米雇用統計がさえなく
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は、2025年9月10日23時頃、対円では1681万円前後と前週(7日前)比で1%超高い水準で取引されています。BTCドルが11万4000ドル付近での値動きです。
BTC円は5日の東京午後には1676万円台まで持ち直したところから、同日夜中には一時1622万円まで緩みました。BTCドルも11万3400ドル付近から11万ドル近辺まで売られました。
きっかけは、5日夜に米労働省が発表した8月米雇用統計が弱かったことです。非農業部門雇用者数が前月比2.2万人増と予想7.5万人増を下回る結果に。失業率も4.3%と悪化傾向を確認。統計内容も、製造業や建設業などで雇用が減少し、労働市場の減速感が一段と明らかになりました。
市場のリスクセンチメントも悪化し、リスク資産と見なされることが多いBTCは売り圧力が強まりました。ドル円が円高に振れた影響も受け、BTCは対円での下落幅が対ドルよりも大きくなりました。
※Trading Viewより
反発は石破さんのおかげ?
土日も取引できるBTCは、買い戻し幅も限られましたが、週明けは反発します。石破首相が7日(日)に辞任の意向を表明したことを受け、新首相が決まれば景気刺激策が実施されるとの期待感から日経平均が急騰。リスク志向に雰囲気が一気に変わりました。
週明けのニューヨーク株式相場も買い戻しが優勢となりました。弱い雇用データを受けて来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが確実視され、一部ではありますが、大幅(通常の倍となる0.50%)利下げとの声も出てきたことが株買いに勢いをつけました。
米国で取引されている現物ビットコインETFについても、3営業日ぶりに全体で流入超となりました。規模も3.64億ドル(およそ535億円)と、約1カ月ぶりの大きさでした。
10日の日本時間21時半に発表された8月米卸売物価指数(PPI)は、総じて予想を下回りました。米金利先安観が強まると、BTCは対円やドルでレンジの上限を広げています。
※暗号資産サイトcoinmarketcapより
SECとCFTCが共同声明
ところで先週、米国では証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)が共同声明を発表しました。
「SEC and CFTC Staff Issue Joint Statement on Trading of Certain Spot Crypto Asset Products」
SECとCFTCの共同声明は、登録済みの取引所で特定のスポット(現物)暗号資産商品の取引が可能であることを公式に示した点に意義があります。従来は規制の線引きが不透明で、取引所や投資家が慎重にならざるを得ませんでしたが、今回の明確化によって市場参加者は安心して取引できる基盤が整いました。両機関が連携して方針を示したこと自体が、米国における暗号資産市場の制度的安定を象徴しています。
さらに、この発表は単なる技術的な規制調整にとどまらず、政治的にも大きな意味を持ちます。前政権下では「規制強化と矛盾するメッセージ」によってイノベーションが阻害されましたが、今回は逆に「成長と革新を歓迎する姿勢」が強調されました。SECとCFTCのトップが共に発言し、トランプ政権の方針に沿って米国を暗号資産の中心地とする戦略を明示した点は、国際競争におけるアピールともいえます。
市場面では、取引所の選択肢が広がることで流動性が高まり、個人投資家から機関投資家まで幅広い層の参入を後押しします。規制が明確になれば長期的な投資判断がしやすくなり、暗号資産市場の安定と拡大に直結します。今後は両機関の共同プロジェクトを軸に米国内の市場インフラが整備され、グローバル市場でも米国の影響力が一段と高まる可能性が大きいでしょう。