気になるテーマ解説

タイムズカーシェアの料金体系変更を考える

駐車場大手のパーク24が9月8日に、カーシェアリングサービス「タイムズカー」の料金体系を変更すると発表しました。翌9日の取引ではパーク24の株価が一時8%近い上昇となるなど急騰。収益拡大を期待した投資家の買いが入ったようです。


今回の料金体系変更はどのような内容だったのか、また今後期待される展開などについて考えていきたいと思います。


料金体系の変更について

今回の変更では、タイムズカーの利用時間にかかわらず、すべての利用において時間料金と距離料金の合算となります。なお、20キロメートル(km)の走行までは距離料金がかからなくなりました。


変更前は、6時間未満の利用では時間料金のみ、6時間を超える場合は走行した分の距離料金(1kmあたり20円)が追加されるといった料金体系でした。このため、短時間の利用で済む場合はレンタカーよりも費用が安く済みやすい、ガソリン代もかからないといった大きなメリットがありました。


変更後は前述のとおり20km(400円分)までは距離料金がかからないものの、車の移動であれば20kmはあっという間に超過します。今回の料金体系変更により、全体的に利用料金が増加することが考えられそうですね。


試しにシミュレーションしてみると以下のようになりました。


※公式料金シミュレーションなどを基に作成


利用目的によって料金は人それぞれだとは思いますが、距離料金を支払わないで利用するのは、最寄り駅への送り迎えや、悪天候時の買い物くらいに限られそうですね。筆者もタイムズカーを利用する際には長距離となりやすいので、負担は増しそうです。


実質値上げでも利用は減らない?

SNS上ではさまざまな意見が飛び交っていますが、昨今の車事情を考えるとパーク24の業績にはプラスになりそうな材料です。


ライフスタイルの変化、実質賃金の伸び悩み、物価高とさまざまな事情が絡み合い、マイカー信仰はなくなりつつあります。車検費用や各種税金、ガソリン代、駐車場費用など、維持費が高いことも車離れを加速させている要因と言えますね。


出所:一般財団法人自動車検査登録情報協会


上のグラフは自家用乗用車の世帯当たり普及台数です。国内では自家用乗用車の保有台数、世帯数ともに増加はしていますが、グラフは2000年代をピークに低下傾向となっていることが分かります。つまり、世帯数の増加とともに車の保有台数は増えてはいるものの、保有している世帯は減っているということになりますね。


一方で、タイムズカーの会員数を見てみると以下の推移となりました。


出所:2025年10月期パーク24グループ月次速報数値(7月度)


24年10月期の期末では会員数が303万人ほど。そこから今年の7月までの9カ月間で344万人程度にまで増加しており、会員数は増加の一途をたどります。自家用車にはこだわらないけれども、車を使いたいニーズの獲得が順調と言えます。


筆者もヘビーユーザーなのでつくづく感じますが、タイムズカーシェアは非常に使い勝手が良いサービスです。土日祝日などは早めに予約しないと利用できないことも多いですが、アプリ経由で即予約が可能、利用時間直前までペナルティなしでキャンセル可能、ガソリン費は無料など、デメリットを上回る魅力があります。


できるだけ負担は抑えたいですが、サービス維持のためにも料金体系の変更は仕方がないことかもしれません。伸び続ける会員数と実質値上げの相乗効果によって、タイムズカーの収益拡大、株価上昇が続くか注目したいですね。最大手であるパーク24の発表を受けて、業界がどのように動くかについても追っていきたいところです。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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