BTC、月間マイナスも月末にかけて持ち直す
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年12月3日23時頃、対円では1433万円前後と前週(7日前)比で約4.6%高い水準で取引されています。BTCドルが9万2000ドル台での値動きです。
BTC円は先週末にかけて買い戻しが強まると、11月28日夜中に一時1456万円前後まで上げました。先月21日につけた4月以来の安値からだと、約15%の上昇率です。その後、月末にかけて買いは一服し、結局11月は1410万円台で終えました。
11月は1690万円台で始まり、月初旬の1712万円台を上値に1263万円台まで大きく売り込まれました(高値から安値は約26%)。それを考えると、月間16.6%の下落率は良く持ち直したと言えるかもしれません。

※Trading Viewより
12月も厳しいスタートに、植田さんが…
11月末にかけて市場心理は改善したものの、12月に入ると再び厳しい状況にさらされます。BTC円は1日午前に1400万円を割り込むと、夜中には1301万円前後まで急落しました。
下落のきっかけは植田日銀総裁の発言でした。「次回会合、利上げの是非について適切に判断」と金利引き上げについて言及。12月18-19日の会合で利上げを織り込む動きが、短期金融市場で急速に進みました。
中長期の金利も上昇し、さらに償還期限10年以上の超長期債利回りが上昇基調を強めました。調達金利の上昇は企業業績の足かせになるだけでなく、国家財政も圧迫します。
日銀総裁の発言後に日経平均は軟調に転じ、12月1日は900円を超える下げ幅を記録。リスク回避ムードが一気に広がるとビットコインは敏感に反応し、先物市場を中心にロングの投げが進みました。
「ビットコインの急落により、ロングポジションで5億ドル以上の清算が発生」コインデスク
暗号資産市場は今、レバレッジへの依存度が高まっているようです。そのため一度ポジションの清算が始まると、売りが売りを(または、買いが買いを)呼び、値幅を供なった相場が形成されてしまうのでしょう。
「暗号資産市場で清算額が急増 建玉拡大でレバレッジ依存強まる」コインテレグラフ

※Trading Viewより
日本の暗号資産税制に光が
リスク回避ムードが強まり、BTCの戻りが鈍かった1日の夕方、以下のようなニュースが伝わりました。
「暗号資産の税負担、分離課税の対象に…」時事ドットコム
政府・与党は、暗号資産の利益に対して一律20%の分離課税を導入する方向で調整を進めているようです。
これまで暗号資産の利益は、給与などと合算される総合課税の対象で、所得が高い人ほど最大55%もの税率がかかっていました。新しい制度では株式や投資信託と同じように扱われ、所得税15%と住民税5%を合わせた20%で課税される見通しです。
この改正は年末にまとめる2026年度税制改正大綱に盛り込まれる予定で、金融庁は翌年の通常国会に関連法案を提出する方針です。あわせて、インサイダー取引の禁止や発行者への情報開示義務など、投資家保護を強化する仕組みも導入される見込みです。
当初BTC相場の反応自体は鈍かったものの、期待感が高いのは確かです。税率が下がれば投資家負担が大きく減ることになり、個人投資家の参入が増えることが予想され、取引も活発になると思われます。
大手銀行と資産運用会社が
さて、月初の軟調を経てBTCは急反発しました。対円では1464万円、対ドルではドルも8万3800ドル台を底に9万3900ドル台まで大きく上げています。材料は米国の2つの動きです。

※Trading Viewより
1つはバンク・オブ・アメリカ(BoA)による暗号資産の推奨です。富裕層向け運用モデルに暗号資産を最大4%まで組み入れる方針を示しました。価格変動リスクを受け入れられる投資家には「1~4%配分が妥当」とし、2026年からETFなど既存商品を活用し、正式に運用資産に組み込む予定です。
大手銀行が暗号資産を分散投資の1つとして扱う姿勢が市場の注目を集めています。
もう一つは、資産運用大手のバンガードの方針転換です。同社プラットフォームで暗号資産関連のETFやミューチュアルファンドの取引を解禁。ビットコインやイーサリアムなど主要銘柄を含む規制対象商品の売買を顧客に開放しました。
バンガードはブラックロックのようなETFの立ち上げは行わず、他社が運用する規制に準ずる商品に限定する予定です。金と同様のオルタナティブ(非コア)資産として扱い、保守的な運用哲学を維持しながらも選択肢を拡大した形です。
世界2位の運用会社が、従来の「暗号資産は投機的で長期投資に不向き」という立場を事実上改めて参入してきました。資産運用において、暗号資産は無視できないことを示す象徴的な動きではないでしょうか。


