高利回りの株主優待ラッシュ 裏には上場維持をかけた企業の戦略

2024年から2025年にかけて、株主優待制度を導入する企業が増えている印象があります。2022年ごろは東証の市場改革に伴い株主数などの条件が変更されたことで、個人株主を集めるために株主優待を行っていた企業が優待制度を取りやめ、還元策を配当などに一元化する動きが活発化しましたが、それとは逆行するような動きです。


要因の一つは2024年から始まった新NISA制度があるでしょう。投資家層の拡大に期待し、投資家向けにアピールしたい企業が株主優待制度を新たに導入している例が増えているようです。


また、それとは別にもっと深刻な理由も存在します。それが東証が進めている市場再編です。東証は再編にあたり、市場ごとに上場維持基準を設けていますが、それを満たしていない場合でも上場を維持する経過措置を適用させていました。


この経過措置が2025年3月に終了し、同時点を基準日に本来の上場維持基準が適用されました。経過措置終了時に基準を達成していない場合でも、1年間の改善期間が与えられますが、それでも基準を達成できなければ、監理・整理銘柄に指定され6カ月後に上場廃止となります。


上場維持基準はプライムまたはスタンダード市場で異なりますが、満たしていなければ、最悪上場廃止となるわけですから企業も必死です。上場維持基準に流通時価総額や流通株式比率などがあり、端的に言えば株価を上げなければ上場を維持できないケースがあるということで、株主優待を導入して株価上昇につなげようという企業が増えているわけです。


その中でも投資家に人気で、企業も積極的に導入しているのがクオカードやデジタルギフトでの株主優待です。直近では、4月17日にリグア<7090.T>が株主優待を導入すると発表し、株価は同日ストップ高となりました。


リグア日足チャート


また、グッドコムアセット<3475.T>は4月3日に福証重複上場の記念株主優待として保有株数に応じて年間で4万円から10万円のデジタルギフトを贈呈すると発表。翌4日にはストップ高となりました。


グッドコムアセット日足チャート


ホームポジション<2999.T>は4月10日に株主優待の実施を発表。1000株以上保有でクオカード2万円分を贈呈すると発表し、翌11日はストップ高に。プロディライト<5580.T>は14日に、デジタルギフト年間3万円分を贈呈すると発表し、翌15日にストップ高、16日も大幅高となりました。そのほか、ニーズウェル<3992.T>が15日に株主優待の導入を発表し、同日動意付いています。


ホームポジション日足チャート


プロディライト日足チャート


4月に入ってからだけでも、これほどの数の高額ギフト系株主優待が次々と導入されているのも驚きです。とはいえ、高額な株主優待を導入すると発表し、その後一度も実施することなく優待の中止を発表した企業の例もあります。


あまりに高額な株主優待は、権利落ち後の株価下落が大きなものとなる例もあることから、本当にその株主優待の権利を取得するべきかどうか、投資家側にも慎重な判断が求められるでしょう。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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