「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は2025年10月に上場したオーバーラップホールディングス(414A 以下、オーバーラップHD)をみていきます。
同社は、持株会社であるオーバーラップホールディングスと事業を担うオーバーラップおよびオーバーラップ・プラスから構成され、主にライトノベルやマンガをはじめとしたコンテンツIP(Intellectual Property)を取り扱うエンターテインメント事業を運営しています。
同社では以下の流れで良質なコンテンツIPを生み出しています。
1.小説投稿サイトやSNSを通じて、すでにユーザーの注目があるアマチュア作品の中から優れたコンテンツIPの原石を発掘し、プロの目で編集を行い、ライトノベル作品として刊行
2.ライトノベル作品の中でヒットした作品を原作として、最適な漫画家を組み合わせることで、新たなマンガ作品として刊行
3.マンガ化された作品の中からヒットした作品をアニメ化することによりコンテンツIPの認知度を高め、ライトノベル・マンガ作品への波及効果による売り上げ増加をめざす
このように同社では、ライトノベル化などを通じてコンテンツIPを創出し、マンガ化、アニメ化とメディアミックスの段階を経てコンテンツIPの価値を最大化させるよう取り組んでいます。
同社の初値については、足元の業績は成長が鈍化しており、公開価格に割安感が乏しいことや、警戒されやすい全株売り出しのファンド出口案件だったことなど悪条件が並んでいることから警戒する声がありました。
一方で、売り出し株の積み増し措置や公開価格が想定価格からわずかに上振れて決定したことから、意外と需要があるとも判断できる状況でした。
見方の分かれるなか、どのような初値形成になったのか、オーバーラップHDの上場からの株価の動きをみていきます。
オーバーラップHDの株価推移(上場から2025年12月4日まで)
2025年10月3日に東証グロースに上場した同社の初値は1533円と公開価格1650円を下回りました。上場初日は一時1590円まで上昇する場面もありましたが、終値は1345円と公開価格を大きく下回りました。結果としては、公開価格に割安感が乏しかったことやファンド出口案件だったことが強く意識されたようです。なお、この上場初日に付けた高値1590円が現時点(2025年12月4日)での上場来高値となっています。
上場2日目からの株価はいったん切り返す動きとなりますが続かず、公開価格を下回る水準が続きました。このような状況のなか、上場後初めての決算を発表します。
同社は2025年10月15日に通期決算を発表。25.8期通期の連結営業利益は30.3億円(前の期比40.7%増)と大幅な増益となりました。継続的な新規IPの創出と、保有する既存IP価値の維持向上への取り組みを継続することにより、着実に収益を積み上げたとしています。
26.8期通期の連結営業利益予想は34.2億円(前期比13.1%増)としました。編集を中心としたコンテンツ創出を支える体制のさらなる拡充に加え、同社が保有するIPのアニメ化などをはじめとするメディアミックス展開の取り組みについても強化していくとしています。
この決算を受けた翌営業日(13日)の株価は売りで反応、終値は1368円(前日比-89円)となりました。その後の株価も下値を切り下げる展開が続いており、12月4日には安値で1074円まで下落、1000円の大台割れも視野に入ってきました。
【オーバーラップHDの週足チャート(上場から2025年11月20日まで)】

今後について
同社については成長鈍化が懸念されます。23.8期通期の連結営業利益は15.6億円、24.8期通期の連結営業利益は21.5億円、25.8期通期の連結営業利益は30.3億円、26.8期通期の連結営業利益予想は34.2億円となっていますので、成長鈍化は否めないといえます。
また、成長鈍化のタイミングでの上場かつ強気な公開価格は、ファンドの意向が強く出た結果ではないかと疑念を持たれても仕方がないといえます。初値天井ではありませんですがそれに近い上場初日の高値天井となっていることは、会社側も重く受け止めるべきと考えます。
ただ、足もとでPERは9倍台と割安といえる水準まで下落しています。また、コンテンツ産業はヒット作次第という側面があります。人気作を出せれば見直し余地は出てくると思われますので、同社の目利きに期待したいところです。
まずは公開価格1650円を超える水準まで株価を引き上げることができるよう、今期の上振れ着地をめざしてほしいと思います。



