外食店といえば、コロナ禍からの回復により業績は好調。人手不足もあって店員を確保するのも大変でいつも繁盛している、というイメージがある方は少ないくないと思います。特にインバウンド客の増加もあって、寿司やラーメンなどは特に伸びているという印象があるのではないでしょうか。
しかし、実際にはラーメン店の倒産が足もと過去最高ペースで増加している一方、中華料理店は好調だというデータが出ています。東京商工リサーチが9月29日に公表したところによれば、2024年1-8月の倒産件数はラーメン店が44件(前年同期比57.1%増)、中華料理店は7件(同36.3%減)となりました。
中華料理店とラーメン店の倒産件数(年次)推移(1-8月)
東京商工リサーチ公表データよりDZHFR作成
この数値は正直なところ、個人的には意外でした。どちらかといえば中華料理屋の倒産が多いイメージがあったからです。実際、グラフのように過去の数値を見ると2010年前後ではラーメン店よりも、中華料理屋の倒産件数の方が多くなっています。では、なぜこの数字が今のように変化してきたのでしょうか。
ラーメン店の倒産件数は2013年に29件といったんピークをつけたあと、その後は漸減傾向となります。インバウンド(訪日外国人客)の来店増や、若者を中心としたラーメンブームなどで2016年は16件まで減少しました。
これまでもラーメンはたびたびブームを巻き起こしていますが、2000年代後半から2010年にかけてはちょうどつけ麺ブームや「二郎」系といわれるラーメンが人気を博し、長い行列をつくる店舗が増えてきた時代とも重なります。
しかし、ブームになれば新規参入が増え、競争が激しくなることも市場原理。2017年ごろから再び倒産件数が増加基調に転じコロナのあった2020年には前回のピークとなった2013年の29件を超える31件となります。
コロナ向け融資などが整備されたことで2022年には倒産件数は8件とグッと少なくなりましたが、融資制度がなくなったことで2023年以降は再び増加。そして2024年は前述したように過去最高ペースの44件の倒産を記録しています。
ラーメン店の倒産が増えているのが、ここまでも説明してきたように新規出店が増えていること自体も影響しています。ラーメン店は参入障壁が低い一方で、味には流行もあり、どんどん増える店の中で生き残るのは容易ではありません。加えて、物価高により食材や光熱費が上昇しても、ラーメンには「1000円の壁」と呼ばれる心理的な壁があり、どこまでも値上げするというわけにはいきません。これらの理由から収益悪化で倒産に至るケースが多いと東京商工リサーチでは分析しています。
では、中華料理店の倒産が逆に減っているのはなぜか。これは近年の「町中華」ブームが影響していると思われます。テレビなどのメディアでは、チェーン店とは異なる魅力があるとして町の中華料理店が取り上げられるケースが増えており、それに合わせて客数が増加している点が大きな支援材料になっています。
また、コロナ禍ではテイクアウトを実施できた点もプラスに働きました。ラーメンは基本的にテイクアウトには向いていらず、それを求める客も多くありません。しかし、町中華では以前から出前のかたちで行っていることで特に新しい投資が必要になるものでもありません。またメニューが多く、1品当たりの金額を少しずつ値上げすることができるほか、盛り付けの内容や量を調整することで価格をコントロールしやすいという利点があったことなども影響しました。
一方で個人経営の店舗の多くは後継者問題を抱えており、将来的には事業継承問題による倒産が増加してくる可能性もあるでしょう。一時のブームに終わるか、それとも後継者問題などの課題を乗り越えて町中華の文化を次代につなぐことができるか、これからも注目したいと思います。