日本生命がニチイ学館を買収・介護業界の現状と将来性は?

「日本生命」が介護業界大手のニチイ学館を傘下に持つ「ニチイホールディングス」の買収が報道されました。


介護業界は少子高齢者化の影響を受け、市場ニーズが高まっています。日本生命は保険業界のトップ企業であり、今回の買収を受けて介護業界へ事業を拡大する見込みです。


ただし、今回の買収の背景や現在の介護業界のトレンドについて、あまり詳しくない方もいるのではないでしょうか。


そこで今回は筆者自身が医療業界に勤務した経験を踏まえて、買収の経緯や介護業界の現状と将来性について解説します。ぜひ最後までご覧ください。



日本生命がニチイ学館を買収した経緯

日本生命は約2100億円の予算をかけて、ニチイホールディングスの買収を発表しました。


日本生命は保険事業で国内トップのシェアを誇り、個人・企業向けの保険や資産運用など多数のラインナップを揃えています。またニチイホールディングスは、ヘルスケア事業の国内最大手であり、住宅・居住系介護サービスを中心に幅広く展開しています。


1999年から日本生命とニチイは介護・子育て分野で業務提携を結んでおり、協業関係にありました。具体的には、女性特有の疾患や症状などの悩みの相談や、子供の健康や育児の疑問を専門家へ質問できるサービスなどがあります。


今回の買収の背景には、日本生命の主力である保険事業の将来性に関係します。日本が抱える人口減少や少子高齢化などの環境要因を背景に、保険事業は伸び悩む可能性が高いです。


新型コロナウイルスによる外出制限が解除された2023年以降も、個人保険の契約獲得は苦戦が続いています。2023年1~3月において、個人保険の契約者数は前年比の約83%ほどでした。


ニチイの買収を期にライフケア事業の新規展開とあわせて、収益アップを狙っていると予想されます。


介護業界の現状と課題

報道で耳にする機会は多いと思いますが、内閣府が発表する高齢社会白書を参考にすると、日本の65歳以上の人口は増え続けているのがわかります。


 

画像引用元:令和5年版高齢社会白書|内閣府


65歳以上の人口割合は1990年が12.1%に対して2022年は29%と大幅に増加しています。また日本の出生率は減り続けており、今後も65歳以上の割合は増える見込みです。


また75歳以上の人口が増えていくと、必然的に介護サービスを必要とする要介護者の割合と給付額も増えていきます。

 

画像引用元:介護保険制度をめぐる最近の動向について|厚生労働省


画像のとおり介護保険にかかる給付・事業費は右肩上がりに増加しています。サービスの充実や介護職員の確保の必要性から、業界全体のシェアは増え続けることが予想されます。


ただし、介護業界における人手不足は深刻な問題です。介護業界では2020~2025年の期間で、約29万人のスタッフが不足すると指摘されています。


今後更なる市場ニーズの高まりが予想できるため、現場の人手不足解消を含めた抜本的な改革が必要です。


日本生命のニチイ買収からみる介護業界の将来性は?

繰り返しになりますが、65歳以上の割合は増加傾向であり、介護業界へのニーズは今後も増える見込みです。


2000年から介護保険法が新設されたあと、高齢者の介護を民間のサービスへ依頼したり施設へ入居させたりするケースが増えています。


介護保険料を支給する財源に限りがあるのも事実であり、今後は現役世代のうちから老後への蓄えを準備する必要があります。


日本生命は今回の合併を期に介護サービスへ力を入れていけば、事業拡大が十分に期待できるでしょう。


ニチイ買収によって介護業界への展開を狙う日本生命

日本生命によるニチイ買収は、お互いの事業の親和性が高く、業績拡大が期待できる施策です。ニチイが抱える顧客に対して個人保険の提案や、介護関連サービスの拡大などさまざまな事業展開が予想されます。


日本生命は自社で運営している病院があるため、介護事業が充実すると、治療を終えて退院した患者への介護サービスを提供できる強みが出てきます。


今後の日本生命の動向に注目してみてはいかがでしょうか。最後に介護関連銘柄を3つ紹介いたします。


・2374 セントケア・ホールディング

訪問介護事業が主体となり、全国で800以上の営業所を運営しています。ほかにもデイサービスや有料老人ホームなど多数展開しています。

 

出典:Trading View(以下同様)



・8630 SOMPOホールディングス

損害保険大手のSOMPOホールディングスは、介護事業において業界2位に位置しています。介護施設は全国規模で展開しています。

 



・2393 日本ケアサプライ

福祉用具レンタル事業を中心に、全国で介護事業者サポートや訪問介護事業を展開しています。

 


独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

藤崎 竜也の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております