長期投資への関心が高まるにつれ、投資信託を選ぶ際に重視されるのが「コスト」です。投信のコストは、大別すると「手数料」と「税金」です。今回は、そのうちの「手数料」について、考えてみましょう。
投資信託は、金融商品の詰め合わせパック
投信にかかる手数料を説明する前に、投信の運用の仕組みについて簡単に触れておきましょう。投信は、大勢の資金を集めて一緒に運用する枠組みです。たくさんの投資家から資金を集めて金額を大きくし、さまざまな金融商品に投資をします。
対象となる金融商品は、国内や海外の株式・債券・その他金融商品・不動産・金などの先物取引など、いわば運用の“素材”。あらかじめ定めた範囲内で、多種類の素材を買い付けて運用し、1つの投信としてパック詰めにするのです。
このパックには、投信ごとに定めた運用目的に沿って、最適な金融商品を選んで詰めます。最適な金融商品を、最適なタイミングで購入し、必要に応じて売却し、純資産を殖やすのが投信の運用です。
投信の純資産が殖えれば、その投信を購入した投資家の資産価値が上がります。しかし、運用の判断がうまくいかずに、純資産が目減りすることもあります。そうならないように、投信の運用会社は、パックする金融商品について、調査・分析を重ねて投資判断を行っています。
運用を託すのは、全面的なおまかせとは違う
投信は「プロに運用を任せる」と表現されることが多いものです。しかし、日本や世界の経済情勢を考え、自分のお金はどのように運用したいかという大まかな方針は、投信を購入する投資家が決めなければなりません。
大まかな方針とは、例えば、「米国の株式で運用したい」「新興国の経済成長に投資したい」「日本の良く知っている企業の株式だけに投資したい」「配当利回りの高い株式で運用したい」「株式には一切投資せず、比較的安全な先進国の国債だけで運用したい」「国内外の株式、債券、不動産に分散投資をしたい」といったものです。
仮に「国内外の株式、債券、不動産に分散投資をしたい」と考えたとき、では、株式はどの企業が良いのか、金利環境からするとどのような債券投資が適しているか、不動産市況はどうなのか、といった具体的な運用の判断を、運用会社に委託するのが投信です。
投信の手数料は、何のために支払うのか
この時に、最適な運用のための調査・分析にかかるノウハウや人件費などが必要になります。それが投信の費用の正体です。運用にかかる費用は、信託報酬と呼ばれます。
また、冒頭で説明したように、投信は多くの人の資金を1つに集めて運用します。この資金を集める役割は、窓口となる販売会社が担います。ここで人件費や宣伝に係る費用が発生します。これらが販売手数料です。販売会社ごとの経営判断で、販売手数料を無料にしたり、キャンペーンなどで優遇したりするケースもあります。また、投信の運用会社が直接販売をする場合もあり、通常、直版では販売手数料が無料です。
投信ではなく、投資家が株式を売買する場合は、投資家自身が銘柄(上場会社)を決め、売買のタイミングを決めています。投資家が自分で業績やニュースを調べて、判断を下します。投信の場合は、この手間を運用会社に行なってもらうために、また、プロのノウハウを利用するために、投資家が手数料を負担するわけです。
そう考えると、比較的手間のかかる分析をしなければならないタイプの投信は、運用管理費用(信託報酬)が高くても当然といえます。一方、判断や分析に手間のかからない、株価指数などに連動するインデックス投信の場合は、費用が低くすみます。また、情報を入手しやすい日本国内や米国などの大きな国に比べ、新興国などで情報量が少なく、調査が難しい小さな市場での運用は、費用が高めになります。
まとめ
投信の費用は、何のために負担するのかを考え、同じような運用の投信と比較し、妥当な水準を判断しましょう。手数料や運用管理費用(信託報酬)は安いに越したことはありませんが、低コストで販売会社のアフターフォローが不十分だったり、運用がおろそかになったりするのは、本末転倒です。