日本証券業協会の「証券投資に関する全国調査」の結果から、国民の投資についての現状や意識などをご紹介しています。今回は、4回シリーズの第2回。少額投資非課税制度(NISA)と確定拠出年金に関してお伝えしましょう。
NISAの認知状況は大幅増加
2024年度の「証券投資に関する全国調査」は、新しいNISAが始まって半年経った2024年6月から7月にかけて実施されました。調査対象は全国の18歳以上の7,000人です。
「NISA(少額投資非課税制度) についてご存知ですか」という問いに対し、口座を開設してはいないものの、「NISAの内容を理解している」人と「NISAという言葉を聞いたことがある」という人の合計は、59.6%で、前回調査では47.2%でした。すでに「NISA口座を開設している」と答えた人は18.3%。前回調査では10.4%でした。
NISAの口座開設者、内容を理解している人、言葉を聞いたことがある人を「認知している」とすると、NISAは77.9%の人に認知されています。前回調査の認知度は57.6%でしたから、3年間で20.3ポイントの大幅増加となりました。
2024年からNISAが大きく変わることを機に、前年の後半ぐらいからはあたかも「NISA祭り」といった様相になっていました。【グラフ1】は、新NISAの前後で変化した行動です。
実際に証券口座を開設したり(18.2%)、投資をしたり(NISA22.2%、NISA以外3.5%)という行動に移した人は、それぞれ2割前後。「資産形成について興味を持ち始めた」という人は60.3%に上ります。なお、前回記事でご紹介した通り、この調査では、有価証券の保有率が24.1%。既に投資をしている人と興味を持ち始めた人を合計すると、8割以上になります。
前回の記事では、証券投資の必要性を感じる人が全世代で増えていることもお伝えしました。また、証券投資は不要と思っている人のうち、その理由に「金融や投資に関する知識を持っていない」を挙げた人は約4分の1。今後は、これらの層の人たちへの金融経済教育が重要だと思います。
新NISAがスタートしてから証券投資を始めた人の中には、この夏以降に荒れた金融市場を手痛いカウンターパンチだと感じている人もいらっしゃることでしょう。けれど、積立投資であれば、値下がりした場面で購入できているのです。積立や購入の時期は、安くて結構。その資金をいつか使う時に値上がりしていれば良いのですから。このような経験も大事な学びです。
確定拠出年金の加入状況
さて、NISAと並んで関心が高まっているiDeCo(イデコ)についてはどうでしょうか。iDeCoは、個人型確定拠出年金の愛称です。確定拠出年金は2種類あり、1つは企業型でもう1つが個人型です。
企業型は、勤務先が掛金を拠出して従業員の個人口座に積み立て、従業員の判断で運用して老後資金に充てるという仕組みです。一方、個人型(iDeCo)は加入者本人が掛金を拠出します。徐々に制度が整い、現在はほとんどの勤労者世代がiDeCoを利用できます。なお、企業型確定拠出年金で「マッチング」と呼ばれる、従業員自身が掛金を上乗せ拠出する制度を利用している人はiDeCoを利用できません。
確定拠出年金は、企業型であれ個人型であれ、公的年金の上乗せ制度として主に老後の生活資金を目的にしています。【グラフ2】は、確定拠出年金の加入状況です。
「NISAとiDeCoは、どちらが良いですか?」などと聞かれることが多いものの、
企業型・個人型を合わせても回答者全体の1割しか加入していません。その上前回調査よりも減少しています。iDeCo、企業確定拠出年金のいずれにも加入していない人のうち、iDeCoへの加入を「検討している」と答えた人は1.7%でした。
iDeCoに加入しない理由
企業型は勤務先で制度を導入していなければ加入者にはなれませんが、iDeCoは前述の通り、ほとんどの勤労者世代が加入できます。iDeCoに加入しない理由はなぜなのでしょうか。
iDeCo・企業型確定拠出年金に加入していない回答者に対し、iDeCoに加入しない理由を尋ねた結果が【グラフ3】です。
「iDeCoを聞いたことがない」という人が、34.6%、「しくみがよく分からない」という人が26.1%です。NISAの認知度が高まっているのに対し、iDeCoはいま一つという印象が否めません。下位の回答では制度を理解している上で加入していない様子が伺えますが、上位回答からは認知度の低さが明らかになりました。
この結果から、税制優遇などのメリットを伝えたり、制度をわかりやすく伝えたりする必要性を実感しました。ただし、制度を理解している人が、ご自身にとってメリットが少ないなどの理由があって加入しない、と判断するのは何ら問題ないと思います。
【出典】日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」