中古物件を買うときに「水道管の年齢」を確認することはできるのか

日本各地で水道管の劣化による破裂や漏水被害が発生しています。水道管は従来に比べて品質も向上しているのですが、なぜこうも頻発するのでしょうか。不動産の購入時にこのような水道管の劣化は深刻な問題です。


中古物件を購入するときは公道から購入地への埋設管の状況は確認できるものの、「いつ頃埋設された水道管なのか」を確認することは難しいという現状があります。水道管の耐用年数が約40年ともいわれるなか、我々はどのように水道管リスクと向き合えばいいのでしょうか。


「水道管の年齢」は確認できない自治体が多い

自治体に赴くと、水道配管図を閲覧・入手することができます。都市化が進んだ折に電気や水道などのインフラが整備されることも多いため、埋設時期を大筋で予測することはできるでしょう。ただ、多くの自治体において配管図に「何年埋設の水道管か」は記載されておりません。これまでの自治体にとって、「水道管が経年によって劣化する」という事態は想定できていなかったためです。よって配管図に設置時期が記載されていないことも、修繕の体制が整備されていないことにも繋がります。


これまでの日本は多くの地域において「都市拡大期」が続いていました。そのため水道管の老朽化が前提とされていないため、上物の建て替えなどによる再引き込みにおいても確認する必要がありませんでした。引き込みの経年劣化であれば水質の異常などが違和感を発見する契機になっていたものの、公道の水道管そのものの劣化となると、土地購入者にはどうにもできません。



水道管1kmを交換するのに2億円?

公道下の水道管に経年劣化が予測されたとしても、自治体が適宜交換するには難易度の高さがあります。先日の埼玉県八潮市の水道管破裂による陥没事故では、「水道管1kmを交換するのに2億円」とも報じられました。自治体としては埋設時期を把握しているものの、積極的な改修工事は難しいのが現状です。今後も基本的には水道管に起因した陥没事故などが起こってから臨床で対応するという流れになるでしょう。


一方で自治体による改修が難しいとしても、関係する中古物件や土地購入者としては、できる限りのリスク管理をしなければなりません。万が一この事態で自身の不動産資産が毀損されたとしても、補償を期待出来る段階ではありません。これは中古物件の購入ではなく近隣の駐車場を借りる場合でも、自家用車の水没の危険性があります。


自治体窓口に水道管の年齢を聞く

これまで水道管の経年劣化が問題にならなかっただけですが、昨今全国で破裂事例が頻出しています。繰り返しになりますが、当面はマンパワーでの対応となるでしょう。中古物件の購入時などは「こちらから動くこと」でリスクの軽減になります。中古物件の購入時などに自治体に聞くことによって、公道下の水道管の年齢は確認できるでしょう。少なからず、「公開している情報では無いです」といった対応は受けないと考えられます(SNSもあり、自治体にとっても共有しないことで事故が発生した場合の報道リスクなどが大きいため)。


土地活用で購入する物件が複数ある場合や、駐車場を借りるのに複数候補がある場合は、自治体窓口を上手に活用しましょう。水道管が経年劣化しないもの、と性善説で考えることが最大のリスクです。なお相談や埋設情報は、宅建士など特定の免許等を受けた人のみに許可されている自治体もあります。


埋設管自体がすぐに確認できなかったとしても、過去の都市計画のロードマップなどによって「いつ頃宅地造成がされた地域か」で埋設時期を予測することは可能です。宅地造成と、インフラの時期は大きく違わないためです。



いずれは公開情報になる可能性が高い

今後の流れとしては、段階的に「公開情報」になる可能性が高いです。40年前後の耐用年数を迎える水道管が全国各地であまりに多いことと、自治体の窓口対応では限界があるためです。該当場所の齟齬があり間違えて伝えた、正確に伝えられなかったというヒューマンエラーも考えると、「何かしら公開した情報を見てもらう」という方針の整備は確実です。


またこれだけメディア等で取り上げられると、数ある自治体課題のなかで次年度以降優先的に予算整備が進んでいくことも確実です。よって各業者による改修ペースは上がっていくことでしょう。


合わせて、当面のあいだ注目したいのは自治体による情報発信です。各自治体は広報紙や区市町村議会、首長によるSNSなどの発信が活発化しています。世間の注目も高いため、発信されるこれらの情報を取りこぼししないようにしましょう。


これまでは表面化することのなかった水道管リスクです。とはいえ軽視することによって、大切な不動産を毀損することにつながります。しっかり向き合っていきましょう。同時にこれからの日本を襲うインフラリスクは水道管だけではありません。不動産という大きな買い物においては、購入時にいかに気づくことができるかが、今後のリスクへの向き合い方として求められています。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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