スキマバイトの「タイミー」が上場間近か 1:3000の株式分割を実施

スキマバイトサービスの「タイミー」(東京都港区)が3月14日、2024年3月31日を効力発生日として、同社普通株式1株につき3000株の割合で株式分割すると官報において公告しました。


タイミーは上場企業ではありませんが、一般にこうした大規模な株式分割は株式上場前の準備と言われています。何のために分割するかというと、発行済株式数を増やすことで、公開株数を調整しやすくし、流通株式数、株主数などの上場審査基準を満たすためというが理由になります。


また、分割により上場時に個人投資家が買いやすい価格に調整すると言った狙いもあります。上場前の会社の発行済み株式は創業者や限られた出資者などが保有するのみで株式数も限られ、1株当たりの価格もそれなりの額になることが多いです。上場するときにそれだと不便な点や、そもそも上場するための条件を満たさない、と言う事例が出てくることから、株式を大規模に分割して発行済み株式を増やすことで調整しやすいようにしているわけです。


こうした理由からタイミーは近いタイミングで、早ければ2024年にも上場する可能性があると考えられます。


同社は2017年に設立されました。創業者で同社代表取締役の小川嶺氏は、高校生の時にリクルートやサイバーエージェントでインターンを経験。かなり早くから自ら事業を立ち上げることを目指していたようです。


サービス開始直後からファンドや事業会社からの出資を集め、事業を拡大。かなり初期のタイミングから、サイバーエージェント(藤田ファンド)のほか、エン・ジャパン、オリエントコーポレーション、セブン銀行、西武しんきんキャピタルなどの早々たる企業が出資しており、同社の事業とその成長性に注目していたことがわかります。


ベンチャー企業が上場前に資金調達のために他企業やベンチャーキャピタルから出資を受けることは珍しくありません。というよりも、それが一般的な成長のための資金調達の手段です。実際、同社も前述したような企業や、そのほか伊藤忠商事、KDDI、MIXIなどの企業やファンドなどから出資を受けています。


ただ、同社の場合はそれに加えて、銀行からの借り入れ、いわゆるデッドファイナンスも積極的に活用している点が珍しいところです。同社は設立から2023年までに400億円超の資金調達を実施していますが、そのうちの300億円超はデッドファイナンスによる調達です。


2022年に180億円、そして2023年に130億円分の調達を実施しました。しかも、それが無担保・無保証、借入金利は年利1.0%未満(All-in cost)ということで、固定住宅ローン金利よりも安いくらいです。


前述したように、通常ではこれを借り入れではなくエクイティファイナンス、つまり新規に株式を発行し、それを渡す代わりに資金を提供してもらう例が多いです。設立当初の企業では、そもそも運転資金が不足しているからお金を借りるわけで、返済する余裕がありません。エクイティファイナンスならば、株を渡すかわりに調達した資金を返済する必要はありません。調達した資金により企業が大きく成長すれば、それだけ企業価値も上がり出資した企業も得をするということで、両者にメリットがあります。


それでも、タイミーは返済する必要があるデッドファイナンスで資金を調達したわけですが、これはこれでメリットがあります。新株を発行して資金を調達するということは、既存株主の持ち分は減少し1株当たりの株式価値の希薄化を招くことになります。将来もっと会社が成長して株の価値も上がる、と思っているのに成長する前に安く渡さないといけない、という面もあるわけです。もちろん、必ず成長するという保証はないわけですが、タイミーの経営陣はそう信じ、また金融機関もタイミーであれば大丈夫との信用のもとに、好条件で貸し付けを行ったと言えるでしょう。


さまざまな業種で人手不足が深刻化している昨今、スキマバイトという効率的に時間を使うことで支持を受けてきたタイミー。そんな企業がもうすぐ上場するかもしれないと思うと、ワクワクしてきますね。今後も注目し、続報を待ちたいと思います。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

斎藤 裕昭の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております