「あおぞらショック」の予測困難性に個人投資家がどう向き合うべきか

あおぞら銀行の株価が1週間で約30%も下落しました。2月1日、同行の決算資料が発表されます。24年3月期の純損益が従来予想の240億円の黒字から一転し、280億円の赤字になるとの見通しが示されました。


たとえば投資信託の採用銘柄にあおぞら銀行を含んでいるようなプロのトレーダーであれば、同社のアメリカを中心とした資産構成を含め、リスクヘッジすることが求められます。一方で個人投資家にとって、同等の動きをすることはきわめて困難です。このような予測困難性の高い突発事故に対し、個人投資家はどう向き合うべきでしょうか。


あおぞらショックにより株価が急落

あおぞらショックの株価暴落についてはこちらの記事が詳しいですが、チャートを見ると現在も株価に復調の兆しは見えていません。



あおぞら銀は日経平均株価に採用されるような安定的な銘柄であり、かつ銀行株として投資初心者もよく購入する株です。その株がボラティリティという言葉を軽く飛び越えた大暴落を起こすとは、誰が予測したでしょうか。


記事の最初に「プロならば読めるはずの大暴落を」とお伝えしました。ただ、このチャートを見ると、2023年12月から株価が微増ながらも上昇一辺倒だったことがわかります。根耳に水だった専門家も多かったのでしょうか。


今一度所有株の背景を見たい

多くの個人投資家は所有する株に「付き合い方」を定めています。一定機で遠慮なく手放し、利益確定の源泉とする銘柄がまずあります。そのほかに資産形成として、安定した株価推移を期待している銘柄があります。例えるなら後者はS&Pやオルカンといった投資信託と同様の動きを期待されています。


今回は銀行株であり、かつ安定した株価推移を見せていた「資産形成組」が短期間で表情を大きく変えた出来事でした。株運用のリスクヘッジに分散投資が掲げられていますが、正直に言ってこの動きをされては、分散投資も目立ったリスクヘッジにはなりません。資産ポートフォリオの一部が丸ごと蒸発するに等しい急落下といえるためです。


今回は決算発表の前に、一部経済メディアがあおぞら銀行の貸出ポートフォリオで問題となった不動産ノンリコースローンの暴落を指摘し、赤字転落の可能性を示唆していました。銀行株だから安全だろうではなく、その銘柄がどのように報じられているか、今一度所有株の背景を見ることに時間を割きたいタイミングです。


Google検索で「あおぞら(銀)ショック」と入力して日付をチェックすると、決算発表前に複数の記事が急変を知らせていることがわかります。その時点で株を実際に売却できたかはさておき、直前でリスクを回避する可能性はまだ残されていました。ここまでの突発事例を我々は再現リスクの無い話とするか、何かを得ようと試みるか。判断の難しい問題です。



政策金利の方針転換がやってくる?

今回のあおぞら銀行では衝撃的な決算発表による株価下落でした。では個人投資家はこのような突然変異を予防するために、何を抑えればいいのでしょうか。


決算発表は当然です。春から初夏にかけては3月決算の各企業の決算発表が続きます。それに加えるとすれば、やはり春にも実施かといわれている政策金利の変更だと考えられます。昨年末には植田日銀総裁も「チャレンジングな年末」と発言し、年の瀬を迎えていた関係者に緊張が走りました。年が明けてからの日銀会合も決定打は出ないものの、理事の発言は「いつ動くかわからないので準備をしておいてください」というメッセージが誰にもわかるように表現されています。


今回のあおぞらショックを受け、自分の所有株にこういうことはないようにと願う個人投資家に進めることは、政策金利の値上げがその企業にとってプラスかマイナスかを考えておきましょう。個別株の世界にはいつ何時何があるかわかりませんが、いま見えている2024年の最大の変数は、間違いなく日銀の政策変更です。


日々IFAの仕事をしていて感じるのは、昨今の個人投資の世界には一部のプロフェッショナルと、彼らの発信する情報を(有料、無償問わず)積極的に集めて自身のポートフォリオに反映する人がいます。その一方で知名度の高い投資信託に限定して投資する、銀行預金の延長線として株式運用を進めている方々がいます。


両者のあいだでインデックス+個別株という方々も見ますが、その方々こそ今回のように個別株のリスクが潜在しているといえます。資産形成は投信でしっかりと進めているからこそ、個別株はどのような方向性で選んでいるのでしょうか。日常生活や趣味の延長という方も多いようです。自分が応援している企業だからこそ、思わぬ落とし穴を踏んで落下するチャートは見ないために、一度精査することを今回のニュースは教えています。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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