出来高と株価の関係
出来高と株価の関係として、株価が上昇して市場が盛り上がっているときに出来高は増加し、反対に株価が下落して市場が低迷しているときは出来高も減少する傾向があるのが一般的です。
相場格言では「出来高は株価に先行する」といわれ、相場の分析は株価分析とともに、出来高の分析も重要とされています。
ほんとに「出来高は株価に先行する」のか?
「出来高は株価に先行する」というのは、実際の相場ではある局面では当たっているけれど、そうでない時もあります。特に短期の視点ではケース・バイ・ケースというところが多く、実務的にはすべてのケースに当てはまるわけではありません。
「出来高が株価に先行するケース」のほか、「出来高が株価に遅行するケース」もあるし、「出来高と株価が同時並行するケース」もあるため、臨機応変に考える必要があります。
出来高が株価に先行するケース
株価が長期間下落したあと、株価が上昇に転じる直前に出来高の増加がみられることがよくあります。
また、高値圏で多いケースですが、株価が直前の高値を上抜けて上昇を続ける場合でも、出来高の方は直前の高値時の水準から次第に減少していくことで、株価の反落につながることがあります。
出来高が株価に遅行するケース
株価が上昇したから出来高が増える、株価が下落したから出来高が減少することがあります。「上昇しているから買う、下落しているから買いたくない、売りたくない」というような場合で、出来高が先行しているとは言えません。
昨日まで割高と思っていても、当日株価が上昇すると、昨日までの判断はどこかにいってしまい、逆に「もっと上がるのではないか」という期待にかわることがあります。
一方、昨日まで割安と思っていた株でも、当日株価が下落すると、昨日までの自分の判断に自信がもてなくなり、出している買い注文を取り消してしまうこともあるでしょう。この場合、明らかに株価の動きが出来高面に影響を与えたケースであって、出来高が株価に遅行するケースなのです。
出来高と株価が同時並行するケース
例えば、ボックス相場から上値抵抗線を上放れる、あるいは下値支持線を下放れる際、株価の動意と同時に出来高が急増することがあります。
長期的な低迷相場からローソク足の長い陽線が一本立つケースなどは出来高が増加することが多いです。また、何カ月ぶりの高値更新(安値更新)、何年ぶりの高値更新(安値更新)など、フシを上抜く(下抜く)と同時に出来高が増加基調になっていくことがあります。
以上、3つのパターンを簡潔にまとめたものが、以下の表になります。
中長期の視点では「出来高は株価に先行する」が基本スタンス
このように出来高と株価の関係は3つのパターンありますが、一般的に使われている出来高分析の指標は、ほとんどが「出来高は株価に先行する」という前提で作られています。例えば、中長期の相場の上昇・下落のサイクルで、「出来高は株価に先行する」の流れを示すと以下となります。
(1)株価が長期間下落している銘柄は注目度が低く出来高も低迷します。大半の投資家にとって投資対象とみられてないからです。このため、企業業績などが改善しても大勢によって即座に注目されることは少ないですが、一部の投資家が相場反転を見越して打診買いを入れ始めます。
(2)相場反転の見方が正しければ、株価は徐々に底堅くなっていき、同じ投資判断をする投資家が増えるため出来高は徐々に膨らみます。出来高の増加が他の投資家の関心を呼び、投資妙味に気づく投資家がさらに増え、株価は上昇基調に転じます。
(3)株価の上昇局面では、先高を期待した買いと利益確定売りが交錯し、出来高が増加します。しかし、十分な上昇時間が経過し上昇幅も大きくなると、先高期待が小さくなると同時に高値警戒感も強まり、買いを手控える投資家が増えてきます。この結果、株価が天井をつける直前から、出来高が先に減少することが多いといわれています。
(4)株価が天井をつけて急落する場面では、損切りとカラ売りが入り乱れ、合理的な水準を割り込んで下げることもあります。そして、急落をきっかけに長い下落期間に入り、出来高も低迷し、(1)に戻ることになります。
このような「出来高は株価に先行する」という傾向は、中長期投資の視点で役に立つ理屈なのでしょう。