世界の株式に分散投資、とはいえ

世界の株式に分散投資をする、「全世界株式ファンド」や「グローバル株ファンド」などの投資信託が人気です。投資対象の国や地域を分散させた株式投信です。

 

ところで、この「全世界の株式に分散投資」。どのような配分で分散されていると思いますか?


その前に、ちょっと予備知識


全世界の株式を買うには、投資対象が1つで完結する場合と、複数の対象に投資をする場合があります。

 

1つの場合は、全世界の株式市場をひとくくりにした指標(インデックス)に連動するように運用します。コストの低いインデックス投信によくあるパターンです。連動させるインデックス(ベンチマーク)の代表的なものとしては、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」、「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」などがあります。

 

複数の投資対象の場合は、例えば日本の「TOPIX」、日本を除く先進国株式の指標「MSCIコクサイ・インデックス」、新興国株式の指標「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」の3本をベンチマークとし、純資産の3分の1ずつを投資する――といった運用方針が代表的です。

 

1つのインデックスがベンチマークとなる場合は、運用自体がとてもシンプルです。販売手数料や運用管理費用(信託報酬)も低め。一方、複数のインデックスをベンチマークとして組み合わせた世界株投信の場合は、コストが比較的高めになります。

 

では本題。1本の全世界インデックスは、均等か?


個人投資家と話をしていると、全世界株ファンドは「世界各国の株式を均等に買っている」と思っている方が多いことに驚きます。

 

実は、全世界株インデックス自体が、投資国を均等にしているわけではありません。

 

世界の株式市場は、国によって規模が違います。全世界株のインデックスは、この市場規模を反映しているため、現在は米国株が断トツの6割を占めています(グラフ)。



この2つの代表的なインデックスの他に、国ごとのGDPに応じた配分で構成するものなど、多彩なインデックスも用意されていますが、オーソドックスな全世界株ファンドの多くが、この2つのインデックスをベンチマークにしています。

 

つまり、全世界株のインデックス投信を持っている投資家は、資金の6割を米国株に、その他数%ずつを日本株や英国株、中国株などに配分し、さらに小さな市場に少しずつ投資をしているというわけです。

 

すなわち、「全世界株ファンドの値動きは、米国株式市場の値動きの影響を大きく受ける」ということができます。

 

MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスとFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスの違い

 

米国のMSCI社と英国のFTSEインターナショナル社。両社とも、さまざまな資産クラスのインデックスを多数作成しています。そのうち、全世界株式のインデックスとして、多くの投信がベンチマークとしているのが「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」と「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」です。

 

では、この2の違いを見ていきましょう。

 

「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」は、2022年7月末時点で、先進国23カ国と新興国24カ国の株式で構成されています。対象は、大型株と中型株で2,897銘柄。全世界の株式の約85%をカバーしています。この組み入れ銘柄は、毎年2月、5月、8月、11月に定期的に見直されます。

 

「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」は、2022年7月末時点で、先進国25カ国と新興国23カ国の株式で構成されています。「オールキャップ」とは、大型株、中型株、小型株すべてという意味です。小型株も組み入れているため、9,380銘柄と多く、全世界の株式の約98%をカバーしています。

 

米国のハイテク株が動けば、全世界株ファンドも動く

                                   

共通するのは、どちらのインデックスも、浮動株を調整した後の時価総額に応じた割合で構成されている点です。したがって、世界的に規模の大きな銘柄の値動きがインデックスに影響を与えます。とすると、どんな銘柄が組み入れられているかが気になるでしょう。

 

どちらも構成する上位銘柄は、1位アップル、2位マイクロソフト、3位アマゾン、4位テスラ、5位アルファベット・議決権あり株式で、顔ぶれは同じです。


「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」と「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」は、全体の銘柄数に差があるため、構成銘柄の配分が異なります。以下、上位5銘柄の構成比率を比べてみましょう。前のカッコが「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」、後ろのカッコが「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」です。

 

アップル(4.46%)(3.72%)、マイクロソフト(3.36%)(3.14%)、アマゾン(2.08%)(1.79%)、テスラ(1.32%)(1.13%)、アルファベット・議決件あり(1.18%)(1.05%)。

 

気にするほど大きな差があるわけではありませんが、全体のセクター構成では違いがあります(表)。



国際分散投資を高めたいなら


いかがでしたか。「世界の株式に分散投資」というと、国や地域、先進国と新興国、業種をバランスよく分散し、いかにもリスクを抑えているように思っていませんでしたか?

 

このように、現状では、米国の巨大IT企業の株価につられやすい構成になっているのです。この点は、米国株が絶好調の時には高いパフォーマンスが期待できます。しかし、リスク分散という測面では、偏りがあることを否定できません。

 

では、この影響をなるべく低く抑えたいと思う場合、どうしたら良いでしょうか。

 

冒頭でご紹介したような複数のインデックスに分散させるのは1つの方法といえます。全体のポートフォリオを日本、先進国、新興国のそれぞれのインデックスに分散する投信や、さらに世界の債券やREIT(不動産投資信託)など、株式以外の資産クラスが組み入れられたバランスファンドで、リスクを低くすることができるでしょう。

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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