAは一般NISAとは対照的で、年齢層が低くなるほど口座開設者の割合が高くなる傾向です。
特に20代~30代は突出して高くなっています。つみたてNISAの口座開設者は61.5%で、昨年の58.3%から3.2ポイント増加。口座開設の意向がある人を加えると、2023年調査が74.8%、2022年調査の70.8%から4ポイント増えています。
税制優遇・少額でも投資可能・リスク分散
NISAは、それまで縁遠いと思われていた証券投資の門をくぐるのに一役買っているといえそうです。証券投資を検討したり興味・関心を持つようになったりしたきっかけについて、過去の同じ調査を用いて時系列に見てみました【グラフ1】。
2023年に最も多かったのは「投資に関する税制優遇制度(NISA・つみたてNISA・確定拠出年金制度)があることを知った(42.8%)」という回答で、毎年増加しています。
ほかには、「将来の生活に不安があり、必要性を感じた」「少額からでも投資を始められると知った」「リスクを抑えて投資をする方法があると知った」が増加傾向です。
これらの結果から、税制優遇・少額でも投資可能・リスク分散の方法がある、ということがわかったので、将来の生活に向けて必要だと思う証券投資を始めた、という姿が浮かび上がります。
「つみたてNISA」が投資を始めるきっかけに
では実際に、NISAを機に投資を始めた人はどのぐらいいるのでしょうか。
調査の全回答者5,000人のうち、一般NISAまたはつみたてNISAの口座開設者3,504人に聞きました。NISA口座を作る前に証券投資の経験がなかったという人は、約3分の1。以前から投資経験があった人は約3分の2でした。
特に、つみたてNISAは、若い世代ほど投資未経験者のファーストステップになっている傾向です。「つみたてNISAの口座開設をきっかけに投資を始めた」と回答した人の年代別内訳は、20代・30代が39.4%、40代が28.8%で、40歳代までの層が多くを占めています。
本調査の回答者5,000人のうち、NISA制度がスタートした2014年以降に投資を始めた人は約4割。投資開始年別に見ると、2020年から2022年につみたてNISAを始めた人が多いことがわかります。2023年分は本調査が行なわれた7月中旬までの集計です【グラフ2】。
なお、一般NISA・つみたてNISA以外というのは、課税口座である「特定口座」「一般口座」のことですが、2020年以降に増えていることから、子どもの名義で「ジュニアNISA」を作った保護者がこの選択肢を選んだ可能性もありそうだと個人的には感じています。未成年対象のジュニアNISAは、2020年度の税制改正で、制度を延長せずに終了すると決まりました。
NISAをきっかけに投資を始める人が増えているものの、よくわからないまま、流れに乗ってNISA口座を作ろうとしている人も見かけます。NISAは「少額投資非課税制度」という名の通り、投資をするための口座の名称です。「NISAをするかどうか」の前に、「投資をしたいかどうか」を検討するのは言うまでもありません。
【参考サイト】個人投資家の証券投資に関する意識調査について(日本証券業協会)
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/kojn_isiki.html