ネット証券口座での投信買付が急増

日本証券業協会では、インターネット取引に関する調査を半期ごとに実施し、その結果をまとめています。先日、2024年3月末時点のインターネット取引の状況が公表されましたので、ポイントをご紹介しましょう。


証券口座のうちインターネット口座は6割強


2024年3月末時点で、調査対象の証券会社は267社。そのうちインターネット取引を取り扱っている証券会社は95社で、全体の35.6%です。2023年9月末の前回調査では93社でしたから、2社増えました。


証券取引をインターネットで行なう「ネット口座」は、2024年3月末時点においては4,546万口座で、半年前の前回調査から8.1%増えました。そのうち1円以上の残高がある口座は2,771万口座で、総口座数の61.0%。口座だけ作って取引されていない口座が4割弱あるようです。この割合は、前回までの調査とほぼ同じです。


なお、インターネットでの信用取引口座数は297万口座。前回調査に比べて13.4.%増加し、前回の増加率5.2%に比べると大きく増えました。


どの年代でもネットの証券口座が増えている


個人のネット証券口座数を年代別に見ると、最も口座数が多いのは50歳代の951.3万口座で、全体の21.0%。前回調査は40歳代の口座数の方が上回っていましたが、今回は40歳代が950.4万口座(21.0%)で、若干の差で順位が逆転しました。次いで30歳代の770.6万口座(17.0%)、60歳代652.9万口座(14.4%)と続きます。


1円以上の残高がある口座でも年代別の順位は同様です。ただし、年齢が高いほど口座数に対して残高がある口座数の割合が高めです。


【グラフ1】は、残高がある口座の年代別口座数について、半期ごと(年度上期:4月~9月、下期:10月~翌年3月)の推移を示しています。



どの年代も増加している中、特に若い世代の増加率が高くなっています。2023年度下期は、20歳未満が32.33%増、20歳代が11.82%増でした。絶対数が比較的少なめであり、増加率が高くなっています。全体的には、現役世代の口座数の伸びが高齢世代に比べると大きい傾向です。30歳代が7.66%増、40歳代が7.16%増、50歳代が8.20%増でした。


上場株式等の取引の3分の1強がネット証券口座経由


口座数が増えれば取引額も増えるのが自然です。2023年度下期は、インターネットによる証券取引額が大きく増加しました。


ネット口座を通じた株式等の現物取引は212兆9,582億円、信用取引は273兆579億円で、合計486兆161億円でした。前回調査に比べて7割以上の取引増。この金額は、上場投資信託(ETF)及び不動産投資信託(REIT)等を含みます【グラフ2】。


 


全証券会社を通じた株式等委託取引の売買代金は1,367兆7,442億円で、これに占めるネット取引の売買代金は、35.5%となりました。それまで25%程度で推移していた近年に比べ、高い割合となっています。


また2023年度下期は、それまでの半期と比べると、現物取引と信用取引の売買代金の差が縮まりました。低コストとスピードが求められる信用取引は、ネット取引との親和性が高いといえます。以前はネットでの信用取引が現物取引を大きく引き離していましたが、今回調査では現物取引でのネット口座利用が伸びています。


ネットの証券口座からの投信買付額が約4割増


次は、一般の公募投資信託のネット取引について見てみましょう。


【グラフ3】は、ネット証券口座での投信買付額を半期ごとに集計したものです。2023年度下期は4兆4,500億円となり、前回調査に比べて39.8%増加しました(証券総合口座におけるMRF等の自動買付分を除く)。この伸びは、2024年1月からの新しいNISA(少額投資非課税制度)が貢献したといえるでしょう。



この調査で任意に各証券会社から寄せられた自由回答欄のコメントでは、複数社が50歳代の取引増加にについて触れています。その一方で、20歳未満・20歳代の取引件数や売買金額が低い点にも言及しています。


インターネットの証券口座は、少額でも取引できます。若い世代にこそ、無理のない金額で、長期的視野に立った資産形成にネット口座を利用して頂きたいものです。引き続き半期ごとの調査結果に注目していきたいと思います。


【参考】「インターネット取引に関する調査結果(2024 年3月末)について」2024年 6月19日(日本証券業協会)


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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