リニア工事進捗によって「固定資産税」に影響が出るタイミングを考える

2024年5月27日に前職の辞職にともなう静岡県知事選が行われ、元浜松市長の鈴木康友氏が新たな静岡県知事となりました。これまで静岡県内の河川への影響から反対派の先頭に立っていた前職知事とは異なり、基本的には推進姿勢の新知事と見られています。実際に2024年6月に入り鈴木新知事は国土交通省、JR東海のトップと相次いで会談し、地元でのメディアでは「リニアウィーク」と報じられました。


リニア建設の是非には様々な意見がありますが、長く停滞していたプロセスが再び動き出した印象を受けます。日本を横断する大動脈の完成に向け、工事は着々と進んでいます。


2027(令和9年)の竣工予測は見送り

ではリニアの工事はどこまで進んでいるのか。リニア中央新幹線が公開している資料を確認すると、当初の開業目標だった2027(令和9)年の開業が断念したという報道のあと、新しい開業時期は発表されていません。既に実験線として完成している山梨県内を除き、大半の工事期間で「着工はしているが竣工時期は定まっていないので公開できない」という段階です。


言い換えるならば「工期が見通せる状態になれば、あらためて竣工時期を発表する」と見られるものです。工期を発表するのはJR東海ですが、最大の懸念は静岡県内の未着工期間です。国や静岡県といったステークホルダーと相談したうえで、発表の段階に至ると想定されます。


とはいえ、静岡県の知事がリニア容認派に変わったとしても、難題は蓄積しています。各所で工事が進行しているのも事実であり、東京都から愛知県にまたがる沿線住民は、今かと新しい工期発表を待ち望んでいることでしょう。経済成長期からこれまで、鉄道インフラといえば新幹線が稼働している東海道筋が主役でした。長く優先順位の低い時期が長く続いた山林地域に、時代最先端の乗り物が走り出すのです。


肝心の工期発表はいつになるのか。既に完成に向かっている駅舎もあり、周辺自治体の負担を考えても早急に工期発表がされると予測されます。工期発表のあと、周辺自治体の方々に大きな影響が考えられるのが、固定資産税の視点です。



令和6年の地価公示では北海道の千歳市が著しい上昇

リニア建設をはじめとして、新しい建設のニュースは固定資産税の評価額に大きく影響します。先日、令和6年の地価公示が発表されましたが、国内半導体メーカーであるRapidus(ラピダス)社が大規模工場を建設する北海道千歳市と隣町の恵庭市の地価が著しい上昇となりました(余談ながら恵庭市は筆者の出身地です)。


同様に熊本県のIT工場建設地周辺も地価上昇が続いています。両親が息災のため、筆者は土地所有者ではありません。それでも将来的な不動産資産の行く末には、公示価格をチェックしなければならないと考えるニュースです。


参考:国土交通省 令和6年地価公示 住宅地の変動率上位


リニアも半導体工場と同様、次の工期発表によって著しい地価の上昇が想定されます。公示地価と固定資産評価額、相続税評価額はイコールではありませんが、きわめて連動性の高いものです。地価が上がると土地の評価上昇に期待できる一方、ライフプランにおいてはデメリットもあります。


固定資産税と相続税の上昇を想定しておきたい

地価公示は毎年1月1日時点における標準値の価格を3月に公示します。令和6年は26,000点が対象です。固定資産税評価額は公示価格の0.7、相続税評価額は0.8を目安に設定されています。


リニアの新しい工期が2024年中に出たからといって、2025(令和7)年からさっそく公示価格に影響が生まれる確証はありません。ただ、突発的に報じられた建設計画と異なり、リニアは長く実現が求められてきた近未来のインフラです。


また、ここ数年の建築停滞があったことで、より建築後の各種施策が進展する時間に繋がったと考えることもできます。公示価格は竣工後に実経済の影響とともに段階的な上昇を見せるというよりも、短期間で先物性の高い上がり方をしていくのではないでしょうか。



専門家とともに課税額増加への対策を考える

各家庭におけるライフプランは多様です。「毎年の固定資産税が増税したら支払える余力がない」、「もしかしたら近い将来に相続があるかもしれない」という方は、現在のうちに対策を進めることをお勧めします。このあたりは先祖代々の土地を承継している家計も多いでしょう。次の相続税評価が、これまでと比較にならない事態になる可能性があります。


固定資産税と相続税はいずれも節税方法があります。資産移動や不動産を活用したものであるため、場当たり的ではなくメリット・デメリットを可視化して取り組むべきものです。専門家の意見を参考にして、準備を進めるようにしていきましょう。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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